コントラバス奏者、吹奏楽指導者、指揮者の井口信之輔です。
今年の夏もたくさんの吹奏楽部とレッスンをしてきました。
この時期の楽しみは、レッスンを通じてまだ知らなかった音楽に出会えること。
たくさんの吹奏楽部と出会いレッスンをしてきた時間を終え、一夏を振り返りながら一緒に取り組んできた楽曲の紹介をしていこうと筆をとりました。
演奏会のプログラムにもお役立てください。
青のやまなみ Mountain Song
青のやまなみは群馬県にある明照学園 樹徳高等学校吹奏楽部の第35回定期演奏会移委嘱作品として誕生した作品で、同校吹奏楽部と作曲者の広瀬勇人の指揮で初演されたという記録があります。
作品は四部構成となっており、山がもつ様々な表情が描かれています。
演奏時間は約5分で演奏可能な最少人数は8名。
主なソロを持つパート
クラリネット
トランペットの最高音域
1stはF(ファ)、2ndはD(レ)
レッスンメモ
管楽器奏者7名と打楽器奏者1名の計8名から演奏可能で、オプション楽器が多く設定されているので人数が増えるほど豊かな響きの演奏になっていきます。
As-durの暖かい響きではじまる冒頭はアルトサックスとホルンのメロディで幕を開け、割とすぐに山場を迎えるので短い時間で音量の変化をつけていくのがポイント。
楽譜に書かれたmpやmfだけでなくシンコペーションやオクターヴの跳躍で進行していく音形、ドミナントの音にあたるEs(ミ♭)の音を上手く活用し最初のfに向かっていきます。
柔らかな響きの中で音楽が展開する次の場面も、楽譜に多く書かれているテヌートを大切にすることでフレーズに繋がりが生まれてくるように思います。
それから小節線を超えていくこと、3拍子は強弱弱ですが、3拍目次へ運ぶというのもつながりのあるフレーズを生む大切なポイントです。
2つ目の場面の割に出てくるsus4のコードも聴かせどころの一つ。
まだ先があるような予感と次のコードに辿り着いた時の心地よさ。
一瞬で過ぎてしまう時間なので見落としてしまいがちですが、二つの和音の中で音程のイェンkがあるパートはとっても大切。
心地よい響きで音楽を終え、次の場面へと向かいます。
次の場面は拍子が変わり、少し激しい音楽へとなっていきます。
公式の楽曲解説にも山の断崖、雨や嵐とこれまでの場面とは違った言葉が出てきます。
テンポが変わり6/8拍子になる箇所では、一匹の鳥が険しい断崖沿いに飛んでいくと共に雨が降り出し、激しい雨嵐が山を襲います。
ここで登場するのがクラリネットソロで、4小節の前奏を経て登場するクラリネットソロを中心に音楽が展開していきます。
ここでバンドに多用されるのがスタッカート。
テヌートと併せて書かれているスタッカーとが曲の激しさ、力強さを表現する一つのポイントかもしれません。音を文字書くだけでなく、場面にあったスタッカートを使い力強い場面を描きますが、文字で書かれたdim.を経て、また音楽は壮大にそして少しだけ暖かさを取り戻します。
そして音楽は最後の場面へと向かい、また穏やかなそして清々しい雰囲気へ。
雨が明け、クラリネットソロが奏る一滴の雫がきらりと光るような情景を思わせる場面を経て、poco rit.を使い、いつもの山の情景が戻ってきたように曲のはじまりのメロディが再現されます。
この曲は、約5分という演奏時間の中で音楽が4つの場面が展開されるので、各場面のメロディが流れていってしまわないように、楽譜に多く書かれているテヌート、スタッカートの記号を大切にするのが良い演奏につながるコツかもしれません。