コントラバス奏者、吹奏楽指導者、そして指揮者の井口信之輔です。
コントラバス奏者としての活動を軸に、その経験を指導者としての活動に還元し、昨年は中学高校45校、アマチュアオーケストラ、吹奏楽団7団体の音楽指導に関わってきました。
さて、今年も全日本吹奏楽コンクールの課題曲が発表されました。
最近では課題曲を取り上げたコンサートも各地で開かれ、少しずつ熱い夏、そして吹奏楽コンクールに向けた日々がはじまろうとしているように思います。
これまで僕のブログでは吹奏楽コンクール課題曲ワンポイントアドバイスというものを書いてきました。パートは自分一人だけ、周りにコントラバスを教えてくれる人がいない、そんなどこかで悩む誰かのために、日々の練習が少しでも充実したものになればと筆をとっています。
今年は少し早めに、各課題曲の練習のヒント、練習に役立つブログでレッスンをはじめます。
ぜひ、練習の参考にお役立てください。
それでは!今回は課題曲2番ポロネーズとアリアの楽譜を開いていきましょう。
課題曲2.ポロネーズとアリア〜吹奏楽のために〜
まずは、課題曲2番のタイトルでもあるポロネーズとアリアというこの2つの言葉が何を指すか?を押さえておくこと。
ポロネーズ
ポロネーズはフランス語でポーランド風という意味を持つ、ポーランドのダンス、舞曲でありテンポがゆっくりな3拍子であることが特徴です。
アリア
アリアという言葉を音楽辞典で引いてみると、オペラなどの中の歌われる旋律的な独唱曲。
と出てきます。
ざっくり言うと感情が高まったときの気持ちが歌になるような感じです。
オペラの作曲家にとっても、歌手にとっても腕の見せどころだったりします。
スコアを開いてみると、
特にアリアは様々は思いや願いを乗せて、表情豊かに演奏してください。
引用:2023年度全日本吹奏楽コンクール課題曲スコアより
と書かれているので、上記のような解釈で良いと思います。
そして、コントラバスはオプションとなっていますが、とっても重要な役割を持っています。
それでは、課題曲2番のワンポイントアドバイスに入っていきましょう。
コントラバスの最高音は何の音?
ポロネーズとアリアのの最高音、一番高い音は52小節目にあるミのフラット(ミ♭)で、ドイツ音名でいうEs(E♭)の音になり、いわゆる高い音と言われるような音域になってきます。
吹奏楽部のレッスンに行くと、高い音が苦手という声を聞くけれど、実はコントラバスは高い音の方がやさしかったりします。
それはなぜか?
弦楽器は音が低いほど、音と音の幅が広く(指も広がる)反対に音が高くなると各指の幅が狭くなり弦も押さえやすくなるので、音の位置、ポジションを理解できさえすれば、低い音よりも押さえやすく音程が取りやすいのです。
ただし、これは弦を押さえる左手の形を習得した上での話なため、もし弦をぎゅっと握ってしまっている人がいたら、まずは左手の形から見直してみてください。
練習のポイント
ポロネーズとアリアの練習ポイントは
- アップは常に弓先からではないという視点
- ポロネーズのリズムを作る楽器とのアンサンブル
この二つ。
まず、ボウイングを決めるときアップとなると弓先から弾くというイメージがありますが、アップは常に弓先からはじまるのではないという理解をしておくと良し。
そして、コントラバスはどの楽器とポロネーズのリズムを作っているのかをチェックしておくこと。
この二つを押さえて、さっそく曲を見ていきましょう。
冒頭からAまで
コントラバスのパートがはじまる3小節目はアップからスタート。
ここをダウンで弾く学校もありましたが、次の二分音符を弾くのが少し大変になってしまうので、アップからはじまるのがおすすめです。
そして!アップだけれども、弓先からはじまると次が弾きにくいので弓の真ん中から元の方を使ってみてください。
そうすることで、次の小節の二分音符が弓元から弾けるようになります。
ここでアップは常に弓先はじまりではないということを知っておくと他でも役立ちます。
A〜B
前のsfをアップで弾き、Aからは弓順。
3拍目に四分音符があるとき、あとぶくれになったり、その音だけ大きくならないように注意して練習してみてください。ここがこの曲の難しいポイントの一つです。
16小節目のボウイングはアップ-アップで1拍目を弾き、2拍目からは弓順で良いと思います。
B〜C
20小節目のボウイングはダウンからはじめて弓順。
24小節目はダウンで弾けると気持ち良いので、例えばずっと弓順で進んで23小節目の二分音符がダウンになるので、改めて24小説をダウンで弾き直すという方法があります。
今のところ、僕はこのボウイングでやっています。
C〜D
ここからコントラバスはpizzの指示がありますが、これがとても重要な役割を持ちます。
まず、スコアを開くとここで一気に楽器の数が減りチューバもお休みになります。
この場面の音楽のバスを受け持つ木管低音とコントラバスのpizzが音楽を運んで行くのですが、コントラバスのpizzはうまく弾くと豊かな響きで音が心地よく抜けていきます。
mpとありますが、少しだけ大きめにカスタネットやホルンのリズムを右手に感じながら弦を弾いてみてください。
そのときに、細かいリズムから音のスピードを感じることでより良いpizzが生まれます。
29小節目はダウンから弓順、33小節目のこの音形もダウンからの弓順でOKです。
D〜E、E〜F
43小節の音形は指揮をする先生がどのような音楽にするかでボウイングも変わってくる場面ですが、まずは弓順で練習しておく形で良いと思います。
44小節目となるEからの四分音符は音楽を進めていくイメージで、いわゆる重くならないように。
そのためのヒントは、スネアドラムのリズムを身体のどこかで感じることで、四分音符に推進力を持たせることができます。
F〜G
Fのsffzをダウンで弾き、次の2拍目もまたダウンからはじまり弓順。
すると、56小節目の長い音がアップになります。
そのままでも良いと思いますが、もし弾きにくい場合はどこかで工夫をする必要があります。
例えば55小節目の2拍目をダウン-ダウンにしてみたり、他にも良いボウイングがあるかもしれません。ここは僕も研究ポイントです。
そのあとはしばらくお休みです。
I〜J
Gから音楽はアリアの場面へと移り、ゆったりとした音楽の流れの中でコントラバスはpizzで音を添えます。
コントラバスはオプションとなっていますが、この場面はとても重要な役割を持っており、このpizzがあるかないかでバンドのサウンドも大きく変わると感じています。
一緒に音を出すのはチューバとトライアングル。
バスの音の次に動くのはバリトンサックスやバスクラリネットでユーフォニアムがソロを吹きます。
コントラバスがどんな響きを出せば、音がどの方向に向かえばバリトンサックスやバスクラリネットが吹きやすいかを考えてみてください。
ヒントはpizzの右手で音の響きを表現するというところ。
ただこれは、手を大きくあげて大袈裟な表現をするということではありません。音の弾くスピード、音の方向を考えてみてください。
78小節目からはarcoに戻り、ここはアップからはじめてみると良いと思います。次のレ(D)の伸ばしの音は途中で弓を返してOK。
クレッシェンドで弓の元まで持っていき、ダウンでffの音を弾きます。
K〜Mから終わりまで
Kは弓順ではじまり、99小節の動きもそのまま弓順。
105小節の4拍目ウラにあるリズムは休符で弓を弦の上に置き、ダウンで良い発音を、次のsfはアップからはじめ弓順。
Mがアップになるのでそのまま弓順で進むか、Mをダウンで弾き直し、112小節の1拍目をダウンで終え、次の八分音符をまたダウンで弾き直すというような工夫をしても良いかもしれません。
最後はダウンでsffzをバッチリ決めてみてください。
おわりに:情報を鵜呑みにしない
2023年度全日本吹奏楽コンクール課題曲2番ポロネーズとアリア。
ブログでのレッスンはいかがだったでしょうか?
今はこうしてブログをはじめYouTubeやインスタグラム、TikTokなのですぐに情報が手に入るようになり僕が高校生の頃よりも欲しい情報が手に入りやすくなりました。
だけれども、多くの中高生と接する中で一つだけ気をつけたほうが良いなと思うことがあります。
それは、情報を鵜呑みにしないこと。
有益な情報にすぐ辿り着ける時代だからこそ、自分で考える癖、情報を疑う視点を持つことが大切で、手にした情報を検証し自分にとって必要なものか取捨選択する力を育ててください。
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