コントラバス奏者、吹奏楽指導者、指揮者の井口信之輔です。
コントラバスを弾いたり教えたり、吹奏楽部やオーケストラ部、最近では大学サークルのトレーナーとして活動したり、さまざまなコンセプトを掲げて活動している各地のアマチュア楽団とタッグを組んで、指揮者という視点から各地の音楽文化発展に努めています。
また、茨城県にある取手聖徳女子高校の音楽科でコントラバスのレッスンをしています。
さて、今日は吹奏楽指導者の売り出し方を考えるというテーマで書いていきたいと思います。
僕はコントラバス奏者として演奏活動をしている他、吹奏楽の指導者として中学高校の吹奏楽部や、さまざまな地域で活動しているアマチュア吹奏楽団の指導をしています。
そうした中で、学校の先生からこんな感じの相談を受けることがあります。
「うちの部活を指導してくれるようなプロの音楽家の方っていたりしますか?」
吹奏楽部の指導に関わりたい人、たくさんいます。
逆にプロの音楽家、いわゆる同業の人たちからはこんなことを聞かれます。
「吹奏楽部で講師を探してたら、ぜひ声かけてください!」
フリーランスで活動している音楽家の中には吹奏楽指導に関わりたい人がたくさんいるはずだけど、一方で学校の先生からは吹奏楽部を見てくれる指導者を探してると相談を受ける。
先生たちもSNSを見ることはあると思うし、今は多くの音楽家が自分の活動を発信してるから声もかけやすい。ここがうまくマッチすれば良いご縁が生まれるだろうと思う反面、プロの音楽家側の売り出し方がそこまで届いてないように感じたので、このあたりを考えてみようと思います。
吹奏楽指導の仕事を依頼されるパターン
まず、吹奏楽部からレッスンの依頼をいただく流れは以下の通り(実体験を元に)
- 紹介(人づて)
先輩や後輩、同期や友人、お世話になった先生、アマチュア音楽家の方々、楽器店からの紹介で「◯◯高校吹奏楽部でコントラバスの講師を探しているのですが」といった感じの相談
- SNS(X旧Twitter、ライン公式アカウント、Facebook、インスタグラム)
SNSで繋がっている方からの依頼や、発信で自分を知ってくださった方からの依頼
- 面接
2017年ごろに制度化された部活動指導員や学校と部活動指導ができるスキルを持っている人材をマッチングする企業に部活動指導員の候補者として登録する際は採用の前に面接があることが多い
この中で一番多いのは紹介で自分を知ってくれている誰かが学校と自分を繋いでくれるパターンで、全体の8割くらいを占める。
音楽の世界における仕事の生まれ方としては誰かが繋いでくれるということが多く、これは昔も今もきっとこれからも変わらないので、今回はここにスポットを当てて考えてみる。
まずは、「きっかけ」作り
仕事は人と人との繋がりの先にあると考えると、まずは自分を知ってもらわないといけない。
どうすれば良いかというと、シンプルに人と会うという答えだろう。
SNSでの発信でも自分の存在を知ってもらえるけれど、画面越しと対面では会ったときに相手に残る印象は違う。そして、情報過多の現代は次から次へと新しい情報が流れてくるので記憶はわりと簡単に上書き保存されたりする。
一番簡単なのは飲み会に参加することで、別にお酒が飲めなくたって良い。
仕事を取るために飲み会に行くというより、ただ飲みに行く感覚(こっちの方が大事)
そこで「吹奏楽指導に興味がある」なんて話をしていることが相手の記憶に残ったりする。
逆に「レッスンできます!使ってください!」とグイグイくると敬遠されたりする。
これは自分の肌感覚だけど、SNSでバズって一時的に有名になるよりリアルに会って飲み会で語ってた方が長く記憶に残る。
SNSを有効活用するとしたら、自分が持ってるレッスンのノウハウや活動を継続的に発信をすることで、毎日コツコツやっていると相手の記憶に残る可能性他が高くなる。
あと、考えに考え抜いて一つの大きな情報を公開するより、小さな情報を一定のペースで何度かに分けて出していった方が認知されやすい。
とにかくSNSを活用するなら継続が大切(できれば魂を売るレベルで)
ご縁は突然やってくる
不思議なことに、ご縁は突然やってくる。
いろいろな場所で人に会ってコミュニケーションをしていく中で、少しずつ誰かの記憶に残るようになって、ふとしたときに思い出してもらたりする。
ありがたい限りです。
仕事を取るために飲み会へ行く視点を持つのも大事だけど、このスタイルだと消耗していくこともあるので、ただ飲みに行く、ご飯行くって聞いて楽しそうだからついて行くみたいな感じがちょうど良い。
参加理由がなんであろうと、会話の中で相手が求めてるものと自分が提供できることがガチャンとハマれば自然と仕事の話に流れていったりする。
音楽家サイドでできること
音楽の世界における仕事は人と人との繋がりの先にあると考えると、次に生まれたご縁をどう生かすかというところも大切で、ここはきっと考え方が大きく分かれると思うけど、僕はこう考える。
経験を積む(なんでもやります)
「吹奏楽指導に興味がある!」といってもレッスン経験もなければスキルもない。
まさに自分がそうだった。
この時期に大切なのは量で、まずはとにかく量をこなす。
ボランティアで教えに来てくれないかと頼まれたり、ちょっと教えに来てよと言われてご飯を奢ってもらえるかもしれない。
経験やスキルを持ち合わせていない時期、仮に20代だとすると武器になるのは若さと体力と量。
とにかく量をこなして経験を積む。
ギャラがもらえたらラッキーくらいの感覚でも良いと思う。
自分を安売りするな!とか、安い金額で引き受けたら市場が壊れるという声も聞くけれど、ぶっちゃけ自分一人が数回安い金額で仕事を受けて市場が壊れることはほぼないと思う。
それを何年も続けてたら市場が壊れる前に自分の生活が困窮するし、夢はお金ととともに尽きるので自分にも業界にとっても良くない。
だから、量量量!と経験を積む機会を作りつつ、相場のリサーチもしっかりしておく。
信用を貯める(これならできます)
質の良いものは量をこなした先にあると考えると、量をこなす中で自分の指導スタイルや得意不得意、そして向き不向きが見えてくる。
そうしたら「なんでもやります!やらせてください!」から「これならできます!」に視点を変えてみる。で、ここで生活のためにお金を貯めるみたいに信用を貯めていくことがとても大切。
いわゆる信用貯金をしていくこと。
それには質が求められ、同時に苦手なことはやらないという判断も必要。
良い関係を築く
信用貯金が溜まっていくと、知らないところで口コミが広がったりする。
そうすると、自分から売り込みや営業をしなくても「◯◯高校で講師の先生を探しているのですが、紹介して良いですか?」なんて連絡をいただいたりする。
各地域の先生方とのコミュニティが生まれるとそれだけパイも大きくなるし、何よりパイの奪い合いに参加しないで済むので精神衛生上とても良い。
SNS活用の注意点
SNSを活用することで自分のことを認知してもらえるチャンスは一気に広がる。
自分が持ってるレッスンのノウハウや活動を継続的に発信をすることで誰かの役に立てたり、そこから興味を持ってレッスンの問い合わせをしてくださる方もいたりする。
ただ、気をつけたいこともいくつかある。
SNSに書かれていることが全てではないと頭でわかっていても、SNSの投稿からその人を想像することはあるので、自分を大きく見せてしまうことが結果、自分の首を絞めることにもなる。
とくにSNS経由で仕事をいただく場合、発信を見て声をかけてくださっているので自分への期待値は高いと思った方が良いし、それをしっかり打ち返していくことで良いご縁が生まれる。
期待値が満足度を超えてしまうと、仕事は減ってしまうので気をつけたいところ。
満足度ー期待値=◯◯←ここをプラスにする
また、何を発信するかは自由だけど、言葉にトゲのある投稿やいつも何かに怒ってる人、また物申す系のような投稿が多い人は面識がない限り仕事は頼みにくいなと個人的に感じてしまうことがあります。
おわりに
吹奏楽指導に関わる仕事がしたいという声を聞く一方で、吹奏楽部の指導をしてくれる先生を探しているという相談を聞いたりする中で投稿したポストをきっかけに考えていた吹奏楽指導者の売り出し方をまとめてみました。
ここ数年で指導者が不在という声を多く聞くようになったと感じています。
部活動やアマチュア楽団のあり方も時代とともに変化して行くと思いますが、それぞれのチームが良き指導者に恵まれることが街の音楽文化発展にも繋がると思うので、吹奏楽指導に興味がある側の存在がしっかり知られ各地で良いご縁が生まれると良いなと思います。