日記

フリーランス音楽家の年代別キャリア形成プラン。アルバイトと演奏活動の両立からはじまる道なき道の歩き方。

コントラバス奏者、吹奏楽指導者、指揮者の井口信之輔です。

コントラバスを弾いたり、教えたり、高校の音楽科で講師をしたり、中学高校の部活動からアマチュアオーケストラ、吹奏楽団などで指揮・指導をしたりしています。

最近はメンタル心理カウンセラーの資格を取得し、誰かの相談ごとを聞いたりしています。

先日、1年を振り返りながらフリーランス音楽家のキャリア形成プランというものを考えていました。フリーランスという働き方は十人十色ですが、個人的にこんな感じでキャリア形成していくと良いんじゃないかなと思うところを頭の中でまとめてみたので、記憶が上書き保存される前に書き残していこうと思います。

フリーランス音楽家のキャリア形成プラン

音楽大学を卒業し、プロの音楽家を目指す人が選ぶ選択肢で一番多いのがフリーランスだと考えています。そこから歳を重ね、経験を積むごとに枝分かれを繰り返し、自分の立ち位置がわかってくるという流れをイメージしてみてください。

自分自身もそうだった、周りにも多い4年制大学を卒業し、アルバイトをしながら音楽の仕事をしていくフリー奏者となったパターンです。

20代前半 何でもやる、とにかく動く

音大を出て、音大を出て、いわゆる期待と不安でいっぱいな時期。

この時期に大切なのは何でもやる、とにかく動くということ。

この時点で自分のやりたいことが見えている人は、自分が描く未来に向けて。

まだふわっとしてる人は、とにかく何でもやってみる。

例えばボランティアの演奏依頼やノーギャラの仕事でも、ちょっとチケットノルマが大変そうな企画でも、興味があれば気になれば一度は経験してみる。

この時期に大切なのは直感で興味を持ったら触れてみること。

この時期に気をつけたいこと

お金を稼ぐことは大切だけど、SNSに上がる声を鵜呑みにしすぎてボランティアやノーギャラ案件を否定しすぎないこと。受け取り方次第ではチャンスになることもあるということ、人を見極める能力は実体験を通して得るということを頭の片隅に入れておくこと。お金はバイトで稼いで音楽は経験を稼ぐという視点もけっこう大切。

あと、知らないことを感情で叩かないこと。

20代後半 得意・不得意、向き・不向きを知る

20代前半を何でもやる、とにかく動くという感じで過ごしてくると、徐々に自分の得意・不得意、向き・不向きがわかってくる。

そしてやらなくて良いこと、やらない方が良いことを知っておくというのが大切。

また、フリーランスとして結果を出すとしたら自分がどう立ち回っていくかを計算していくことも大切なので夢を追うような情熱的な気持ちと併せて、冷静で計算的な思考を持つことを忘れないようにしておく。とくに、よく耳にする努力してたらいつか誰かが見てくれるというのは聞こえはいいけど運任せに近いので、気持ちだけで突っ走らない。

ノートを用意して自己分析をし、自分の好きなことや得意なこと、苦手なことなどを書き出していく。この時期に自分の得意・不得意、向き・不向きをしっかりと理解しておく。

この時期に気をつけたいこと

同世代でも活動スタイルに変化が出てきたり、周りと自分を比較してしまいやすい時期なので、自分の得意・不得意、向き・不向きをしっかりと理解して自分軸をしっかり持っておくこと。

あと、周りと違うことをしている人を感情で叩かないこと。

30代前半 スキルの掛け算で活動の幅を広げる

何でもやります!でいろんな経験をして、得意・不得意、向き・不向きを知って30代に突入したら、スキルの掛け算で活動の幅を広げていく。

専攻楽器での演奏活動をA地点として、レッスンというB地点を作る。

いわゆる二足のわらじ

ここまでは多くの人がやっているので、そこから得意なことや好きなことを一つ掛け合わせてC地点を作るという視点を持つ。

そうするとA-B-Cと3つ点を線で結ぶと三角形ができ、これが自分の活動の幅となるので、さらにそこから好きや得意でD地点、E地点と新たな地点を作り線で結ぶ。

こうして、足し算で積み重ねてきた専攻楽器のスキルに好きや得意を掛け算をして活動を横展開していく時期。

活動面積が広がれば仕事の幅も広がり、収入も増えることにも繋がる。

この時期に気をつけたいこと

スキルの掛け算で新たなジャンルに飛び込む先ではどこかでお手並み拝見されているという覚悟を持つ。そして自分の心の癒し方、ストレスの解消方法を知っておく。

30代後半 業界での立ち位置を知り、才能を生かす場所を見極め、ポジションをとる

30代も半ばになると、オーケストラや吹奏楽団の楽団員、音楽大学や音楽高校の講師、アマチュア楽団の常任指揮者などをはじめ、会社を立ち上げる人や自分の音楽教室を持つ人など、さまざまなポストに就く人が出てくる。

そして、業界で自分がどの位置にいるのかがわかってくる時期でもある。

このどの位置というのは、自分はどの分野で何を提供して喜んでいただけることが多いのかという立ち位置を知ることで業界の中での細かい職種やどこで演奏している、教えているというような他者との比較ではない。

そして、自分のスキルを提供して喜んでいただける場所、感謝される場面というのは音楽業界のどの分野のどのシーンにあるのかを見極め、そこで自分の才能を存分に生かす

そして、ポジションをとる

このポジションをとるというのは◯◯と言ったら××さんという唯一無二の存在になることであって、「ここは俺の縄張りだ!」というようなポジション取りではない。

唯一無二の存在はスキルの掛け算の先にある。

この時期に気をつけたいこと

お金の勉強をしておく。お金が尽きたら夢もまた尽きることを知っておく。

40代に向けて 覚醒する、突き抜ける、その道のスペシャリストになる

ここまで来たら、まずは頑張ってきた自分を労おう。

よく頑張った。

そして、昔はライバルだったかもしれない同期は戦友だ。

気づけば中堅、さまざまな場所での世代交代をリアルタイムで目にし、ときに別れを経験し、優秀な若手に圧倒される。

指導先の学校の音楽準備室で見かけた数十年前の雑誌には、今の自分と同じか少し上の年齢だった頃の先生がレッスンコラムを書いていたりする。

正直、この先はまだよくわからない。でも、ここでもう一踏ん張りして覚醒し、突き抜けて、その道のスペシャリストになるのが良いと思う。

この時期に気をつけたいこと

たぶん、この数年間の過ごし方で人生決まると思う。

あと健康(楽屋で健康診断の話が増える)

おまけ

フリーランスの音楽家が一度は考えたことがあるであろう

  • アルバイト
  • SNS
  • お金のこと

について、思うことを書いてみます。

アルバイトのやめ時

フリーランスの音楽家にとって一時的に収入の軸ともなるのがアルバイト。

これは音楽家だけでなく、文化芸術・芸能の世界で生きる多くの人にとっても同じだと思う。

アルバイトと音楽活動を並行しているところから、音楽一本へと移行していくところが一つの目標となる人が多いと仮定すると、アルバイトのやめ時を見極めるのはとっても大切になる。

これに関しては、一人一人の生活環境によって様々だけれども◯◯ができるようになったらバイトを辞めるという選択はけっこう危険。

ここでダラダラと時間を過ごしてしまうのはもったいないので、思い切って断ち切る勇気が大事だったりする。この世界にはアルバイトを辞めたら仕事が増える説というのがあるけれど、これはバイトを辞めて後戻りできない状況になれば、仕事に関する情報感度が一気に上がるということだと考えている。

これはある種、精神論のようなところがあるけどあながち間違っていないと思う。

アルバイトをすること自体、悪いことでもなければ、職種によってはプラスになるのでスキルアップにもなるけれど、音楽一本へと移行していくところが一つの目標なのであれば断ち切る勇気を持つのが大事。

音楽家とSNS

SNSの登場によって、活動スタイルや仕事の幅は一気に広がりました。

SNSって使えた方が良いの?と聞かれると使えた方が良いとは思いますが、一切SNSをやってなくてもメチャクチャ仕事をしている人もたくさんいます。

SNSは掛け算であって、ゼロに何をかけてもゼロなので使い方次第なところがありますよね。

まずは自分の半径5メートルを幸せにして(足し算で信用を積み重ね)そこにSNSを掛け合わせるっていうのが良いのかなと思います。自分を発信しつつ、周りを発信する。

発信力を内側に活かすという視点が持てるとSNSの使い方も広がります。

SNSにおける結果の出し方

狂う。周りに引かれるほどにやる。魂を売る。

2年くらい同じことを続けると何かしらの結果が出てることが多いです。

音楽家とお金のこと

音楽家とお金に関する話は定期的にSNSで議論さることも多く注目度が高い話題、であるはずなんだけど振り返ってみると僕らはあんまりお金のことを学んだことがない(人が多い)

だけど、フリーランスとして、いわゆる自分の名前と腕で仕事をしていくとなるとお金の話を避けていたらどんな結末が待っているかは想像がつくだろう。

残酷だけど、お金が尽きたら夢もまた尽きる。

家族、パートナー、自分の生活、そして夢と守りたいものがあればあるほどお金の知識は必須だ。

併せて、フリーランスの音楽家はギャラ交渉の知識を身につけておくと良い。

https://youtu.be/bl84HT8vz08?feature=shared

フリーランスで活動する音楽家のギャラ交渉と金額設定のはなし

今年の春に書いた音楽家のギャラ交渉のはなし。

実体験に基づいた踏み込んだ話や交渉例は有料ですが、無料部分だけでも読み応えあります。

 

おわりに

2018年に、それほどでもない成績で音楽大学を卒業した僕が、30歳まで音楽を続けて感じた21のことという記事がバズり、その後も何度か音楽家とキャリアの話をブログに書いたり、数回だけれど何度か登壇して喋ったりする中で、音楽家とキャリアのことを考える時間が増えました。

そんな中で、今年を振り返りながらフリーランス音楽家のキャリア形成は、こんな感じで行くと良いんじゃないかなと思うところを書き殴ってきました。

まだまだ、書きたいことは山ほどありますが、まずはシンプルにまとめたいと思ったのでここでおしまい。最後まで読んでくださりありがとうございました。

長々と書きましたが、僕自身もフリーランスの音楽家の一人として活動しながら自分が描く未来に向けてキャリアを重ねている過程にいます。

うまくいかないこともたくさんあるけど、たくさんの人に支えられて何とかやってます。

まずは、2023年あと少しだけ残っているので全力で駆け抜けていきましょう!

この記事が、キャリアに悩む誰かの背中を押すようなきっかけになったら嬉しいです。

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イグチシンノスケ

千葉県出身。 船橋市立葛飾中学校管弦楽部にてコントラバスと出会う。 千葉県立市川西高等学校吹奏楽部を経て洗足学園音楽大学へ入学。 2022年春学期東京音楽大学指揮研修講座修了。 在学中より「吹奏楽部におけるコントラバスの現状」に着目し、多くの講習会に講師として参加。大学卒業後はフリーランスのコントラバス奏者としてオーケストラ、吹奏楽、室内楽をはじめ楽器製作ワークショップやレコーディングなど多方面での演奏活動をする傍ら、吹奏楽指導者・アマチュアオーケストラのトレーナーとしても活動しており、中でも吹奏楽におけるコントラバスの指導に力を入れている。 これまでにコントラバスを寺田和正、菅野明彦、黒木岩寿各氏に師事。指揮法を川本統脩、三河正典各氏に師事。よこはま月曜吹奏楽団指揮者。初心者と子どものためのオーケストラpìccolo音楽監督。板橋区演奏家協会理事。取手聖徳女子高等学校音楽科非常勤講師。

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