この先「掛け算」が流行りそうな気がする中、器用貧乏にならずにスペシャリストになるために僕らは何ができるんだろう。

今、これ直感で書いてるから間違っているかもしれないけど、最近は電車の広告やインターネットで「◯◯×◯◯」というキャッチコピーを見る機会が増えてきた気がする。

一つのことに何かを掛け合わせる、いわゆる「掛け算」ってやつ。

で、去年は「好きなことを仕事に!」という感じのメッセージをインターネット上に多く見てきた。

「好き」という言葉がトレンドで、こんな言葉が飛び交った。

  • これからは個の時代
  • 好きなことで生きていく
  • 会社に縛られない生き方

これ自体は良いことだと思うし、僕もこうした流行りの波が来たら、間違いなくその波には乗っておく。

でも「個の時代」は終わりを迎えつつあると思うし、好きなことで生きていくことだけを考えてるとバブルの頃にあった「フリーターブーム」の二の舞になりそうだし、会社に縛られないって言ってもやっぱり会社から毎月まとまった給料が振り込まれると精神的な安定感が違うと思う。

と、去年と今年で感じたことを書いていみたんだけど、もしこの先「掛け算」が流行るとなると、何をどう掛け算していけば良いのかを考えていく必要がある。

今日は音楽家目線でその部分を考えてみた。

「掛け算」の裏側に見えるもの

まず「掛け算」の裏側に見えるものはなんだろう。

パッと思いつくことは2つ、これはニュースにもなったよね。

  • 副業解禁

政府の推奨する「働き方改革」の一環で、厚生労働省から「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が発表され去年は「副業元年」なんてニュースが流れた。

  • 終身雇用制度の限界

これまで多くの人がどこかの企業に定年まで務めるという道を歩んできたけれど、経団連(日本経済団体連合会)の会長や、トヨタ自動車の社長の「終身雇用は難しい」といった言葉がニュースで取り上げられた。

「掛け算」そして去年の「好きなことで生きていく」という言葉がトレンドになった裏側には、こうした話題があると思うんだけど、じゃあどうやってその流れに乗っていくのかが問題だ。

多分、本当にそのまま好きなことだけやって生きたって幸せな未来があるかはわからないし(音楽家の生き様としてはかっこいいけど一社会人として生きてくには大変かもしれない)コントラバス奏者・吹奏楽指導者としてなんとか好きなことをして生きている端くれとして思うのは、好きなことだけをやって生きていくんじゃなくて「好きなこと」に「得意なこと」を掛け算していくことが大事なんじゃないかってこと。

そんな「うまい話」があるのか

こうなると、そんなうまい話はあるかと思うけど、自分の生い立ちから今に至るまでを振り返って「いつ、どこで、どんな体験をして、何が今の自分に影響を与えたのか」そんな原体験を紐解いてみると、好きなことや得意なこと、また心の奥底でやりたいと思っていることや、やり残したこと、別にやらなくて良いことを見つけるヒントになるはず。

就職活動でいう自己分析みたいな感じかな。

「自己分析」をしてみる

僕は去年、片っぱしから興味あることに手を出して好きなことだけやってきたら仕事がうまくいかなかった。

だから、幼少期から今に至るまでの生い立ちを振り返って、当時の自分、つまり幼稚園、小学校、中学、高校、大学とそれぞれの年代の自分に同じ質問を問いかけ出てきた答えを紙に書いて読み比べてみた。

そうすると、昔からの性格や、10代の頃の考え方、何かを好きになった原体験や、自分は何を嫌うのかなど、忘れてた色々な出来事が蘇ってきた。

すると、今やるべきこと、やらなくて良いこと、向き不向きが改めて見えてきて、広げすぎた風呂敷を畳む良いきっかけいなったのと同時に、原体験のストーリーを思い出すという副産物まで生まれ、そのストーリーは今の自分に大きな影響を与えてると同時に誰にも真似できないことに気がついた。

ストーリーの話をすると思いっきり脱線するから飲み会の席に置いておいて、まず「掛け算」をする前に、自己分析をしてみるのが良いのかもしれない。

自分の「軸」は何なのか

こうして、生い立ちから自己分析してみると、僕の場合は結局コントラバスを弾くことが大好きで、高校時代に楽しかったけど「吃音(どもり)」という自分のコンプレックスを隠し続けその反動で最後はコンクールも降りて好き勝手やってた吹奏楽への未練が強いことが改めて分かった。

で、こうなると自分の軸はコントラバスか、吹奏楽になるわけだけど吹奏楽指導は独学、コントラバスは大学で4年間学んできた。

この世界で楽器を極めたなんて言えないけど、よく考えてみると4年間何か一つのことと向き合ってきたら、他者から見たら立派な専門家。

そうなると、「軸」はコントラバスになるだろう。

そうであれば、きちんとコントラバスと向き合っていけば良い。

何でもやります!やらせてください!

音楽家目線で考えると目の前に来たものに全力で飛びつくことはとても大切で、この時期の経験はのちに自分の「軸」から何かを横に展開していくときに絶対必要になってくる。

でも、いつまでもここのフェーズに入ると、風呂敷を広げすぎて自分の「軸」と向き合う時間が自然と削られ自分を見失ったり、自分が何者なのかわからなくなる可能性がある。

自分の体験談として、お金を稼いでいくために収入の分散化をしすぎてこの状態に陥った。

この「何でもやる時期」がいつなのかは人によって違うと思うし、もしかしたら自分もまたこの先「何でもやります!」とか言い始めるかもしれない。

得意なこと、心を込めてできることをやる

いろいろなことに手を出し風呂敷を広げてみると、自分はどこで力を発揮できるかがわかってくるのと同時に、好きだけど力を発揮できなかったり、誰かにお願いした方が良い結果が得られることがあるのがわかってくる。

自分の立てた「軸」で最大の力を発揮できることは何か、例えばクラシック音楽でも、プロのオーケストラ、アマチュアオーケストラ、室内楽、吹奏楽、ソロ、キッズコンサート、パーティー演奏、ブライダル演奏などいろいろな分野があって何が得意でどこで力を発揮できるのかを考えてみるといいのかもしれない。

やりたいことと得意なことは別の分野かもしれない。

もし、ここで分かれ道になったら進む道は自分が選べばいいと思う。

僕は得意なことという道を選んでみた。

それから、忘れちゃいけないのが「心」だ。

高校吹奏楽部の頃、若い一人の作曲家(今は日本を代表する一人)が僕たちに曲を書いてくれた。

そのときに「心を込めて書きました」と言ってくれたのを覚えている。

僕は今でも、その心を込めて書いてくれた曲に背中を押される。

それから、僕の好きな言葉に「ALWAYS PASSION TO HEART」という言葉がある。いつだって人の心を動かすのは作り手の情熱だと思うから「心を込めて」できることをやった方がいいと思う。

「足し算」で積み重ねて

いろいろなことに手を出して風呂敷を広げていると、自分の得意不得意、向き不向きが見えてきて風呂敷を畳むことを考える時期が来るかもしれない。

そうなると、畳んだ風呂敷の中に残ったものを育てていくとする。

ここで大切なのが「軸」を足し算で育てていくこと。

僕の元には「楽器が上手くなるコツはありますか?」という質問が届くことがあるけど、そんな魔法のような話はない。

音楽の世界で活躍している先輩や後輩、同期の背中を見ると血の滲むような努力を重ねている。

「さらい魔」なんて言葉、この世界以外で聞いたことがあるだろうか。

だから、1+1を重ね続けコツコツと「軸」を育てていく。

ここで「軸」を育てずにいろんなことに手を出しすぎると器用貧乏になってしまう、そんな気がする。

「掛け算」で横展開する

足し算で「軸」を育てていくとやがて太い幹になるはずだ。

で、その太い幹に枝を生やせばいい。

この枝が「横展開」になる。

僕であれば「吹奏楽」という枝を生やして、そこから更に「吹奏楽におけるコントラバスへの理解と発展を願って」という枝を生し、芽を育てる。

そして、吹奏楽部のコントラバスのレッスンをしていると、セクション練習や合奏指導を頼まれることがある。

ここで何か全体にアドバイスを求められたとき、専攻楽器の視点でバンド全体にアドバイスを投げかけられたら「弦楽器奏者の視点から見たバンド指導」という枝が生えてくる。

ただ、僕はいわゆる在京オケでは一度も弾いた経験がないのでこの枝はまだ弱い。

自分の話になってしまったけれど、こんな感じで「横展開」していくことが大切なんじゃないかと思う。

何が正しいかなんてわからないから「やる」

ここまで思うことを書いてきたけど、結局何が正しいかなんてわからない。

「幸せ」の定義は人によって違うから、音楽家という名の下にアーティストとして生きていくのかビジネスマンとして生きていくのか、その人がそれでよければ何だって良い思う。

でも、何をするにも「やる」ことが大切で、手を動かさなければ何も始まらない。

「◯◯だったら××だよね」を目指して

電車やインターネットの広告で「掛け算」のキャッチコピーを見るたびに思うことを書いてきて、最後にたどり着いたのがここ。

器用貧乏にならずにスペシャリストになるためには、「足し算」で自分の幹を育てて「掛け算」で横に枝を広げる。

そして、その枝から芽が出て一輪の花が咲いた頃には「◯◯だったら××だよね」ってどこかで噂をされているかもしれない。

こんな話を飲み会でしても面白そうだよね。

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ABOUTこの記事をかいた人

1987年、千葉県生まれ。 船橋市立葛飾中学校管弦楽部にてコントラバスと出会う。 千葉県立市川西高等学校を経て洗足学園音楽大学へ入学。 在学中より「吹奏楽部におけるコントラバスの現状」に着目し多くの講習会に講師として参加。大学卒業後はフリーランスのコントラバス奏者としてオーケストラ、吹奏楽、室内楽をはじめ楽器製作ワークショップやレコーディングなど多方面での演奏活動をする傍ら、吹奏楽指導者・アマチュアオーケストラのトレーナーとしても活動しており、中でも吹奏楽におけるコントラバスの指導に力を入れている。 これまでにコントラバスを寺田和正、菅野明彦、黒木岩寿各氏に師事、指揮法を川本統脩氏に師事。現在、昭和音楽大学合奏研究員、ブラス・エクシード・トウキョウ メンバー。また、日本アロマ環境協会 アロマテラピーアドバイザーの資格を持つ。