音楽家の仕事は演奏会までの過程で曲を練習したり勉強してお客さんに音楽を届けること。
指導者であれば演奏会までの過程で楽器の技術指導をしたり、音楽作りをサポートすること。
これらに共通するのは何かを完成させるまでの時間を複数の人たちと共有すること。
ただ来て弾いて「はい、お疲れ様でした」となるとそうはいかないけど、演奏会までの過程が一つの物語になると仕事が一気に面白くなる。
これは遊びにも共通することで、今日は夏から計画を立ててた作戦が大成功に終わって大きな達成感を感じた日だった。
楽し音楽を多くの人へ届けたい
僕は普段、小さな編成のオーケストラで演奏することが多い。
20世紀初頭に海外で爆発的に流行った「サロン・オーケストラ」と呼ばれる指揮者を置かないピアノ付きの小編成オーケストラ。
ここに日用品や創作楽器をコラボさせ、あっと驚く演出を取り入れたりお客さんを巻き込んだ参加型のコンサートを各地で開催してる。
中でも一番の人気はフライパン。
聴いて楽しい見て楽しい、ダブルフライパン初合わせ! pic.twitter.com/RLCjem5iZU
— 井口 信之輔 / コントラバス (@igu_shin) August 3, 2018
このオーケストラの演奏を見て笑顔を浮かべている人たちを見て、この楽しい音楽のスペシャリスト達が奏でる音楽をもっと多くの人たちに届けたいと思った。
「クラシックって、面白いね」って感じてくれるような時間を全国へね。
オケの魅力を一つの名刺へ
演奏会を終えてお客さんとお話をしている中でよく口にしていたのが「ホームページもあるのでぜひご覧になってください。」とか「Youtubeに動画もあります!今日演奏しなかった曲もアップされてるのでぜひ聴いてみてください。」ということ。
ちょっと待って、ホームページにアクセスして何を見てもらうの?
ネット開いて名前を打ち込んで検索して動画にたどり着く、この時間と手間をもっと省けないかな。というか、自分の経験上、日常の中で検索することさえ覚えてることって以外と少ないかも。
ここで思いついたのが一枚の名刺にオケの魅力をギュッと詰め込むこと。
思い当たる魅力を掛け算してみればいい。
名刺あるって聞いてたけど、勝手に作っちゃおう。笑
アイディアの種をみんなで育てる
思いついたアイディアをメンバーに投げかけ意見をもらうと奇跡が起きた。
オケのリーダーの誕生日と本番の日にちが被ってる。
僕は降り番(編成上出番がないのでお休み)だけどスケジュールは空いてる。
そうなれば、ゴールはこの日。
ゴールを決めると、早速メンバーが名刺を作るサイトを教えてくれたので、名刺をデザインしてアップして意見を交換。
アイディアの種にメンバー一人一人が水を与え育て完成した名刺がこれ。
このチームを象徴するものはフライパン。
だから飲食店の名刺っぽい感じにして裏にこのチームが何者なのかを書く。
そして、何ができるのかも書いた上でホームページへ飛べるQRコードを貼る。
これで自分が終演後に口にしてたことがスマホに直結できた。
こうして一緒に作り上げてる感が芽生えてくると一気に面白くなってくる。
でも、一つだけ忘れちゃいけないことがあって、今回の企画で大きく学んだことがあった。
冷静に考え大胆に攻める
「もっと面白く!」とか「もっと知ってもらうために!」となるとどんどん道を踏み外す。
「感情」で動いて良いことはないので冷静になって考える。
もらったものがその人の持つキャラクターを崩してしまっては台無しだ。
相手が名刺を手にとって、それを第三者に渡すまでを徹底的に想像して作る。
過去のチラシで使われてるキャッチコピー、多く目にする言葉。
ホームページに書かれてる文章すべてに目を通して、その中から何を載せたら良いかを想像し尽くして、仲間からのアドバイスをもらう。
張り切りすぎず、感情的にならず、冷静に考える。
これは音楽指導にも演奏中の演出を考えることにも繋がると思った。
ゴールまでの過程がエンターテイメントになる
こうやって何かを作ってると、ここにエンターテイメント(娯楽・遊び・楽しみ)が生まれる。
だんだん面白くなってきて時間を忘れて手を動かすようになったら最強だ。
当日は、僕がたまたま仕事で川越にいるのをメンバーの一人がTwitterで見て終演後にランチをするという設定にして、川越までの移動中にラッピング。
さぁ行くぜ川越!!!小江戸号に乗るの何年ぶりだろう。ずっと楽しみにしてた! pic.twitter.com/3Dcp0XUGXk
— 井口 信之輔 / コントラバス (@igu_shin) September 2, 2019
顔に出やすい僕は不器用に嘘をつきながらランチを食べて、女性チームが予約してくれていたプレートが運ばれてきてみんなでネタばらし。
作戦大成功!!!なんかこの1ヶ月めっちゃ楽しかった。
ルロットのリーダーか誕生日ということでサプライズのお祝い大作戦が始動。みんなは川越で本番で僕は新しく川越の高校を教えに行くことになりその契約を交わしにたまたま川越へ来たという設定。夏にみんなで名刺のデザイン考えて行きの特急でラッピングしてプレートが来たと同時にネタばらし。大成功! pic.twitter.com/TBezPKqzSN
— 井口 信之輔 / コントラバス (@igu_shin) September 2, 2019
掲げたゴールに向かって走る楽しさ
普段こんなことほとんどやらないからなのか、すっごい楽しい時間でした。
みんなでアイディアを持ち合わせて何かを作る。
これってよく考えてみると音楽作りに近いですよね。
最近はアマチュア楽団の指揮・指導にあたることが多いので、演奏会というゴールを目指して数ヶ月間一つのチームとして駆け抜けるということと同じだなと感じました。
ゴールを目指して一緒に走る。
仕事も遊びも何かを完成させるまでが物語になると面白くなる。
そんなことを教えてくれた出来事でした。