明日のためのレッスンノート

吹奏楽におけるコントラバスの魅力。パートは自分一人だけ、周りにコントラバスを教えてくれる人がいない環境で練習に励むキミに伝えたいメッセージを添えて。

明日のためのレッスンノート(vol.18)

吹奏楽におけるコントラバスへの理解と発展を願って10月から毎週更新を続けてきた『明日のためのレッスンノート』も2018年最後の更新となりました。

去年の秋にこの企画を思いついて周りにコントラバスを教えてくれる人がいない環境で悩む人が「胸張って先輩になれるように」をテーマに3月末まで毎週レッスンノートを更新して、今年は「去年のノートを今の視点でリライト」することをテーマに進めてきました。

「ここまで一緒に勉強してきてくれたら、吹奏楽部でコントラバスを弾くために知っておきたいことは身に付いてるから胸張って先輩になってね」と背中を押すつもりで書いています。

コントラバスを弾くために知っておきたい知識、講習会でお話をする基礎の話、そしてコントラバスの運指表に基づいた12のポジションの解説へと進めてきました。

TwitterやLINE@でも「レッスンノート、役に立っています!」と声をかけてくれることもあり、嬉しく思いました。

7ヶ月連続更新の旅も折り返し地点までやってきました。

今日は、年末なのでポジションの勉強は一休み。

吹奏楽におけるコントラバスの魅力を書いていきます。

年内最後のレッスンノート、少しの時間だけお付き合いください。

年が明けて、早く練習したくなる気持ちが生まれたら嬉しいです。

コントラバスは、チューバの先輩?

吹奏楽にけおるコントラバスの魅力、どこから書けばいいかな。

そもそも何でコントラバスが管楽器の中にいるの?

この疑問は多くの人が持ったと思うんだ。

実はね、遠い昔からコントラバスは管楽合奏の中に参加していました。

まずは、コントラバス誕生の話を少ししてみるね。

コントラバスはこうして生まれた(簡単に)

コントラバスは16世紀にヴィオール族の最低音楽器であるヴィオローネから発達しました。

そして、その後の流れをまとめてみると

  • 17~18世紀には構造、チューニング法、弦の数などが異なる様々なタイプの楽器が登場
  • 19世紀にはヴィオローネにあったフレットがなくなり
  • 20世紀のはじめに弦の数も今と同じ4弦に落ちついたと言われている

詳しくはこちら(僕がライターをやっているコラムライブラリーです)

チューバの誕生日

コントラバスは16世紀にヴィオローネから発展したことに対し、吹奏楽でコントラバスとともに低音域を担当するチューバは、誕生日が1835年9月12日という記録がある。

ここまでをまとめると、コントラバスが今の形に落ち着いたのはチューバ誕生より後だけど、チューバが誕生する前から、コントラバスは管楽アンサンブルの中には参加していたという流れがわかると思う。

有名な作品としては、1783〜1784年に書かれた、モーツァルトの管楽セレナード第10番 変ロ長調「グラン・パルティータ」かな。

吹奏楽におけるコントラバスの魅力

管楽合奏の中で低音域の音量を充実させたければ、人数を増やせばきっと解決するよね。

吹奏楽作品の中には、コントラバスが編成に入ってない曲、オプションパート扱いの曲もあるので、必ずしも吹奏楽にコントラバスが必要であるとは思ってない。

でも、吹奏楽という編成にコントラバスが入ることによって「弦楽器の響きが加わり」サウンドがガラリと変わるとはよく耳にする。

言葉だけで表現するのは難しいけど、吹奏楽にコントラバスが入ることを「温かい紅茶にミルクを入れたようになる」とイメージしてみてほしい。

透き通った紅茶にミルクを注ぐとカップの中でふわっとミルクが広がるよね。

ミルクの甘みでまろやかになった紅茶。

でも、それは飲んだ人にしか分からない。

音楽も同じで、吹奏楽にコントラバスが入ると何が起きるかは言葉だけでは伝えきれない。

実際に演奏会に足を運んで演奏を耳で聴いて、はじめてその必要性を理解できるのかなと思ってる。

だから、演奏会に足を運ぶのはとっても大事なんだ。

紅茶を飲まない人もいるだろう。

いろんな例えをしてみるね。

キミの好みに該当するものがあるはずだ。

  • コーヒーや紅茶にミルクを入れた味
  • 入浴剤を入れたお風呂(入浴剤の粉こそバンドを包み込む弦の響きだ)
  • ラーメン二郎にニンニクを入れたときのウマさ(オプションだけど弦バス入れますか?)
  • 中本の蒙古タンメンを食べたときに感じる、辛さの中に隠れた旨さ

吹奏楽におけるコントラバスは、そういったものに近いと思ってる。

キミはどう思う?

小編成におけるコントラバスの魅力

吹奏楽コンクールでは30人以下で出場するB部門を小編成の部としているよね。

こうした少人数のバンドの中に、きちんと基礎を身につけたコントラバス奏者が一人いるだけで、周りの吹きやすさが違ってくる。

人数が少ない場合は、ファゴットやバスクラリネットの楽譜を演奏することもある。

他の楽器に楽譜を弾いたことがある人、どれくらいいるかな?

移調楽器の楽譜を弾くとなると、マジで読み替えが大変だよね。

コントラバス用の楽譜を書き直して用意して欲しいくらいだけど、指揮者と相談しながら「ここはアルコ(弓)で弾いた方が良いか、ここはピッチカート(指)で弾いた方がいいんじゃないか」と相談しながら工夫していくことによって、その曲をより面白いものにできるのもコントラバスならではの魅力だ。

他パートの楽譜にはarcoもpizzも書いてないから、ここはどっちがいいかなってトライ&エラーを繰り返しながら弾けばいい。

楽譜がなければ弾かないという考えもあり

部活だと降り番っていうシステムはあるのかな?

コントラバスは「コントラバスの楽譜を弾く」という考えもありで、もし負担になるのであればコントラバスのない楽譜は曲はお休みしてもいいかもしれない。

コントラバスの楽譜があるからこそ、コントラバスが入ったときにその必要性を感じることもあるかもね。

大編成におけるコントラバスの魅力

吹奏楽コンクールではB部門に対し、55人以下で出場する大編成の部をA部門としているよね。

編成が大きくなるとコントラバスの人数も2本、または3本と増えていくことが多い。

個人的には5本くらい欲しい。

ブラス・エクシード・トウキョウでは通常3本で前列2人+後列1人(エレキベース兼任)でボックスを組んでいる。

この形にすると、後ろからコントラバスの音が聴こえてくるし、コントラバスのトップとチューバの距離が近くなり、低音セクションのまとまりができる。

大編成での聴こえ方

大編成である程度の音量となればコントラバス単体の音は聴こえないことが多い。

でも、吹奏楽の中で大切なのはコントラバスが弦楽器の響きを加えること。

それから、低音セクションの中でしっかりと聴こえていること。

これでOKだ。

クラリネットオーケストラでの体験談

洗足学園の学生だった頃、クラリネットが70名ほどいるクラリネットオーケストラに参加していたんだ。クラリネットとコントラバスの相性は抜群だからとっても楽しかった。

クラリネットがオーケストラの各パートを担当し、そこにコントラバスが2〜3本入る。

クラリネットがこれだけ集まった中でも大音量となればコントラバスの音は聴こえないと思っていたけど、同じ低音域を担当していた仲間に話を聞くと

  • 後ろから弦の響きが聴こえてくると、とても吹きやすい
  • 管楽器はブレスを取るので、そうしたときに後ろからコントラバスが音を出してくれているととても楽に吹ける

そんなことを話してくれた。

こうした体験から「低音セクションの中でしっかりと聴こえていたら十分」という考えを洗足学園のクラリネットオーケストラを通して学んだ。

だから、少し話を戻して大編成のとき、時にチューバに任せ、時にコントラバスがサポートする。

持ちつ持たれつの関係を作ればいい。

そんな考えに至った。

これを聴け!コントラバス大活躍する吹奏楽作品

吹奏楽作品の中にも、コントラバスが大活躍する曲がある。

ここでは、僕が大好きな曲を2曲紹介するね。

  • ベルト・アッペルモント/交響曲第1番「ギルガメシュ」

ベルギーの作曲家、アッペルモント初の交響曲。

人類最古の世界文学と言われる「ギルガメシュ叙事詩」を題材にした作品で、第1楽章の冒頭から5弦コントラバスが大活躍するんだ。

曲の始まりから最高にシビれるぞ。

でもそのあとは聴けなくなる。

全然問題ない、僕たちは欲しいところでバッチリ決めることが大切だ。

  • ヤン・ヴァン・デル・ロースト/交響詩「スパルタクス」

同じくベルギー出身の作曲家ヤン・ヴァン・デル・ローストの作品で、ローストはアッペルモントの作曲の先生にあたる人。

失われた自由を求め、古代ローマの奴隷や剣闘士たちが起こした反乱を書いた音楽劇。

美しい中間部でコントラバスのピッチカートが響く。

コントラバスの響きが音楽をよりロマンティックなものにしてくれる。

楽器ケースが寝袋に?疲れたときはケースで仮眠をしてみよう。

コントラバスは大きいので楽器のケースに人が入ってしまう。

中は楽器を保護するためにクッションが入っているのでフカフカなんだ。

楽器ケースを開いて、靴を脱いで足からケースに入れば寝袋になる。

チャックを閉めて目を閉じればもう夢の中だ。

https://twitter.com/igu_shin/status/892983625179832320

演奏会のパフォーマンスで回るコントラバス

定期演奏会のポップスステージやパローマンスの中でコントラバスをクルッと回すとかっこいい。

僕は、ブラス・エクシード・トウキョウの演奏会を始め主に吹奏楽の演奏会や芸術鑑賞会、親子コンサートでよくコントラバスを回している。

過去に、ブラス・エクシード・トウキョウの演奏会を聴いて吹奏楽のコントラバスが好きになったという話を聞いたことがある。

その頃から、きっと客席にいるであろうコントラバスを弾いている子に向けて「コントラバスってこんなこともできるんだよ!」というメッセージを込めて、演奏会のどこかでコントラバスを回している。

コントラバスを回すコツは「曲のテンポで回すこと」

https://twitter.com/igu_shin/status/896266804770648065

手で輪っかを作れば万が一バランスを崩したときにも楽器をギュッと握ることができる。

エンドピンの先端が丸いタイプの楽器でゴムが付いてない場合は危ないからやめておこう。

そして、大切なのは調子に乗らないこと。

僕たちは舞台でふざけているときほど心は冷静に、計算しながらやっているんだ。

軸がぶれないように、思いっきり回してみよう。

練習が必要だけど、慣れてきたら思いっきり回せるようになるぞ。

下手な奴なんてそういない

キレイごと一切無しに書いてることを前提に話をするね。

よく「下手」っていう言葉を聞くけど、その言葉のほとんどは勘違いだ。

今年は本当にたくさんの学校でレッスンをした。

年間通して30校近くの学校に行って、夏は毎日レッスンで飛び回っていた。

そんな中で「下手だと思う奴」は一人もいなかった。

でも、自信なさそうに弾いてる人が多くいた。

俺はこのギャップをどんどん埋めていきたい。

もし、自分が「下手」だと思ってる人がいたら胸に手を当てて考えて欲しい。

それって「下手なんじゃなくてやり方がわからないんじゃない?」

スピッカート、トレモロにしてもそう、ボウイングの書き方だってそうだ。

「下手」だと思っている人は技術を知らないだけで、絶対できる。

知らなければ調べたり、聞けばいい。

周りに聞く人がいないと思ったら俺がいるからどんどんメッセージを投げたらいい。

じゃぁ「下手な奴」ってどんな人?ってなるよね。

簡単だ。

できる技術を持ってるのにやらない奴。

僕は思えば高校生の頃、ちょっと弾けるからって調子に乗ってた。

あまり練習しなかった。

これが、典型的な下手な奴だ。

おわりに

明日のためのレッスンノートvol.18は、吹奏楽におけるコントラバスの魅力を書いてきた。

これまでTwitterのDMや質問箱、LINE@のメッセージでも、吹奏楽の中でコントラバスがいる意味がわかりませんというメッセージが多く届いていたから、そうした悩みを持つ人の元にもこの記事が届いてくれたら嬉しいな。

今年もブログを通してレッスンノートを書いて発信したり、言葉だけで伝えるのが難しい楽器の質問を質問箱で答えてみたり、今の自分が持つ全総力を挙げて発信することに力を入れてきました。

ブログを始める前は「まだまだ勉強中の自分が発信なんて」と思っていたけど、レッスンに行けばそんな自分を先生と呼んでくれる人たちがいて、楽器を好きになってくれる人がいて、そんな環境でレッスンをさせていただいて、こんな自分でも今持ってる手札を伝えることで誰かの役に立つことができるんだなと感じました。

まだまだ、僕も至らぬところだらけだけど、全国にいるパートに自分一人しかいない環境、周りにコントラバスを教えてくれる人がいない環境で練習に励んでいるコントラバス奏者たちの力になれたらと、これからもレッスンノートを更新し続けていこうと思います。

 

2018年のレッスンノートはこれでおしまい。

来年は1月の2週目からレッスンノートをスタートさせようと思います。

また、一緒に頑張っていきましょう。

何かわからないことがあれば、いつでも連絡してきてください。

答えられることに限りはあるけれど、何か力になれたらと思います。

吹奏楽におけるコントラバスへの理解と発展を願って。

それでは、良いお年をお迎えください。

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イグチシンノスケ

千葉県出身。 船橋市立葛飾中学校管弦楽部にてコントラバスと出会う。 千葉県立市川西高等学校吹奏楽部を経て洗足学園音楽大学へ入学。 2022年春学期東京音楽大学指揮研修講座修了。 在学中より「吹奏楽部におけるコントラバスの現状」に着目し、多くの講習会に講師として参加。大学卒業後はフリーランスのコントラバス奏者としてオーケストラ、吹奏楽、室内楽をはじめ楽器製作ワークショップやレコーディングなど多方面での演奏活動をする傍ら、吹奏楽指導者・アマチュアオーケストラのトレーナーとしても活動しており、中でも吹奏楽におけるコントラバスの指導に力を入れている。 これまでにコントラバスを寺田和正、菅野明彦、黒木岩寿各氏に師事。指揮法を川本統脩、三河正典各氏に師事。よこはま月曜吹奏楽団指揮者。初心者と子どものためのオーケストラpìccolo音楽監督。板橋区演奏家協会理事。取手聖徳女子高等学校音楽科非常勤講師。

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