コントラバス奏者、指導者の井口信之輔です。
クラシック音楽の世界でコントラバスを弾いたり、中学高校の吹奏楽部をはじめとした音楽系部活動でコントラバスを教えたり、取手聖徳女子高等学校音楽科にてコントラバスの講師をしています。
さて、先日『note』というプラットフィームにて久しぶりに有料の記事を販売しました。
『note』は、つくる、つながる、とどける。をテーマにクリエイターが文章やマンガ、写真、音声を投稿することができ、ユーザーはそのコンテンツを楽しんで応援できるメディアプラットフォームで、僕は優しいインターネットと表現しています。
何を書いたかというと、音楽の世界、またSNS界隈では定期的に話題に上がり議論が繰り返される音楽家とお金の話。
フリーランスで活動する音楽家のギャラ交渉(出演料・レッスン謝礼)と金額設定のはなし。実体験に基づく数字を交えて本音を語る。と言うタイトルで僕が思う本音を綴ってきました。
お金の話がタブー視されがちな現代の日本では、かなり踏み込んだところまで書いているので、その部分を有料として販売する形を取りました。
踏み込んだと言うけれど、クローズドな部分で誰かを名指ししているわけでもなく、誰かを批判しているわけでもなく、具体的な金額を交えながら実体験に基づいた自分が過去に行動してきたものを書いてきたと言うところです。
おかげさまで、たくさんの方がnoteを購入してくださっているので、感謝の気持ちを込めて販売から一週間、毎日フリーランスの音楽家とお金のこと、キャリアのことについて発信してこようとブログを更新しています。
最終回となる今日は、音大を卒業したけどプロと名乗って良いのはいつからなの?という話。
僕も過去に悩んだことで、同じような相談を受けることもあります。
これらの話って正解や正しい答えはないので、僕の考えを綴っていきます。
目次
音大卒業したけどプロと名乗って良いのはいつから?
音楽大学を卒業し、音楽家という職業を選ぶ多くの人がフリーランスとなり活動していきます。
とは言っても、すぐに生計を立てられるほどの仕事があるわけでもなく、演奏活動やレッスンをしながらアルバイトをするなど他の仕事を掛け持ちながらフリーランスの音楽家としてのキャリアをスタートさせていくのが多くの音大卒業生が歩んでいく道だとします。
となると、音楽以外にも仕事をしていたり、音楽の仕事で得る収入よりアルバイトなど他の仕事の収入の方が多いなんてこともよくあること。
そんな自分がプロの音楽家と名乗って良いのか?
これは多くの人が悩み、考え、それぞれの答えや定義を見出して乗り越えていく一つの壁なのかもしれません。
資格もなければ、基準もない、周りを見ると上手いほどがたくさんいるような世界。
そんな世界に足を踏み入れて、いつプロの音楽家と名乗れば良いのか。
僕の結論は、卒業する前からフリーで仕事をすると公言し、卒業したらすぐ名乗れというところ。
で、1日でも早くプロの音楽家というマインドで生きること。
プロを公言したその日から、音楽家としてのキャリアがはじまるんです。
音大を卒業した時点で技術と才能は一定数を超えてる
音楽の世界にいると、上には上が果てしなくいるのでつい見落としてしまいがちだけど、音楽大学という専門的な教育機関で4年間学び卒業したら、音楽の知識と経験、そして専攻楽器の技術は世間的に見れば専門的な領域にあって、技術や才能は一定数を超えてると思います。
なので、これから音楽をレッスンを提供するようになる社会ではもう立派なプロフェッショナル。
仕事は頑張ってこれから増やせばいいし、まずはプロと名乗るところがキャリアのはじまり。
ビジネスの世界に足を踏み入れた瞬間、社長もフリーランスも同じ土俵に立つ
音楽大学在学中にビジネスという言葉は何回聞いただろうか。
もしかしたら、少し敬遠していた人もいるかもしれない。
ちょっと大袈裟な表現かもしれないけど、音楽に限らずフリーランスで仕事をすると決めたら僕らはビジネスの世界に足を踏み入れることになる。
自分が何者か、何を学び何ができるのかを世間に伝え、自分の持つスキル(手札)を必要としている人にその価値を提供し、その対価として収入を得る。そして継続的に収入を得るための仕組みを作り、自らのスキルも磨き、ときに新しい分野に手を伸ばしたりしながらキャリアを築く。
となれば、会社の社長であろうが音大卒業1年目のフリーランスだろうが、同じ土俵の上にいるって考えても良いと思う。
仕事はこれから作って行けばいいし、人と人との縁の上に生まれるものでもあるから、自分の事業(演奏、レッスン活動)を育てていくって感覚が大事なのかもしれない。
フリーランスになって、音楽を仕事にしていくためにやることはいっぱいある。
もう立派なプロフェッショナルだ。
戦略思考
少し話が脱線するかもしれないけど、このプロを名乗るか名乗らないか論を戦略的に考えてみても面白かもしれない。例えばnoteでも書いた
- 努力を見せないことを美徳とする人
- 努力、葛藤、成長過程を見せることでストーリーを共有する人
に近い形で考えてみると、
- プロの音楽家を名乗りつつ、周りには公言せず他の仕事をしている形
- 現段階ではプロを名乗らず、プロを目指す過程を発信し共有していく形
など、前者は戦略的とは言わないかもしれないけど、後者のようにあえて名乗らないところからプロの音楽家としての夢を叶えるような成長過程を発信し共有するって形も面白いかもしれない。
結局は、どんなマインドで生きたいか、自分のキャリアをどう描くかで変わってくる。
名乗れば意識が変わる
これは自分の実体験で、自分がプロの音楽家だと認識するようになってから意識が変わった。
僕は卒業した当初、オケに呼ばれるまではプロとは言えないと思っていた。
じゃあお前は何者なんだって言いたいところだけど、仕事をしていくうちに少しずつプロ意識が芽生えブログやSNSで自分が何者かを発信しはじめてからだろうか、そのあたりから一気に意識が変わった。
副業をしてたらプロじゃない?
そんなことない。
ここでいう副業はアルバイトやパート、いわゆる音楽とは関係ない仕事とする。
どんな仕事を他にしていようが、音楽でも仕事して本人がプロを名乗ってたらプロ。
とくに家庭環境や生活環境の変化、いろいろなライフイベントを経て、そうした働き方を選ぶ人もいる。これを言い出したらキリがないけど、他に仕事をしている理由は山ほどある。
本業と副業という区別に思うこと
音楽の仕事に限って書くと、本業、副業って区別の仕方があんまり音楽家って職業には向いてない。
少し前、副業の副は複数の複だって言葉が流行ってけど、まさにこれ。
僕たち音楽家は専攻実技を軸に足し算で経験値を積み重ね、その過程で出会うさまざまな好きなことや得意なことをかけ算し、活動を横展開していく。
僕であればコントラバスという専攻楽器でAとする地点を作る。
で、僕は人より物事の習得に時間がかかることからたくさん遠回りをした経験があってか、教えることが好きだから、指導者という肩書きでB地点での活動をはじめるとする。
そうなると演奏家×指導者としての仕事を持つことになる。
ここで気になるのがどっちが本業?ということ。
これ、一つに絞れと言われたらコントラバス奏者となるけど、フリーランスの働き方に本業・副業と区別をつけることが働き方とマッチしてないので、まさに複業という言葉がよく合う。
楽器を弾くことと、教えることは全く別のスキルが求められる。
さらに、ここから演奏家としての経験と指導者としてのスキルを掛け合わせて合奏指導、指揮活動をするようになると、本業副業の話はさらに厄介になる。
いわゆるA地点とB地点のスキルを掛け合わせてC地点を生み出した瞬間、手持ちのスキル(手札)は3つになるし、こうして地点を増やすことで活動面積が増えていくので自分の専門分野(専攻楽器)を軸に積み重ねた経験に好きや得意をかけ算してスキルの横展開をしていく働き方に本業・副業は決められない。肩書きと同様、本業はいくつあっても良い。
世間や他人はあれこれ言うけれど
この話ってもう何年も続いてて、今もSNSでよく見かける話題ですよね。
そして正解がないので、雑にっちゃえば名乗ったもん勝ちなんです。
一つだけ気をつけたほうがいいなって思うのは、他人や世間の声に囚われず自分軸をしっかり持つこと。この世界はいろんなことを言ってくる人も一定数いるので、他人軸ではなく自分軸で考えて、自分で名乗って覚悟を決めて頑張っていくって感じで良いと思います。
細かいことは気にせず、堂々と名乗ってこうぜ
資格もなければ、基準もない、周りを見ると上手いほどがたくさんいるような音楽の世界。
そんな世界に足を踏み入れて、いつプロの音楽家と名乗れば良いのか。
僕の結論ははじめに書いたように、卒業したらすぐ名乗れというところ。
その道で食べていく覚悟があれば、勝負していく覚悟があれば、とっとと名乗っちゃえばいいんです。で、1日でも早くプロの音楽家というマインドで生きること。
音楽家としてのキャリアがはじまるのはプロと名乗ったその日から。
僕はそう考えます。
読まれてます!フリーランスの音楽とギャラ交渉、金額設定のはなし。
フリーランスで活動する音楽家のギャラ交渉(出演料・レッスン謝礼)と金額設定のはなし。
たくさんの人に読まれています。2万文字を超える記事ですが、音楽で生計を立てていくために知っておきたいお金の話や自らの実体験に基づくサバイバル論を書きました。
知識があれば、諦めなくてよかった夢があったはず。
折り合いをつけなくて済んだことがあったはず。
どこかで悩む、誰かの背中を押すきっかけになれば嬉しいです。