課題曲のワンポイント・アドバイスも3回目になりました。TwitterのDMでもいくつか相談を受けていたので、役に立てたら嬉しです。今回は課題曲5番!川合 清裕/メタモルフォーゼ〜吹奏楽のために〜のポイント解説です。
全日本吹奏楽コンクールのA部門(55名編成)は指定された課題曲の中から1曲と「自由曲」の2曲を演奏することになっていますが、この課題曲の数が5曲になったのは第51回(2003年)からでした。特にこの5曲目にあたる「課題曲5番」というのは他の曲と比べると特徴的な曲が多いですよね。現代曲っぽいというか。
1993年から2007年の間は課題曲の種類がマーチとマーチ以外の曲が1年交代で決まっていたため、2005年を除くと課題曲Ⅴのマーチは2曲のみとなっている。課題曲Ⅴが他の曲と比べると特徴的な理由はその位置づけにある。課題曲Ⅴは「吹奏楽の開発を意図した現代的な傾向のあるもの(行進曲も可)」(全日本吹奏楽連盟作曲コンクール 応募要領より)と位置づけられているため、他の課題曲よりも編成も大きく、技術的に難しいだけでなく解釈も難しい曲になっている。
ということもあり、技術的にもかなり難しい曲が毎年登場します。何年か前まで課題曲5番は一般/職場部門だけでしたが、高校生も対象となり演奏可能となりましたね。毎年、課題曲5番にチャレンジする学校もたくさんあります。
メタモルフォーゼ〜吹奏楽のための〜(冒頭〜A)
コントラバスは冒頭からドキドキです。しっかり数えてFのpizzを決めよう!ppと書かれていますが、少し大きめに弾いて良いでしょう。ppは表情としてとらえ、弦をしっかり押さえてpizzの響きがしっかりと伝わるように弾いて良いと思います。
可能であれば左手を少し揺らして表情をつけてみましょう。
※楽譜に1 player と書かれている部分は一人で演奏します。4小節目のarcoの所(all)からコントラバス全員での演奏です。
課題曲5番にはこのような指示が多いのでチェックしておこう!
A~Dまで
はじめて楽譜を見た時はビックリすると思いますが「A」から55小節目までは16分音符がベースに15/16 12/16 3/8 4/8〜拍とが変わりますね。スコアを開いてみると基本的には1拍が3連符で入っていることがわかります。一見、複雑に見えますがコントラバスパートは基本的にに8分音符単位の小節も含め16分音符単位でカウントするコツをつかめば大丈夫でしょう。
「B」の5小節目にはまたpizzが書かれています。Bから6/16拍子が4小節続きとなります。途中でわからなくなってしまった場合は、前の小節で「1・2・3・4・アタタ タタタ!」と北斗百烈拳が入りますのでチェックしておきましょう。
また、休符が続きますが「C」は3/16拍子が2小節続いた後、4/16拍子からクラリネットが入りますのでそこをチェックできたら大丈夫でしょう。色々なプロの方が発信されているように、濃い鉛筆で必要な情報を書き込みすることがこの課題曲5番に早く慣れるのに大切なことかもしれません。どこで誰が入ってくるか、スコアを見てガイドを書き込んでみよう!
26小節目からはタイで繋がっていますが25小節目を(ダウン)ではじめ26が(アップ)弓先から弓元へクレッシェンドをしてfの小節で弓を返して良いでしょう。その後は3/16が続きますが途中で弓を返しても、返さなくても良いと思いです。
35小節目は頭の休符で弓を弦の上に置けばオンタイムで入れるでしょう。
ここもクレッシェンドをうまく利用して途中で弓を返し「D」のsfzをダウンで決めると良いでしょう。
D〜Eまで
42小節目にかかれている sul E&A という指示は「E線とA線で」という意味です。
A線の開放弦とE線のAの音を同時に押さえて弾くという指示とも解釈できますが、その後に(non div.)と書かれているので複数人数がいる場合はdiv.(分けて)弾いても良いかもしれません。44小節目のnon div.という指示の所はE線の開放弦とA線の Eの音を押さえ2本の弦を一緒に弾きます。吹奏楽ではあまり見慣れない指示ですが、コントラバスを始めたばかり、またA線のEの位置がわからないという人はまずE線の開放弦のみで練習し、運指表を確認してみましょう。non div.の箇所は(ダウン)で弾き、次の小節もまた(ダウン)から入ると良いでしょう。
その後もsffzや54小節目のffを(ダウン)で弾けるように工夫してみましょう。
E〜Fまで
55小節目のrit.があり「E」からa tempo 2拍目のトランペットがキーポイントです。次の小節が不安な人は頭の休符で弓を置いて準備。59小節目はまたnon div.の指示なので前の小節の休符を利用しポジションの移動をしてみよう。
63小節目6/32拍子、pizzが目立ちますが千葉県にお住いの方は「いな げ←pizz・いな げ←pizz」東京にお住いの方は「しぶ や←pizz・し ぶや←pizz」神奈川にお住いの方は「えび な←pizz・えび な←pizz」と3文字の言葉を当てはめれば大丈夫でしょう。
次の小節も見た感じ難しいですが、東京都に福生(ふっさ)というところがございます。「ふっさ」とpizzで音をはめてみてください。南武線には「尻手(しって)」という駅があります。
続く65小節〜66小節。楽譜に斜めの線が入っていますが、Bの音からEの音へ弦を押さえたまま滑らせます。
F〜ラストまで
ここからまた1 player の指示があります。72小節目は休みで「F」はコントラバスの他にどのパートがいるのかスコアで確認しておくと良いでしょう。ここも、まずは少し音量は大きめで良いと思います。
「G」からall 拍が変わりますが、86小節目をしっかりカウントしてpizz。89、96小節目の指示は前と同じ。
楽譜を見開き3ページで使用すれば問題ありませんが、ここで譜めくりをする人は97小節目の上あたりに9/64と拍子を書いておくと良いかもしれません。
107小節を(ダウン)で弾いてここも途中で弓を返して大丈夫です。「I」は non div./tremoloとの指示がありますが、まずは全ての指示を外して練習すると良いでしょう。
「J」からの32部音符は(ダウン)が良いと思います。ここも弦の上に弓を置いてしっかり音を出せるようにすると良いでしょう。「L」は(アップ)から弾き始めsffzpやsffzを(ダウン)で弾けるように上手く工夫してみてください。
「M」からまた1 player です。最後まで緊張しますが左手は弦をしっかりと押さえ、十分にpizzを響かせてみてください。
全体を通して難しい・複雑という印象を持ってしまいますが楽譜をよく読み込んでパズルを解いていくようなイメージで取り組んでみてください。楽譜精読!