吹奏楽におけるコントラバスへの理解と発展を願って毎週更新『明日のためのレッスンノート』
2021年もこれまでと変わらず
- パートは自分一人だけ
- 周りにコントラバスを教えてくれる人がいない
という環境で練習に励む人たちへ向け、胸を張って先輩になることを目標に書いていきます。
秋から毎週レッスンノートを更新しはじめて、先週までコントラバスの運指表に基づいた12のポジションの解説をしてきました。
一般的に広く知られているコントラバスの教則本で学ぶ運指表に基づいた12のポジションを解説し、毎週ポジションを一つずつ習得していくことで確実に知識と実力をつけていくのが目標でした。
ここまで一緒に頑張ってきてくれた人は、春から胸を張って先輩になれますし、後輩指導に対する自信もつくでしょう。
長きに渡り続いたポジションの解説を終えたので、一度コントラバスの魅力について書いていきたいと思います。ちょっと早いですが、新しい仲間を迎え入れる準備、はじめていきましょう。
コントラバスは、チューバの先輩?
吹奏楽にけおるコントラバスの魅力を書くとしたら、どこから書こう。
そもそも、何でコントラバスが管楽器の中にいるの?
この疑問は多くの人が持ったと思うし僕もそのうちの一人。
そこで調べてみたところ、遠い昔からコントラバスは管楽合奏の中に参加していたということがわかりました。
まずは、コントラバス誕生の話を少しだけ。
コントラバスはこうして生まれた
コントラバスは16世紀にヴィオール族の最低音楽器であるヴィオローネから発達しました。
そして、その後の流れをまとめてみると
17~18世紀には構造、チューニング法、弦の数などが異なる様々なタイプの楽器が登場
19世紀にはヴィオローネにあったフレットがなくなり
20世紀のはじめに弦の数も今と同じ4弦に落ちついたと言われている
詳しくはこちら
チューバの誕生日
コントラバスは16世紀にヴィオローネから発展したことに対し、吹奏楽でコントラバスとともに低音域を担当するチューバは、誕生日が1835年9月12日という記録がある。
ここまでをまとめると、コントラバスが今の形に落ち着いたのはチューバ誕生より後だけど、チューバが誕生する前から、コントラバスは管楽アンサンブルの中には参加していたという流れ。
有名な作品としては、1783〜1784年に書かれた、モーツァルトの管楽セレナード第10番 変ロ長調「グラン・パルティータ」
吹奏楽におけるコントラバスの魅力
管楽合奏の中で低音域の音量を充実させたければ管楽器の人数を増やせば解決するとして、吹奏楽作品の中には、コントラバスが編成に入ってない曲、オプションパート扱いの曲もあるので、必ずしも吹奏楽にコントラバスが必要であるとは思ってない。
だけど、コントラバスを必要としている吹奏楽作品にコントラバスが入ることによって弦楽器の響きに包まれ暖かさが生まれ、コントラバスがその魅力を発揮するのは弱奏部分。
言葉だけで表現するのは難しいけど、吹奏楽にコントラバスが入ることを温かい紅茶にミルクを入れたような感じに近い。
透き通った紅茶にミルクを注ぐとカップの中でふわっとミルクが広がるよね。
ミルクの甘みでまろやかになった紅茶。
でも、それは飲んだ人にしか分からない。
音楽も同じで、吹奏楽にコントラバスが入ると何が起きるかは言葉だけでは伝えきれない。
実際に演奏会に足を運んで演奏を耳で聴いて、はじめてその必要性を理解できるのかなと思ってる。
だから演奏会に足を運ぶのはとっても大事で、何度も客席に足を運ぶことで音楽を聴く耳が育ちコントラバスの響きに気づく人もいると思う。
吹奏楽におけるコントラバスは、他にもこんな例えがある(実体験による)
コーヒーや紅茶にミルクを入れた味
入浴剤を入れたお風呂(入浴剤の粉こそバンドを包み込む弦の響きだ)
ラーメン二郎にニンニクを入れたときのウマさ(弦バス入れますか?)
中本の蒙古タンメンを食べたときに感じる、辛さの中に隠れた旨さ
吹奏楽のコントラバスの役割はなんですか?ってよく聞かれた夏。コーヒーのミルク、二郎のニンニク、お風呂の入浴剤のような役割かと思います。
— 井口 信之輔 / コントラバス (@igu_shin) August 6, 2018
小編成におけるコントラバスの魅力
吹奏楽コンクールでは30人以下で出場するB部門を小編成の部がある。
こうした少人数のバンドの中に、きちんと基礎を身につけたコントラバス奏者が一人いるだけで周りの吹きやすさが違ってくる。
人数が少ない場合は、ファゴットやバスクラリネットの楽譜を演奏することも。
他の楽器の楽譜を弾いたことがある人、どれくらいいるかな?
移調楽器の楽譜を弾くとなると、マジで読み替えが大変だったりするからコントラバス用の楽譜を書き直して用意してくれたらとっても嬉しいのがコントラバス奏者の本音。
他パートの楽譜を弾くときは、指揮者や顧問の先生と「ここはアルコ(弓)で弾いた方が良いか、ここはピッチカート(指)で弾いた方がいいんじゃないか」と相談しながら工夫していくことによって、その曲をより面白いものにできるのもコントラバスならではの魅力。
他パートの楽譜にはarcoもpizzも書いてないから、ここはどっちがいいかなってトライ&エラーを繰り返しながら弾くのが大事。
楽譜がなければ弾かないという考えもあり
部活だと降り番っていうシステムがあるかはわからないけど、コントラバスはコントラバスの楽譜を弾くという考えもありで、もし負担になるのであればコントラバスのない楽譜は曲はお休みしてもいいかもしれない。
コントラバスの楽譜があるからこそ、弦の響きが入ったときに役割や必要性を感じることもある。
大編成におけるコントラバスの魅力
吹奏楽コンクールではB部門に対し、55人以下で出場する大編成の部をA部門。
編成が大きくなるとコントラバスの人数も2本、または3本と増えていくことが多い。
個人的には5本くらい欲しい。
大編成での聴こえ方
大編成である程度の音量となればコントラバス単体の音は聴こえないことが多い。
だけど弦楽器単体の音量を考えたら全く問題なしで、むしろ指導する側がそこを知らずに音量を要求してしまうことで奏者が無理に音を出そうとして弦楽器が持つ本来の役割を果たせなくなってしまわないように注意したいところ。
コントラバスは低音セクションの中でしっかり聴こえていたらOK。
吹奏楽の中で大切なのはコントラバスが弦楽器の吹奏楽という形態に弦の響きを加えること。
クラリネットオーケストラでの体験談
洗足学園の学生だった頃、クラリネットが70名ほどいるクラリネットだらけのオーケストラに参加していて、クラリネットとコントラバスの相性は抜群だからとっても楽しかった。
クラリネットがオーケストラの各パートを担当し、そこにコントラバスが2〜3本入る。
クラリネットがこれだけ集まった中でも大音量となればコントラバスの音は聴こえないと思っていたけど、同じ低音域を担当していた仲間に話を聞くと
後ろから弦の響きが聴こえてくると、とても吹きやすい
管楽器はブレスを取るので、後ろからコントラバスが音を出してくれているととても楽に吹ける
そんなことを話してくれた。
こうした体験から、低音セクションの中でしっかりと聴こえていたら十分という考えを洗足学園のクラリネットオーケストラを通して学んだ。
吹奏楽の場合は、時にチューバに任せ、時にコントラバスがサポートする。
持ちつ持たれつの関係を作っていくのが理想の形。
(おまけ)強奏時は「俺ら聴こえないわ、チューバ任せた❗️(もちろん弾くけど)」って頼ったり、弱奏時に少し大きめな音で木管低音の後ろからコントラバスが「響き」を作ってあげたり、お互い得意な部分を生かして持ちつ持たれつの関係ができたら良い低音チームになると思います。 https://t.co/UZQnC9bswJ
— 井口 信之輔 / コントラバス (@igu_shin) December 14, 2017
これを聴け!コントラバス大活躍する吹奏楽作品
吹奏楽作品の中にも、コントラバスが大活躍する曲がある。
めちゃくちゃ好きな曲を2曲紹介します。
ベルト・アッペルモント/交響曲第1番「ギルガメシュ」
ベルギーの作曲家、アッペルモント初の交響曲。
人類最古の世界文学と言われる「ギルガメシュ叙事詩」を題材にした作品で、第1楽章の冒頭から5弦コントラバスが大活躍。
曲の始まりからコントラバスの低い音が暴君ギルガメシュのテーマを恐ろしく描く。
ヤン・ヴァン・デル・ロースト/交響詩「スパルタクス」
同じくベルギー出身の作曲家ヤン・ヴァン・デル・ローストの作品で、ローストはアッペルモントの作曲の先生にあたる人。
失われた自由を求め、古代ローマの奴隷や剣闘士たちが起こした反乱を書いた音楽劇。
美しい中間部でコントラバスのピッチカートが響く。
音楽をよりロマンティックなものにしてくれるコントラバスの響きはホールで堪能したい。
楽器ケースが寝袋に?疲れたときはケースで仮眠をしてみよう。
コントラバスは大きいので楽器のケースに人が入ってしまう。
中は楽器を保護するためにクッションが入っているのでフカフカ。
楽器ケースを開いて、靴を脱いで足からケースに入れば寝袋になる。
チャックを閉めて目を閉じればもう夢の中。
https://twitter.com/igu_shin/status/892983625179832320
演奏会のパフォーマンスで回るコントラバス
定期演奏会のポップスステージやパローマンスの中でコントラバスをクルッと回すとかっこいい。
僕も、吹奏楽の演奏会や芸術鑑賞会、親子コンサートでよくコントラバスを回している。
過去に、自分が出演した演奏会でコントラバスを回しているのを見て吹奏楽のコントラバスが好きになったという話を聞いたことがある。
その頃から、きっと客席にいるであろうコントラバスを弾いている子に向けてコントラバスってこんなこともできるんだよ!というメッセージを込めて、演奏会のどこかでコントラバスを回している。
コントラバスを回すコツは、曲のテンポで回すこと
【コントラバスを回すコツ】
曲の演出でコントラバスをクルッと回す時、このように左手で輪を作った中で回せばバランスを崩した時もすぐに握ることができおすすめ👻 pic.twitter.com/XkPZ3T9ohc— 井口信之輔|コントラバス𝕏吹奏楽指導 (@igu_shin) August 12, 2017
手で輪を作れば万が一バランスを崩したときにも楽器をギュッと握ることができる。
エンドピンの先端が丸いタイプの楽器でゴムが付いてない場合は危ないからやめておこう。
そして、大切なのは調子に乗らないこと。
僕たちは舞台でふざけているときほど心は冷静に、計算しながらやっています。
新入生歓迎演奏とかでパフォーマンスするときにコントラバスを回すコツ。
・左手で輪をしっかり作る
・エンドピンのゴムが付いるか確認。先端が丸いタイプはゴムが付いていない、穴が空いている状態だと滑るから危険⚠️
・ふざけてるようで調子に乗らない。心は冷静に曲のテンポで回すとかっこいい。 https://t.co/m0WpEk0Wyx— 井口 信之輔 / コントラバス (@igu_shin) April 11, 2018
軸がぶれないように、思いっきり回してみよう。
練習が必要だけど、慣れてきたら思いっきり回せるようになるぞ。
親子コンサートで大人気‼️なコントラバス回しの練習。軸がブレないように思いっきり回す。手で輪を作っておいて危ないと思ったらギュッと握るのがポイント。 pic.twitter.com/RxQgsDuCsN
— 井口 信之輔 / コントラバス (@igu_shin) July 29, 2018
下手な奴なんてそういない
レッスンノートのはじめにも書いたけど、キレイごと一切無しに書いてることを前提のお話。
よく「下手」っていう言葉を聞くけど、その言葉のほとんどは勘違い。
これまでたくさんの学校でレッスンをした。中で下手だと思う奴はほとんどいなかった。
でも、自信なさそうに弾いてる人が多くいた。
僕はこのギャップをどんどん埋めていきたい。
知らないと下手を一緒にしない
もし、自分が「下手」だと思ってる人がいたら胸に手を当てて考えて欲しい。
下手なんじゃなくてやり方がわからないんじゃない?
スピッカート、トレモロにしてもそう、ボウイングの書き方だってそうだ。
下手だと思っている人の多くは技術を知らないだけで、絶対できる。
知らなければ調べたり、聞けばいい。
周りに聞く人がいないと思ったら僕にどんどんメッセージを投げたらいい。
じゃあ下手な奴ってどんな人?ってなるけど、僕の中での下手の定義はこう。
できる技術を持ってるのにやらない奴。
僕は思えば高校生の頃、ちょっと弾けるからって調子に乗ってた。
あまり練習しなかった。
これが、典型的な下手な奴。
おわりに
明日のためのレッスンノート、今週はコラム記事として吹奏楽におけるコントラバスの魅力を書いてきました。
コントラバスの基礎を学び、運指表に基づいた12のポジションを理解し、改めてコントラバスの魅力を知って、さらに一緒に練習を重ねていきましょう。
これからも、全国にいるパートに自分一人しかいない環境、周りにコントラバスを教えてくれる人がいない環境で練習に励んでいるコントラバス奏者たちの力になれたらと、レッスンノートを更新していきます。
何かわからないことがあれば、いつでも聞いてください。
明日のためのレッスンノートはコントラバスという楽器を手にしたけれど、パートは自分一人だけ、周りにコントラバスを教えてくれる人がいないという環境で練習に励んでいる人たちに向けて書いています。
教則本は全ページ公開しているので、ぜひお役立てください。
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