明日のためのレッスンノート

「現場のリアルな声を集めました」この一年間、吹奏楽部のレッスンや初心者講習会で受けてきた質問に対する回答

明日のためのレッスンノート(vol.29)

吹奏楽におけるコントラバスへの理解と発展を願って毎週更新している「明日のためのレッスンノート」今週は、たくさんの学校とお付き合いをさせていただいた2018年度のレッスンや講習会で受けた質問をまとめました。

学年が一つ上がり新入生が入ってきたときに、はじめて後輩ができたときに役に立つのではないかと思い、僕なりの回答をまとめています。

この答えが正解ではありませんが、数ある中の一つの考えとして役に立ててくれたら嬉しいです。

これまで何度か書いてきましたが「明日のためのレッスンノート」は、パートは自分一人だけ、周りにコントラバスを教えてくれる人がいないと悩むコントラバス奏者に向けて書いているノートです。

7ヶ月連続更新の旅も来週でおしまい。

あと少しだけ、お付き合いくださいね。

レッスンや講習会で受けた質問まとめ「合奏編」

合奏の中にけるコントラバスについて受けた質問まとめ

コントラバスって聴こえるんですか?

「正しい奏法」を身につけ音を出すことができたら聴こえます。

ただ、ある程度バンドの音量が大きくなるとコントラバス単体としての音は聴こえなくなってしまいますが、そこは気にしなくて良いと考えています。

吹奏楽におけるコントラバスの役割として大切なのは、お客さんに音を届けることよりも、セクションの中でしっかりと鳴らすこと。

これは、洗足学園のクラリネットオーケストラでの体験談ですが、後列にコントラバスがいて音を出すだけで、前列の低音楽器は吹きやすさが全然違うと話してくれました。

コントラバスの弾き方には、これが正解!というものはありませんが、一般的に知られているコントラバスの教則本に書かれている「右手」と「左手」の基礎を身につけた上で、良い音程、良い響きを作る技術を身につけた上での演奏を「正しい奏法」という言葉で表しています。


合奏で存在を忘れられています。気づいてもらうためにはどうすれば良いですか?

まず、僕の考えですが吹奏楽で弾くときは、楽譜に書かれている音量よりも少し大きめに弾いています。

mp以下の音量はないという考えで音を出し、大きかったら調整するようにします。

顧問や合奏トレーナーの先生に積極的に質問してみるのも良いかもしれませんね。ここでは質問力が問われるので「自分は◯◯と思ってる、または弾いているんですけど、どう聴こえていますか?」という具合で質問してみてください。

僕もLINE@や質問箱でたくさんの質問メッセージが届きますが、現状とそれに対してどうしたいのかが書かれているメッセージは回答するほうも、悩みを想像しやすいのでより具体的なアドバイスを送れます。

余談ですが、こんなTシャツも売られています


まだコントラバスを始めたばかりで合奏についていけません

僕もコントラバスを始めた頃、全くそうでした。

よくレッスンで話をしていますが、楽譜を完璧に弾こうと思わず、弾けるところでバッチリ決めるという考えを持ってみてください。

もちろん、楽譜に書かれたことを忠実に演奏することは大切ですが、まずは弾ける音を自信持って弾く。

それが、四分音符だけだって伸ばしの音だけだって全く問題ありません。

僕はコントラバスを始めて3日後に演奏会がありました。

楽譜を追えるはずもなく、立って弾く真似をしているだけでしたがD線の開放弦のpizzだけは弾けたので、そこを思いっきり演奏しました。

楽しい音楽のスペシャリスト、ルロイ・アンダーソンの『The Syncopated Clock シンコペーテッド・クロック』という曲でのエピソードです。

レッスンや講習会で受けた質問まとめ「練習編」

個人練習、パート練習の中でどうすれば良いか、受けてきた質問まとめ

基礎は何をやればいいですか?

吹奏楽の中には「基礎」という言葉を「バンドの基礎」と「楽器の基礎」に分けて考えてみますね。

そうすると、個人練習やパート練習で取り組むべき「基礎」は「楽器の基礎」つまり、コントラバスのために書かれた教則本、テキストを使って弾く演奏技術向上のための基礎練習です。

多くの部活で、個人練習の時間があまりないという声を聞いてきました。

なので、僕は取り組んでおきたい基礎練習として以下の3つを提案しています。

  1. 右手のボウイング練習
  2. 左手のフォームを作りフィンガリングの書かれた楽譜で全調スケール
  3. コントラバスの運指表に基づいた12のポジションの習得

これから部活動の活動時間に制限がかかってくることもあって、実際は1時間も個人練習を取ることが難しいのではないかと思います。

なので、1日10分でも全く問題ありません。

全ては日々の積み重ね、継続は力なりです。

1ヶ月続ければ、かなりの変化があるのではないかと考えています。

楽譜は過去のレッスンノートに全てアップしているので必要があれば役に立ててくださいね。


はじめて後輩が入ってきます、パート練習は何をすれば良いですか?

はじめて後輩が入ってくるのであれば、個人練習の時間を作った後に一緒に弾くパート練習の時間を作ってみてください。

そして、右手のボウイング練習や左手のフォームを作って弾くスケールの練習は、お互いが向き合って練習することをおすすめします。

向き合って練習することで、お互いの奏法をチェックできますよね。

そして、良いところを見つけてどんどん褒めてあげてください。

褒める時は具体的に「今の◯◯は、△△がよかった!」

もし、改善点があれば「でも、××をもっとこうすると良くなるんじゃないかな?」とアドバイスをしてみてください。

まずは、ボウイングと左手のフォームを作って指の練習。

スケールはB-durとC-durなんていかがでしょうか。


パート練習はどこに入れば良いですか?

定期演奏会に行くと、コントラバスのポジションは金管低音だったり木管低音だったりとさまざまです。

実は吹奏楽のコントラバスには2つの顔があると僕は考えています。

  • 木管低音としてのコントラバス
  • 金管低音としてのコントラバス

今、自分たちが取り組んでいる曲のスコアを見て「一緒に動いているパートはどこかな?」と確認して、その楽器と練習してみてください。

合奏中に考えることでもあって、ここの場面のコントラバスは金管寄りなのか、木管寄りなのかを考えその場面にあった音色を作っていきます。

これも正解がないので、考えながら自分がそうだと思う音を出してみてくださいね。

レッスンや講習会で受けた質問まとめ「日常編」

年間を通して行われる行事、演奏で受けてきた質問まとめ

部員勧誘でコントラバスの魅力をどう伝えようか悩んでいます

ここに魅力を全部書きました。

良かったら、参考にしてくださいね。


演奏会やコンクールでコントラバスの楽譜がないからとチューバ譜を渡されました

チューバの楽譜は書かれている音が低くて読むのが大変ですよね。

そして、楽譜に書かれたアーティキュレーションで弾くと弓が足りなくなったりするので工夫が必要です。

慣れていたり、経験のある人は弾きやすいよに調整しながら演奏してる人が多いと思いますが、独学で周りに教えてくれる人がいないという環境でチューバ譜だけ渡されたら地獄でしかありません。

チューバ譜を弾くメリット、デメリットはここに書いてあるので役に立ててください。

そして、覚えておいて欲しいのがコントラバスとチューバが良いタッグを組んだら最強ということです。


ホール練習で「エンドピンのゴム」を外して演奏するように言われました

これ、とっても良いアドバイスなのですが楽器の構造上、外してしまうと危険な場合があることを頭に入れておいてください。

エンドピンのゴムは滑り止めとして付いているもの、尖っているピンの先端を保護するものとして付いているものと二つのタイプに分かれています。

なので、まずは自分の弾いている楽器がどのタイプなのかを知っておくことが大切です。

そして、エンドピンのゴムを外して先端を床に突き刺し演奏している人は、必ず休憩中などは椅子に楽器を立てかけるか、床に寝かす場合はゴムキャップを付けるようにしてください。

先端が尖っているので、足を引っ掛けてしまうと確実に怪我をします。

エンドピンに関する話は、こちらのノートを参考にしてくださいね。


ホールではf字孔を客席に向けたほうが良いですか?

そのバンドの編成・セッティングにもよりますが、セクションの中でコントラバスの音をしっかり鳴らす、弦の響きを作るという考えであれば、客席に向ける必要はあまりないと考えています。

指揮者の方に向けるくらいがちょうど良いのかな?と考えます。

楽譜が見え、指揮者が視界に入り、前列を見渡すことができる中で無理なく演奏できることが大切です。


トラックで運搬する時は楽器のケースの中に弓を入れても大丈夫ですか?

これは、弓が折れてしまう危険性があるので、僕はあまりすすめません。

過去に楽器ケースの弓ケースを入れるポケットにそのまま弓を入れてしまい何かの衝撃で折れてしまったということがありました。

弓ケースがなければ、代わりになる物で弓を包み、楽器ケースに入れずに別に運ぶことをおすすめします。

まだ売られているかはわかりませんが、100円ショップで売られている筒が代用品としてはピッタリです。


アンサンブルコンテストはどこに入れば良いですか?

コントラバスは木管楽器との相性も良いですし、最近ではいくつかの指定された楽器で演奏できる「フレキシブルアンサンブル」という楽譜が売られています。

コントラバスパートがあるのも嬉しいですね。

個人的には、クラリネットとの相性が抜群に良いと感じています。

他にも、マリンバとコントラバス、フルートとハープとコントラバスのような編成での演奏も経験しましたがどちらもおすすめです。

また、コンテストの規定外になってしまいますが、ぜひコントラバスアンサンブルにチャレンジしてみてください。楽譜は、コントラバスアンサンブル用に編曲された物でも良いですし、ピアノ曲や歌謡曲などの楽譜を使ってもいろいろな曲が演奏できます。


ソロコンテストに挑戦したいのですが、曲はありますか?

先日、中学生・高校生のためのコントラバス・ソロコンテストというコントラバス奏者に向けたコンテストが開催されました。

これまで、楽譜を探しに行ったけど曲がないという声が多くありましたが、先日のコンテストのホームページに「自由曲候補」として多くの曲が掲載されています。

コントラバス奏者が選んだ曲ということもあり、僕もとてもおすすめです。

ぜひ、ソロを弾いてみたいという人も参考にしてみてはいかがでしょうか。

ソロに挑戦したい人は必見!コントラバス・ソロコンテストの自由曲候補一覧

レッスンや講習会で受けた質問まとめ「ポップス編」

文化祭や定期演奏会のポップスステージ、また演出に関するしつもんまとめ

エレキベースを弾くことになりましたが、全然ついていけません

吹奏楽の世界では、コントラバス奏者がエレキベースを担当することが多いですよね。

運指や離れた弦の音程など、共通するところもいくつかあるので、コントラバスが弾けるからエレキベースも弾けると思われがちですが、奏法を含め全く別の楽器です。

なので、全然ついていけなくてもあまり自分を責めないでくださいね。

でも、エレキベースを習得することでコントラバスの演奏技術が向上することは実体験としてあるのでエレキベースは弾けた方が良いと考えています。

じゃあ、具体的にどんな練習をすれば良いかとなりますね

テンポは60くらいに設定します

  1. ハーフポジションのE線→A線→D線→G線の順に1-2-4と半音ずつ押さえて弾く
  2. 今度はG線から4-2-1の順でE線まで戻る
  3. 次は第1ポジションで同じことをやる
  4. 同じことを第2ポジションでやり、また第1ポジション→ハーフポジションと戻る
  5. これを手が疲れたら必ず休憩しながら10分続ける

僕はこれで、指が動くようになりました。

右手は人差し指と中指を交互に使います。

人差し指がダウン、中指がアップと考えてみてください。

エレキベースは4本の指で押さえる方法(1-2-3-4)もありますが、中高生にはコントラバスと同じ押さえ方(1-2-4)をおすすめしています。

また、楽譜はかなり高度な技術を求めていることが多いので、弾きやすいように音数を減らしてみるなどの工夫もしてみてください。


エレキベースの楽譜をコントラバスで弾きますがpizzが追いつきません

これめっちゃ難しいですよね。

僕は基本的にエレキベースの楽譜をコントラバスで弾くときは弓で弾いています。

楽譜にpizzの指示があったり「ここはpizzの方が良いかな?」と思ったら、とりあえずいろいろやってみることが大切で、自分が良いと思ったことを「ここはpizzにして他は弓で弾いてみようと思います」と指揮をする先生に相談するのも良いかもしれません。

また、コントラバスはチューバ譜をarco(弓)で弾くのもおすすめです。

とくに楽器を始めたばかりの人はエレキベースの楽譜によく書かれているオクターブの動きなどもあまり出てこないので、負担も少ないしおすすめです。

おわりに

明日のためのレッスンノート、今週はこの一年間を通したレッスンで耳にした質問や、悩みに対する回答をまとめました。

これは多くの学校、特にこれまでコントラバスのレッスンがなかった学校で聞いた内容なので、同じようなことで悩んでいる人は多いかもしれません。

はじめにも書きましたが、この回答が正解ではありませんので数ある考え方の一つとして「いいね!」と思った部分だけ役に立ててくれたら嬉しいです。

去年の9月2日から毎週更新してきた「明日のためのレッスンノート」も、いよいよ来週が最終回となりました。

最終回は、これまでレッスンノートを読んできてくれた全ての人に感謝の気持ちを込めて、音楽とともにメッセージを綴りお別れとしたいと思います。

「明日のためのレッスンノート」を通し、中学、高校生活の中にある音楽活動が少しでも充実したものになればそれ以上に嬉しいことはありません。

それでは、また。

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イグチシンノスケ

千葉県出身。 船橋市立葛飾中学校管弦楽部にてコントラバスと出会う。 千葉県立市川西高等学校吹奏楽部を経て洗足学園音楽大学へ入学。 2022年春学期東京音楽大学指揮研修講座修了。 在学中より「吹奏楽部におけるコントラバスの現状」に着目し、多くの講習会に講師として参加。大学卒業後はフリーランスのコントラバス奏者としてオーケストラ、吹奏楽、室内楽をはじめ楽器製作ワークショップやレコーディングなど多方面での演奏活動をする傍ら、吹奏楽指導者・アマチュアオーケストラのトレーナーとしても活動しており、中でも吹奏楽におけるコントラバスの指導に力を入れている。 これまでにコントラバスを寺田和正、菅野明彦、黒木岩寿各氏に師事。指揮法を川本統脩、三河正典各氏に師事。よこはま月曜吹奏楽団指揮者。初心者と子どものためのオーケストラpìccolo音楽監督。板橋区演奏家協会理事。取手聖徳女子高等学校音楽科非常勤講師。

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