先日、車を運転しているときに『井口先生の音楽鑑賞教室』というタイトルが浮かんできました。こういうのって突然思いつくことが多いのですが、せっかくならもう少し発展させてみようと思って試しにひと記事書いてみます。
クラシック音楽の解説って難しい言葉が並びますが、誰でもクラシックにくわしっくなれるような読みモノから入って、音楽を聴きながら「ここはどんな場面かな?」なんてより深く音楽を知るきっかけが見つかれると聴く楽しさが広がるんじゃないかなと思います。
さて、今回取り上げる作品は?
グスタフ・ホルスト/セントポール組曲
グスタフ・ホルストという名前を挙げて「あ!知ってる!」という人はあまり多くないかもしれませんが、たぶん『木星』の中間部分の【あのメロディ】を聴かせて「この曲を作った人だよ」と聞くと、一気にホルストとの距離が縮まるかもしれません。
ホルストはイギリスの作曲家で、教育者でもありました。有名なメロディが出てくる【木星】が入った組曲「惑星」で一躍有名になりますが、他にもたくさん曲を残しているのです…が、あまり知られていません。
いわゆる【惑星がバズって一躍有名になった】ような感じですが、彼の本当の魅力は惑星だけでない小さな作品なのです。今回は彼のそんな隠れた名曲にスポットを当ててみたいと思います。
時計の針を遡り、今から100年ちょっと昔のお話です。当時、セント・ポール女学校の音楽の先生をしていたホルストに防音装置を備えて専用の部屋が与えられました。そして、そのことに対し感謝の気持ちと、女学校の生徒たちのための作曲されたのが『セントポール組曲』です。
弦楽器のみで演奏する編成ですが、より多くの生徒が演奏できるようにと木管楽器が加わった管弦楽版というのも存在します。
演奏時間は12分ほどで全部で4つの音楽(楽章)からなる組曲です。
各楽章の聴きどころ
・第1楽章 Jig
「ジグ」はイギリスやアイルランドで遠い昔に踊られた伝統的な踊りです。リズムが特徴的でよく耳を澄まして聴いてみると「タカタタカタ」という心地よいリズムが流れています。
・第2楽章 Ostinato
「オスティナート」と聞くと少し難しい言葉に思えますが、同じセリフが何度も繰り返される感じです。「執拗音型」とか「執拗反復」なんて書くと一気に難しさが増しますが「なんかずっと同じでよくわからなくなってくる」というところがオスティナートの入り口です。
・第3楽章 Intermezzo
「インテルメッツォ」はテレビのCMみたいな感じです。短い曲が多いですが、この曲の中では少し長めです。さて、子供の頃にテレビに夢中になったことはありますか?めちゃくちゃいいシーンの前になると、だいたいCMに入りますよね。でも、あのCMこそが次のシーンへの期待値をグッと上げてくれたりするんです。
何が言いたいかは、実際に曲を聴いてみてください(ハンカチ必須)
・第4楽章Finale
「フィナーレ」は終わりという意味。いろいろな表情を見せてくれた『セントポール組曲』ともお別れの時間が近づいてきました。この音楽を締めくくるのは、心地よいリズムとどこか懐かしさを感じるような素朴なメロディ。軽快なテンポに乗って次々と楽器が重なり向かう先にあるのがこの曲一番の聴きどころです。
この曲の一番の聴きどころ、それはホルストが曲の最後にイングランドに伝わる民謡「グリーンスリーブス」を登場させたという仕掛けです。
一度はどこかで耳にした頃のある「グリーンスリーブス」のメロディが重なる仕掛けを知ってるか知らないかでこの曲の聴き方ってメチャクチャ変わってくるといのは大袈裟ではなく、本当に【最後の最後でチェロが全てを持っていった】瞬間の「これだよね!!!!」って感動をぜひ体験してほしいです。
余談ですが、この第4楽章は同じくホルストの名曲「吹奏楽のための第2組曲」の第4楽章「ダーガソンによる幻想曲」を本人がアレンジしたものなので、吹奏楽と聴き比べをしても面白いです。
ということで、そろそろ結構な文字数になってきたのでおしまいにしたいと思います。
グスタフ・ホルスト/セントポール組曲、ぜひ聴いてみてください。