新年度が始まり、仮入部をはじめ、いろいろな楽器に触れたり体験する期間も終わりが近づき、そろそろ担当する楽器が決まる頃。
希望が通り「コントラバスを担当することになった人」もいれば、希望楽器にはなれずに「コントラバスへ移動した人」もいるでしょう。
希望楽器になれなかったり、楽器が変わるって想像以上に辛いことでもありますよね。
管楽器・打楽器から弦楽器への移動した場合、しっかりと教えてもらえる環境あるかどうかはとても重要です。
この時期に届くメッセージの多くが「コントラバスを弾くことになりました」ということなのですが、そんなメッセージを読むたびに、これまでコントラバスに移ってきて一緒に練習してきた後輩や生徒との思い出が蘇ります。
なので、今日は希望楽器になれずコントラバスを弾くことになっちゃった人に向けた記事を書いていこうと思います。
けっこう曖昧な理由で担当することになる「コントラバス」
コントラバスを弾くことになったと決まったとき、どんな心境でしたか?
実はコントラバスが第一希望って人は少なくて、希望が通らずコントラバスになったって人が多い楽器なんですよね。
楽器決めオーデションに落ちてしまったという理由の他は、身長があるから、男の子だから、ちょうど楽器が余ってるからとか、かなり曖昧な理由でコントラバス担当になった人が多いです。
僕は「どうせやるなら自分で買えない楽器をやりなさい」という理由でコントラバスになりました。
それはなぜか、この記事の最後にお話しします。
テニス部を退部後、担任だった管弦楽部の顧問に「俺トランペット吹きたい!」と熱望したらテニス部での前科(サボリ魔、ユニフォーム揃えて一度も着ずに退部)を知ってて三者面談で「どうせやるなら自分で買えない楽器をやりなさい」ってコントラバスになりました。みんなコントラバス楽しいぞ! https://t.co/5eOb9h1tbu
— 井口 信之輔 / コントラバス (@igu_shin) April 19, 2019
高校生の頃に衝撃を受けた曲
僕は高校2年生の春からコントラバスのレッスンへと通うようになりました。
そして、音大受験をする僕に先生が「すり減るまで聞け!」とCDを貸してくれ、その中に入っていたある曲を聴いて衝撃を受けました。
コントラバスってこんなことできるんだ…
R.グリエールがコントラバスのために残した小品が4つあって、その内の一曲である「タランテラ」という曲で、目まぐるしい速さで指板を駆け回るようなスピードに圧倒されました。
この動画は「インテルメッツォ」というとても綺麗な曲からはじまるので、ぜひ聴いてみてください(タランテラは3:40あたりから)
先生からCDを借りて以来「すごい曲がある!」と高校のコントラバスパートで「タランテラ」をずっと聴いていました。
高校の頃は年に一度か二度、パート別講習会があり毎回いろいろな音楽大学の学生さんが先生で来てくれてソロを聴かせてくれたので「次から先生にタランテラを弾いてもらおう」と毎回リクエストをしていました。
毎回断られてしまいましたが、今となってはその気持ちが大変よくわかります。笑
ごめんなさい!
目をつむればそこは遠い異国の港町
コントラバスの弓に松脂を多めに塗った弓を駒寄りに押し付け、音を出さずに移弦をさせるとロープで繋がれてる船がきしむような音が出ます。
やってみよう!
- オーシャンドラムを使って波の音を表現する
- 一人が松脂を多く塗った弓を駒寄りに押し付け音を出さずにゆっくりと移弦
- もう一人(他の楽器でもOK!)がそこにEs(ミ♭)を音を伸ばしてみてください
ちょっと難しいですが、G線の指板の切れ目から弦に触れたまま(押さえない)一定の速度で駒寄りを弾きながら下がってくるとカモメの鳴き声のような音が出ます。
失敗するとカモメが墜落します。
波の音が聴こえる港町で出航の準備をする船、こんな感じの風景が頭に浮かんできますよ。
眠くなったら楽器ケースを寝袋にできる「コントラバス」
楽器ケースが寝袋になる楽器なんて他にあるでしょうか?
コントラバスの楽器ケースは中がクッションになっているので保温性もあり暖かいです。
以前、夏合宿のレッスンで休憩時間に眠くなったのでケースに入って寝ていました。
よく眠れます。
先日の合宿での一コマ。休憩中にコントラバスの楽器ケースで寝てたところを激写した写真をいただきました📸知るぞ知る…コントラバスの楽器ケース、中はフカフカで寝袋にピッタリなんです。 #吹奏楽あるある pic.twitter.com/T3WGV3HcUN
— 井口𝕏信之輔|コントラバス 吹奏楽指導 (@igu_shin) August 3, 2017
コントラバスのケースで寝るときに知っておきたい、いくつかのこと
コントラバスのケースは音楽準備室や楽器庫で1日を過ごしています。
あまり日の当たるところにはいかないので湿っぽくなっていることが多いです。
また、いくつかポケットがありますが、忘れられた小物が入っていることもあります。
なので
- コントラバスのケースは湿っぽくたまに臭いので日干ししておく
- ポケットに何も入っていないか確認しておく(寝たときに松脂なんか踏んで溶けてたら地獄)
この2つは覚えておくと良いでしょう。
基本的に、先に足を入れてケースの中に入り、好みの体制でチャックを閉じます。
クッションがないとちょっと辛いので、カバンなどを枕代わりにして寝ると良いでしょう。
おやすみなさい、素敵な夢を。
今までの経験は無駄じゃない!
冒頭にも書きましたが、管・打楽器から弦楽器への移動は過酷なことだと思います。
これまで管楽器からコントラバスへ移動したこのレッスンを何度か担当しました。
そこでお話ししたのは、息の使い方を弓の使い方に当てはめて考えてみるということ。
- 「息づかい=弓使い」
息は目に見えないけど、弓を使うことによってそれが可視化されたものだと考えてみてください。
息は目に見えないけど弓の動きは目に見える。
ここを押さえておけば、これまでの楽器経験が役に立ちます。
これまでの経験は無駄になんてならない。
どんどん役に立てていこうぜ!
新しい楽器に慣れる環境作りはしっかりと
希望楽器になれず楽器が変わったり、いろいろな理由で他の楽器に移動するようになったときには、きちんとその楽器を知識や奏法を身につける環境を作って欲しいなと毎年感じます。
- そのパートに先輩がいて後輩指導ができる
- 吹奏楽連盟や地域の学校主催の講習会へ参加する
- レッスンの先生を呼ぶ
講習会への参加やレッスンの先生を呼ぶにはお金が発生するので、継続的なレッスンは難しい場合でも一度そうした時間を作るだけで不安も消え、何か練習の目標が見えてきます。
これまで、地方へ行くとコントラバスだけ先生が見つからずに講習会がなかったり、レッスンを受けられる環境がないといった話を聞く機会が多くありました。
僕も吹奏楽を愛するコントラバス奏者としてこうした問題には向き合っていきたいと思います。
ブログではレッスンで使用している教則本を解説付きで全て公開している『明日のためのレッスンノート』という記事もあるので、ぜひ役に立ててください。
コントラバスに関する質問・相談受け付けています
僕が運営しているLINE@(お店のアカウントのようなもの)では、コントラバスに関する質問や相談を受け付けています。
下記のQRコードからお友達登録をすると、1:1での質問のほか、不定期にメルマガが届きます。
基本的に、僕からは誰がお友達登録をしているかわからず、メッセージを送ってくれてはじめてお名前が表示されるようになります。
なので、登録だけでもよし。何かあればお気軽に連絡していただけたらと運営しています。
1年ほど続けて約100人の登録者が集まりました。
https://twitter.com/igu_shin/status/951474773929861120
おわりに「僕とコントラバスの出会い」
僕は中学校の頃にトランペットを希望したところ、学級担任で管弦楽部の顧問だった先生との三者面談で「どうせやるなら自分で買えない楽器をやりなさい」という言われコントラバスになりました。
僕がテニス部に所属していたのですが、ユニフォームを揃えて一度も袖を通さずに幽霊部員化し、近所のゲームセンターで毎日遊び呆けていたことを知っていました。
そのため、自分の楽器を持っている人が多かったトランペットを僕が買ったとしてもすぐに辞めるだろうと先生が思ったこと、そして同級生の友達がコントラバスを弾いていたということがきっかけで「友達の◯◯も弾いてるし、自分で買えないような楽器をやってみなさい」とコントラバスを勧めてくれたことが楽器との出会い。
テニスを辞めた理由に、コンプレックスだった吃音(どもり)があって、声出しや点呼のときに言葉がつかえてうまく言えず笑われるのが嫌で、我慢の限界に達した僕は「こっちだって好きで吃ってるわけじゃねーんだよもう行かねぇ!」って頭きて辞めちゃったんですね(笑)
そんな理由もありました(こっちは先生知らない)
でも、音楽の世界には僕が苦手としていた声出しなどなく、先生が勧めてくれたコントラバスをはじめて見た日に同級生の友達が「ドラゴンクエストⅣのトルネコ」(武器商人の大きなおじさん)のテーマをコントラバスで弾いてくれたことで、コントラバスが大好きになりました。
そんなことがあって、今に至ります。
希望楽器になれずに、いろいろな事情で楽器が変わって、様々な理由でコントラバスになる人が多いですが、弾けば弾くほどその魅力にとりつかれていくのがコントラバスだと思います。
でも、それは環境によって大きく差が出てしまうのも事実。
なので、コントラバスを弾くことになったけど周りに教えてくれる人がいない、パートは自分しかいないという人がいたら、いつでもこのブログに遊びに来てくださいね。
どこまでも低い音の世界へようこそ!