先日、『今、自分が音大卒業を控えた学年だったら音楽を仕事にするために残りの3ヶ月で何をするか』というタイトルでブログを書いたらとてつもない量となり、文字数が2万文字を超えてしまったのですが、そのまま投稿したら読むのがとても大変だったので、何回かに分けてみようと思いました。
元に記事はこちら。
前回の記事では『演奏を仕事に!』をテーマにもし、この春に音大を卒業する過去の自分とサシ飲みする機会があったら伝えたいことを書いていきました。
今回は『レッスンを仕事に!』をテーマに、もし過去の自分と(洗足の4年生で卒業試験を控えた頃)サシ飲みをする機会があったらこんな話をするんじゃないかなということを書いてみようと思います。
まだ、レッスンの仕事(音楽や楽器を教えること)が演奏する仕事に対して下に見られてしまうようなところもありますが、レッスンは音楽の裾野を広げるとても専門性の高い仕事です。
それでは、これから音大を出てレッスンの仕事に関わりたいと思ったとき、どんなことをすればよいのか?を自身の体験談を交えながら書いていきます。
目次
レッスンを仕事に:吹奏楽部を指導したい
僕のレッスンの中で一番多いのは部活指導。
ここ数年は平均して年間約30団体ほどの部活動を教えていて、多くはコントラバスのパート講師。
吹奏楽の指導がしたいって人は本当に多く、最近では音楽大学に吹奏楽指導に特化したコースが誕生したりもしているし、そこで学んだ人たちが卒業していく日も近い。
最近は部活動の過剰な活動時間や学校の先生の負担がメディアに取り上げられ、部活動指導という仕事の形も少しずつ変わりつつある。
部活動の指導は音大の頃に先輩から声をかけてもらってはじめる人も多く、音楽の仕事の玄関口にように感じる部分がある一方でとても専門性の高い仕事になる。
なので、演奏活動の片手間でできるような仕事でもなく、たまに耳にする【教えのバイト】感覚でできるものじゃないと思っている。
コントラバスのパート講師から合奏トレーナーになるまで
吹奏楽指導を仕事にするためには何をすれば良いか?という質問は多く受ける。
答えはシンプルで
- 一校一校との付き合いを大切にする
- レッスンを通して音楽の楽しさを伝える
- 自ら部活に参加する
これだけ。
で【この自ら部活に参加する】ってところを説明すると、決められた時間に来てレッスンをしてギャラをもらって帰るということで終わらないということ。
前後で顧問の先生から生徒の様子をヒアリングしたり、レッスンの内容を報告したり楽器に問題があれば問題点の指摘と合わせて修理をした際のおおよその金額なんかもセットでお伝えしたり。
合奏を聴く機会があればなおチャンスで、事前にやる曲がわかっていればレッスンに行く前日の夜1時間その曲について勉強する。
例えば【マードックからの最後の手紙】という曲を合奏するとわかったら、ウィリアム・マクマスター・マードックやタイタニック号沈没事故についてのエピソードをメモしておく。
そうすれば、指導の現場での指摘が技術的なものだけでなく物語の世界観をセットに伝えられるようになる。曲の背景を知ってるから、音楽の世界にも参加できる。
僕はずっとこれを続けて、練習後に先生たちと「曲やったことあるんですか?」や「いろんな学校教えてるんですか?」という会話に広がり、そこで吹奏楽が好きだという話や吹奏楽指導に興味があるという話をし、「合奏とか見れますか?」と聞かれたら「はい!」と答える。
もちろん、やったことなんてなかったしここで「自分はまだ…」とか言ってたらチャンスは来ない。
やったことなくても、やりたいと思ったら「はい!」と答えてなんとかする。
自分には早いと思ったら、以下のことを考えてみる
- 学生時代の合奏系の授業でいろんな指揮者と共演したはず
- 授業で指揮の先生の合奏指導を受けたはず
- 専攻楽器の先生から毎週レッスンがあったはず
- そこでは技術的なことだけでなく音楽を教わったはず
ここでやっと掛け算(横展開)が出てきたりする。
吹奏楽指導がしたいという情熱に上記のような体験を掛け算してレッスンをする。
あとは勇気、やってみよう。
レッスンを仕事に:アマチュア楽団を指導したい
日本は世界に誇る吹奏楽大国であり、アマチュアオーケストラもトップレベルに上手い。
いわゆる、色々な仕事をしながら趣味で楽器を楽しまれてる方々が集まった楽団で、活動スタイルはさまざま。そして僕たち音楽家もこの先長い付き合いになっていく楽団でもある。
アマチュアオーケストラは異業種プロフェッショナルの集合体で、オーケストラの企画・運営から演奏会の開催までしてしまう最強のプロ集団だと思っているんだけど、この辺りの話は飲み会の席で。
話を戻すと練習やパート指導、分奏から本番の指揮まで色々なポジションの仕事を受け持つことが多く、「どうやって仕事が来たの?」と聞かれると最初は知人からの紹介が多く、その先は同じで
- 各楽団との付き合いを大切にする
- パートレッスン、分奏を通して音楽の楽しさを伝える
- 仕事と趣味の垣根を超えてオケに参加する
これだけ。
で【仕事と趣味の垣根を超えてオケに参加する】ってところを説明するとやっぱり、決められた時間に来てレッスンをしてギャラをもらって帰るということで終わらないというところにたどり着く。
基本的に、音大を出たら世間一般的にみんな上手いしそれなりの経験値から専門的な指導もできる。
だから、決められた時間に来てレッスンをしてギャラをもらって帰るって誰でもできちゃうことで、それだったら誰でも良くない?ってなる。
メンバーとのコミュニケーションはオケの雰囲気を知ることができるし、音出しの時間を設けて各楽器の音に耳をすませばこの時間での技術的な改善点が見つかるし、何度か会話を交わした上での個人的なアドバイス(シンプルかつ的確に)は教えたがりを感じさせないと思う。
で、練習後の飲み会で交流が深まり、音楽談義に花を咲かせたり、パートの方達とご飯を食べに行ったりする中で奏者との信頼関係が生まれ、仕事と趣味の垣根を超えて一緒にコンサートを作るチームみたいな感じになる。
仕事は人と人との繋がりの中で生まれる【信用】の先にあるので、仕事欲しさにやっても続かないし、土台にあるのは好きとリスペクト、そしてその時間をより良いものにするために何ができるか。
一緒にご飯を食べたり飲みに行った人たちとはいいものを作ろうと思うよね。
いいコンサートを作りたい、そこでプロの音楽家という視点で何ができるか。
主語は常に自分ではなく相手だ。
最後にちょっと厳しいことを言うと、アマチュアオケを馬鹿にする人は見なくなる。
レッスンを仕事に:個人レッスンをはじめたい
じゃあ個人でレッスンをしたい人は何をすれば何をすれば良いか。
- 自宅で教室を開く
- 地域の施設を借りてレッスンをする
- スタジオやカラオケボックスを借りてレッスンをする
- 出張レッスンをする
ざっと思いつくのが上の4つで、僕はこれらを組み合わせて個人レッスンをやっている。
これは各楽器の事情、男女問わず防犯対策、レッスン謝礼とは別にかかるお金を計算してどこでレッスンをするかを考えていくといいかもしれないよね。
自宅でレッスンをする際は、住所は公開せず最寄り駅まで掲載し、問い合わせがあった方に個別に住所を送るとか「◯◯の前から電話してください」といったこともできる。
レッスンにかかるお金はきちんと記載する
個人レッスンをするとなると考えなきゃいけないのがレッスン謝礼。
ホームページに掲載することが多いけど、まずレッスン謝礼が明確でないところに人は集まってこないということを押さえておくと良い。
意味は違うけど、時価ってちょっとドキっとしない?
それに近くて、レッスン謝礼は応相談やお問い合わせくださいだと
- 仮に予想より高かったらどうしようと不安になる
- 価格を聞いてしまったら断りにくい
- 断ったときに相手に申し訳ない気持ちにさせてしまう
なのでレッスンにかかるお金はしっかりと記載しておく。
レッスン謝礼の決め方、考え方
次にみんなが悩むのがレッスン謝礼について。
ここには色々な考え方があるから、僕の考えを書いてみるとこうなる。
- その楽器、業界の平均は参考程度の留めておく
- 先生より高いお金を頂戴するのは失礼という考えを捨てる
この二つ。
もちろんここに至るまでは周りとのバランス、平均価格、先生より多くいただくのは失礼だといろんな考えを経て今に至る。
音大卒業したばかりは1時間あたり4,000円でやり、そこから5,000円〜6,000円と値上げをして今は1時間だと8,000円、2時間だと12,000円という金額をいただいている。
コントラバスは楽器が大きく場所と楽器どうする問題があるので、これらも全部込み。
そして個人レッスンの魅力はお互いの時間さえ許せば会場の空き時間をフルに使うこともできる。
中高生であれば進路相談、部活内で人間関係、保護者の方とも進路相談や楽器や弓の購入、受験対策から世間話までするし、一対一を大切にするを繰り返すのが一番大事。
自分にしか提供できない価値ってなんだろうって考える。
もし出てこなかったら自分の長所や他人から褒められたことをメモ帳に全部書いて一対一の時間に転用できるものは何があるかを考える。
先生より高いお金をいただくのは失礼?
先生から楽器の演奏技術、音楽的な解釈、人間性やこの世界で生きる術まで学んだら僕らはそれを守り修行を重ねていくけれど、いつかは殻を破り離れていく日がやってくる。
それが卒業という一つの節目だと思うんだけど、いつまでも先生より下のお金でやってて仮に経済的に困窮してしまったら教えた先生はどう思うだろう、逆に心配をかけちゃうかもしれないよね。
僕も師匠は雲の上の存在だしずっと尊敬してるけれど、個として生きる覚悟を決めたら一社会人として自立していくことも大事だし、「先生から学んだおかげで今こうやって仕事できてます!」って、これだけ稼げるようになりましたって胸張って言える方がいいよね。
例えば、昼夜アルバイトしながら音楽の仕事してた弟子が、数年後に車で現場入りして「先生、車買っちゃいました!」なんて言われたら嬉しくない?
教えた弟子が経済的に安定した生活を送れるてっていうのは師匠も安心だと思うし、僕はそう思う。
レッスンを仕事に:オンラインレッスンをはじめたい
コロナ禍もあってオンラインレッスンの波が押し寄せた。
世間ではオンラインでのレッスンという形への抵抗感も徐々に薄れ、今はオフラインとオンラインのレッスンを両立している人もいる。
僕もその一人で、オンラインレッスンをはじめてもうすぐ2年。
オンラインレッスンをはじめたいと思ったら必要な機材や情報が既に多くの人が発信しているので調べておくとして、僕がよく相談を受け伝えるのはこれ。
オフラインでやってたことをオンラインでやっても上手くいかないので、オフラインで喜んでもらえたことでオンラインに転用できるのは何だろう?ってところを考えてみる。
よく聞く質問:演奏家、それとも指導者。最終的にはどうなりたいの?
僕はよく、今でもたまに「プレイヤーになりたいの?指導者になりたいの?最終的には?」
と聞かれるんだけど、そんな線引きする必要なくて、最終的にどうなってるかなんてわからない。
最終的にはマイホームを手にして好きな人と幸せに暮らしてたい。
話を戻すと、僕の年間を通した活動はこんな感じ
- 演奏家としての現場でインプットしたことを
- 先生と呼ばれる指導者としての現場でアウトプットする
このサイクルで一年を回し、その集大成が夏の吹奏楽コンクールのレッスンと設計してる。
インプットしたものはアウトプットしていく必要があって、夏のほとんどを吹奏楽部のレッスンで埋めてこの一年どれだけ成長できたかを測る期間とする感じです。
おわりに
さて、ここまで音楽を仕事にするために何をすれば良いかを演奏編、レッスン編と2回に渡り僕の体験談を交えながら書いてきました。
ここに書いてることが全てではなく、これは数ある中の一つの手段。
音大を出たらある程度の専門性はみんな持ち合わせてると考えてみたら、そこに自分がどんな付加価値を提供できるかを考えてみる。
で、「◯◯と言ったら〜さんだよね」ってところまでいけると良し。
まずは自ら口にすることから。
「吹奏楽のコントラバスといえば井口さんだよね」みたいな感じ。
次回は、活動面積の広げ方を書いていきたいと思います。
それでは、また!