こんにちは!コントラバス奏者の井口信之輔です。
2017年も残すはあと少し!
これから年末に向けて、ウインターコンサートやクリスマスコンサートが各地で開催される時期になってくると思います。
僕は、最近時間があれば色々な演奏会に足を運んで音楽を楽しんでいる中で、MCにも注目しています。
面白いMCには「なるほど!」がたくさん詰まっているので、今よりちょっと曲に詳しくなった気持ちになって演奏を楽しめます。
他にも、持ち前のギャグセンスを生かして客席を笑わせてくれるMCでお客さんを楽しませてくれることもありますが、たまに内輪ネタすぎて客席がしらけてしまうときもあります。
MCは演奏会進行の軸ともなります。
その、軸となるMCを面白く書くにはどうすれば良いのか?
僕なりの経験談を書いてみようと思います。
MC台本は演奏会進行の鍵!
演奏会で素敵な音楽に出会えばハッピーな気持ちになりますが、その演奏を聴く前のMCでこれから耳にする音楽の世界引き込まれたら、より演奏を楽しめることでしょう。
演奏会では「MC→演奏」の流れが多いですが、このMCにちょっとした工夫をすることで、客席にいるお客さんとの距離がぐっと近づき、ひとつの時間をともにすることができると考えています。
日常に溢れる「いいね!」を取り入れる
日々生活をしていると街にはいろいろなキャッチコピーが溢れています。
電車の広告、テレビから流れるCM、雑誌などなど。
電車に乗っていると、車掌さんが心温まるアナウンスをしてくれるときもありますよね。
日常生活を送る中で、ふと耳に飛び込んできた言葉、目にとまったキャッチコピーは、直感で「いいね!」と感じたものが多いので、メモしておくか写真に残してそっとしまっておくとよし。
もしあなたが、演奏会のMCを作ることになったとき、大いに役立ちます。
小田急ロマンスカーの車掌さんのおもてなし
小田急ロマンスカーといえば新宿から箱根へ、そして江ノ島へと走る小田急電鉄の特急電車です。
昭和の高度経済成長期に登場した古き良き時代の車両や、都内に通勤する人の足となるビジネス特急として活躍する車両、そして箱根への観光に特化し古き良きロマンスカーの魅力を現代に蘇らせた車両など、たくさんの車両が走っています。
その中でも、箱根観光に特化したVSE(50000形)という車両に乗る機会があったら、ぜひ車掌さんのアナウンスに耳を傾けてみてください。
- このロマンスカーは、新宿を定刻通り出発し、温泉情緒あふれる箱根の街へと向かいます。
出発前にこんなアナウンスがあったらワクワクしますよね。
- 皆様にとって2011年はどのような年だったでしょうか。
2011年はいろんなことがありましたね。
12月31日に新宿から乗車したとき、出発前のアナウンスで流れた一言です。
その間の取り方も見事で「何があったかな〜」と考えてしましました。
- 新緑の季節となってまいりました。沿線上の風景を楽しみながら、ロマンスカー車内でのひとときを、ごゆっくりとお過ごしください。
四季折々のアナウスをしてくれたり、渋沢〜新松田間など過去にCM撮影で使われたスポットを紹介したり、ロマンスカーの旅をより楽しいものにしてくれます。
こうして、箱根への旅をより楽しませてくれるアナウンスは、演奏会のMC台本を書くときに、とても参考になりました。
曲の雰囲気に応じていろんな仕掛けを入れてみる
演奏会といっても、地域のイベント、地区音楽会、定期演奏会とさまざまで、演奏する曲のジャンルもさまざまです。
こうしたときは「曲の雰囲気×お客さんの世代」をヒントに考えていくと面白いものが書けます。
クリスマスの音楽をバックに影アナウンス
過去に開催をしたクリスマスコンサートでは、開演前にクリスマスの音楽を流し、その中に影アナウンスを入れてみました。
クリスマスを彩るイルミネーションが街を包み、2017年も残りわずかとなりました
クリスマスの時期のディズニーランドに遊びに行ったとき、パークに流れる音楽を聴きながら
演奏会の影アナウンスに「クリスマスの音楽×季節のアナウンス」を入れたら面白そうだな
と思ったアイディアです。
老人ホームでの演奏会
老人ホームへ訪問演奏に行くというときには「演奏曲×記憶」をMCに入れると、当時を懐かしみながら演奏を楽しんでもらえることが多いなと感じました。
- あなたはどこで、何をしていましたか?
老人ホームで懐かしい歌謡曲を演奏する前に、曲のエピソードを書きつつさりげなく問いかけを入れてみます。
たとえば、1963年のヒットナンバー「見上げてごらん夜の星を」
誰もが一度は耳にしたであろう名曲ですね。
1963年といえば都内を一周する山手線に緑色の電車が走り始め、大相撲では昭和の大横綱・大鵬が活躍し、プロ野球では読売ジャイアンツが日本シリーズを制しました。
こうした懐かしいエピソードを楽しんでもらいながら、演奏前に
そんな1963年、あなたはどこで、何をしていましたか?
と問いかけてみると、それぞれが当時を思い出しながら演奏を楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています。
老人ホームを利用する方の平均年齢が85歳前後。
2017年から計算すると1963年は30代になった頃、今の僕と同じくらいの年です。
きっと、働き盛りの頃だったのではないでしょうか。
ゲームや映画の音楽を演奏するとき
ゲーム音楽や映画音楽、こうした作品を演奏するときは「音楽×ワンシーン、名セリフ」を入れてみます。
たとえば、ブラス・エクシード・トウキョウのゲーム音楽公演で爆発的な人気を誇る『クロノクロス メドレー』
ゲームのはじまりを忠実に再現したメドレーに合わせて、オープニング画面に流れるセリフを入れてみました。
はじまりは、何だったのだろう?
運命の歯車は、いつまわりだしたのか?
映画の音楽を演奏するときは、名セリフの他にキャッチコピーを入れても面白いですね。
僕の好きな映画に『フォレスト・ガンプ』という作品があります。
この映画のキャッチコピーは、人生はチョコレートの箱、開けてみるまで分からない
作品のワンシーン、名セリフ、キャッチコピーを上手く活用できると、演奏前にお客さんとその作品の良さ、世界観を共有できるようになりますし、その作品の大ファンの人がいたら、思わぬサプライズになるかもしれません。
吹奏楽のオリジナル作品を演奏するとき
最後は、吹奏楽オリジナル作品を演奏するときです。
演奏会や、曲の雰囲気にもよりますが「曲の雰囲気×会場の雰囲気」をテーマに
- 曲の名前と作曲者について
- 曲のエピソード
- 曲の聴きどころ
この3セットを軸に、お客さんから「なるほど!」が引き出せると面白いものが書けます。
僕がMC台本を書く演奏会はエンターテイメント性の高い演奏会が多いので、テーマパークのキャストになったような、絵本を読んでいるような、そんな気持ちで書いていることが多いです。
吹奏楽オリジナル作品は、物語性のある曲が多いので、下調べをしっかりとして、情報×日常に溢れる「いいね!」を組み合わせオリジナル性を出していきます。
合奏の前に、語りを入れてみる
吹奏楽のオリジナル作品で、世界の歴史や神話を題材とした曲であれば、最後にちょっとした語りを入れても面白くなります。
この語りはストーリーを共有できるので、合奏の時間にも「語り→演奏」という形で取り入れても効果的です。
これは、夏のコンクールシーズンにとある指導校に書いた語りの一部
輪廻の八魂 ~仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌/樽屋雅徳 作曲
時は嘉吉元年(かきつがんねん)。 結城の戦いに敗れた里見義実(よしざね)は安房の国へ落ち延びたのち、その土地 の領主となった。 しかし、長禄元年、隣国館山の領主・安西景連(かげつら)が安房の国へと攻撃を 仕掛け安房の国は落城間近となる... 落城を目の前とした里見義実は、飼犬の八房(やつふさ)に 「景連の首を取ってきたら娘の伏姫を与える」との戯れを言ったところ、八房は本当に景連の首を咥え義実の元へと戻ってくるのであった。
これは、里見八犬伝をテーマに書いた曲です。
「語りを入れたら音がとてもよくなりました」
と報告をいただき、こうした練習も面白いなという発見がありました。
ぜひ、興味のある人は書いてみてください。
さいごに
MCを面白く書く仕掛けとコツを書いてみました。
最後にもう一つ、もしMCを書く人と読む人が違う場合は、読み手を想像して書くことをおすすめします。
喋り方、テンポ感、その人になった気持ちで書いて、自分を読んでみます。
そうすることで、読み手が台本に魂を吹き込んだときに、より面白いものが出来上がるんじゃないかなと、思っています。
僕は喋るのではなく、書く専門ですが、これからも日常の「いいね!」をたくさん取り入れて面白いものを書いていきたいと思います。
これからの演奏会シーズン、良い台本と良い演奏で、素敵な演奏会を作り上げてください!