明日のためのレッスンノート

コントラバスパートを徹底分析!2024年度吹奏楽コンクール課題曲 3.メルヘン

こんにちは。コントラバス奏者、吹奏楽指導者、指揮者の井口信之輔です。

クラシック音楽を中心にコントラバス奏者として活動するほか、中学高校の吹奏楽部やオーケストラ部、大学サークルでコントラバスの講師を務めたり、アマチュア楽団の指揮・指導にあたったり、茨城県にある取手聖徳女子高校の音楽科でコントラバスの講師を務めています。

吹奏楽指導者としては、吹奏楽コンクールの時期をはじめ年間通して40校ほどの中高吹奏楽部でコントラバスのレッスンをしたり、弦楽器奏者の視点から見たバンド指導をテーマに合奏指導をしたりしています。

さて、吹奏楽コンクールの時期が近づいてきたので、明日のためのレッスンノート特別編!

毎年この時期は全日本吹奏楽コンクール課題曲コントラバスパートを徹底分析!をテーマに、課題曲4曲のコントラバスパートを練習ポイントを解説していきます。

この企画をはじめたのは2017年の春でした。

まだXがTwitterだった頃、パートは自分一人だけ、周りにコントラバスを教えてくれる人がいないという環境下で練習に励む中高生からの相談メールが多く届き、ブログを通して発信すれば誰かの役にたつかもしれないとはじめたのがきっかけでした。

そこから、明日のためのレッスンノートや地方への出張レッスンへと繋がっていくのですが、こうして今年もを書くことで、パートは自分一人だけ、周りにコントラバスを教えてくれる人がいないという環境下で練習に励む中高生に届けば良いなと思います。

それでは、今回は課題曲 3.メルヘンを一緒に学んでいきましょう!

課題曲3. メルヘン

メルヘンという作品を手掛けたのは、吹奏楽の分野で数多くの名曲を世に送り出している作曲家、酒井格さん。

メルヘンは童謡やおとぎ話を意味するドイツ語ですが、この曲には特定のストーリーはありません。

スコアの解説によると、奏者が想像力を膨らませて、さまざまな「メルヘン」を創り上げてくださいと書かれています。

酒井さんの代表作である『たなばた』や『おおみそか』などの曲を演奏した、また聴いたことがあるという方は、より酒井節を楽しめるかもしれません。

今年は吹奏楽コンクールの課題曲として全国各地で演奏されていく曲ですが、コンクールが幕を閉じたあとも、コンサートなどで演奏され続ける未来が想像できそうな作品です。

それでは!早速、コントラバスパートを見ていきたいと思います。

コントラバスの最高音

コントラバスパートの最高音は50小節目(Gの2小節前)にあるE(ミ)の音で、レッスンノートで解説しているポジションでは第4ポジションにあたります。

また、最高音のE(ミ)から1オクターヴ下がったE(ミ)に進む動きがありますが、ここでは第4ポジションの音の並びを理解することで、とても楽に弾けるようになります。

知っておきたいテクニック

この曲を演奏する上で、知ってきたいテクニックは2つ。

  • 第4ポジションの音の並びを理解したフィンガリング(指使い)
  • 3/4拍子、ワルツの拍の感じ方

です。

どんな世界が広がる?

Allegro vivaceという音楽用語を辞書で引いてみると、快活に速くであったりAllegroより速くという意味が書いてあります。

だけれども、イタリアの日常会話という視点で見てみるとAllegroという言葉には陽気さ、楽しい、明るいという意味があり、vivaceは生命力あふれる活発さ、そして輝くような表情を意味します。

まさにメルヘンのはじまりのようなイメージだと思いますが、音楽用語としてのAllegro vivace、そしてイタリアの日常会話で使われるAllegroやvivaceという言葉が持つ意味と、二つの視点に触れてみて音楽を聴いたとき、どんな世界が広がっていくでしょう?

ファンタジーの数は人々が思い描くだけあります。

さあ、この記事を読んでくださっている読者の方が描くメルヘンの世界へと出発です!

冒頭からA、Bまで

コントラバスは3小節目からスタートで、1拍目に四分休符を置いたシンコペーションのリズムが目指すのは次の小節にあるB(シ♭)の音。

そして、八分休符を挟み再び出てくるB(シ♭)の音はもう一度ダウンで弾くと良いでしょう。

Aからの動きも再びダウンから弓順、11小節目のpizzが入る前後はテンポが揺れるので、アルトサックスのソロ、そしてトライアングルがどのタイミングで入ってくるのか?スコアを開いて確認してみてください。

テンポが動くところは指揮者を頼りにしつつも、周りの動きを理解することがとても大切。

そして、技術的な話をするとpizzを弾く1拍前には指が弦の上に準備できていることが大切で、指を置いて弾区ことができれば、コントラバスが複数いる場合でもpizzの音を揃えることができます。

pと書かれていますが、少し大きく弾いても良いかなと考えています。

BからCまで

Bからは四分音符ですが、スタッカートが付いているので軽快さ、軽やかさを出してみてください。

その後に入ってくるスネアドラムなどの細かい動きに寄せるイメージで弾いていき、文字で書かれたクレッシェンドや18小節目からの二分音符で書かれた記号のクレッシェンド、デクレッシェンドをうまく出していくには、Bを弓のどの位置で弾きはじめるかが大切です。

ヒントとして、弓の真ん中あたり、あるいは少しだけ弓元に近い位置で弾いてみてください。

CにあるG(ソ)のクレッシェンドは弾きながら弓を駒よりに持っていくことでクレッシェンドを表現することができます。開放弦のロウングトーンでもクレッシェンドの練習ができるので、あと押しにならないように気をつけながら、クレッシェンドのタイミングやバランスを工夫してみてください。

CからHまで、合わせるコツは音楽の流れを頭に入れておくこと

Cに入ると、すぐにmeno mosso の指示がありテンポに変化が生まれます。

24小節目からは一弓で弾いても、途中で返しても良いと思います。

24小節目は2拍でダウン→アップと返し、次の小節はダウン。

そして四分休符を挟み4拍目からの動きはアップから入ると良いかと思います。

ここを合わせるコツはmeno mossoからの音楽の流れを頭に入れておくこと、そして26小節目の3拍目の四分休符を感じて次の拍からの音を弾きます。

感じるという言い回しはとても抽象的ですが、身体のどこかで音楽や拍子感が流れているといった捉え方で良いと思います。

Dからは再びAllegro vivaceとなり、打楽器のリズムと低音の四分音符が心地よいスピードで音楽を進め31小節目からのクレッシェンド、デクレッシェンドの幅は弓の量を工夫しながら全体とうまく合わせていきます。

Eに入った後、39小節目はアップで入り40小節目から再び四分音符、42小節目は弓順でもOKで43小節目は四分休符を経て再びアップからメルヘンのテーマを弾いていきましょう。

忙しい動きですが、コントラバスの運指表に基づく12のポジションよりハーフポジションで弾ける音域です。

47小節目はダウンからはじめる人が多いと思いますが、次のアップはどの位置からスタートさせたら弾きやすいか?を考え逆算してダウンの弾く位置を決めていきます。

そして48小節目は再びアップ、この曲の最高音であるE(ミ)の音へと向かいます。

48〜50小節目の弾き方

48小節目の動きがこの曲の難しいところで、これまで何度もレッスンノートやSNSなどで発信している弦をギュッと握る押さえ方では追いつかなくなる場面です。

48小節目はアップではじまり49小節目からの上行形は

A(G-1)B(G-2)H(G-4):C(G-1)D(G-4):Es(G-2) E(G-4)という指でとります。

そして50小節目は高いE(ミ)の音を小指(4)で押さえ、同じポジション(左手の形は変わらない)でA線のEを人差し指(1)で押さえます。

すると、とても楽に押さえられると思います。

そして、51小節目の音形もアップから、続くAdagioの指示がある場面のpizzも少し大きく弾いてみてください。

円を感じてワルツを描こう

Hからは拍子が変わり、Tempo di Valseとなります。

ワルツというのは吹奏楽だとあまり馴染みがないかもしれませんが、一説によると19世紀初頭からオーストリアではじまった四分の三拍子の舞曲で、優雅さや優しさ、そして楽しさとさまざまな表情を持つのが特徴です。

かつて、世界中を夢中にさせたヨハン・シュトラウス1世はワルツの父と呼ばれ、その息子のヨハン・シュトラウス2世は今でもワルツ王の名で知られています。

そんなワルツで主導権を握るのはコントラバスをはじめとした1拍目を持つ楽器たちです。

メロディに身を委ねるときもありますが、はじまりを作るのはブンという1拍目の響き。

イチ・ニ・サンと拍がある1拍目に音を出し、円を描くような響きが2拍目へと音楽を運び3拍目には指を弦の上に置いて次の拍の頭に音を出す準備をしていきます。

63小節目は2拍目から上行する動きを持ちますが、ここもポジションの知識があればA(ラ)とD(レ)は隣同士にあることがわかるので、左手を移動させずに音をとることができます。

IからM、ラストまで

Iから再び拍子が変わり、前半に出てきた形と同じ動きでアップあらスタートする音形、78小節目の3拍目からの音は同じく隣同士にあります。

84小節目の動きはアップからはじめ、いくつかの考えがありますが2拍目のD(レ)はA線で小指(4)でとり次のCis(ド♯)は中指(2)次のD(レ)は開放弦にして、その間に左手を85小節目のEs(ミ♭)の位置へ移動させると弾きやすいかと思います。

86小節目はダウンではじまり途中で弓を返してもOK、以降は弓順です。

Mからの動きも弓順で104小節目は再びアップ、そのまま弓順で弾き、一番最後の小節はダウンで良い音を響かせおしまいです。

おわりに

今回は、明日のためのレッスンノート特別編!と題し、全日本吹奏楽コンクール課題曲コントラバスパートを徹底分析!課題曲 3.メルヘンの解説をしてきました。

文章だけで伝えられることには限界があるかもしれませんが、パートは自分一人だけ、周りにコントラバスを教えてくれる人がいないという環境下で練習に励む中高生の元へと届き、昨日よりちょっと知識の増えた明日を迎えるようなきっかけになれば嬉しいです。

コントラバスや課題曲に関する質問や相談は、ライン公式アカウント、井口コントラバスの公式インスタグラムの他、各SNSで何かしらの手段で連絡をいただけたらお返事を書いていきます。

次回!明日のためのレッスンノート特別編は全日本吹奏楽コンクール課題曲コントラバスパートを徹底分析!課題曲 3.メルヘンの解説をしていきます。

練習でヒントが欲しいと思ったときはお気軽に尋ねてきてください。

それでは、また!


コントラバス奏者・吹奏楽指導者・指揮者

井口信之輔

洗足学園音楽大学卒業

取手聖徳女子高校音楽科講師

📍主な活動

コントラバス奏者として演奏会への出演。指導者としては自身の主宰する教室から部活動、アマチュア楽団の指導。また、さまざまなコンセプトを掲げて活動するアマチュア楽団とタッグを組み、指揮者・音楽監督という視点から各地の音楽文化発展に努めています。

📍主な指導実績

2023年度

中学高校部活動:年間40団体
井口コントラバス教室(@iguchi_cb_class)

・指導実績

第1回中学生、高校生の為のコントラバス・ソロコンテスト

中学生部門:金賞 高校生部門:金賞、銀賞

第2回中学生、高校生の為のコントラバス・ソロコンテスト

中学生部門:金賞、銀賞 高校生部門:金賞

優秀指導者賞受賞

第3回中学生、高校生の為のコントラバス・ソロコンテスト

中学生部門:金賞・技能賞、銀賞 高校生部門:金賞、銀賞

優秀指導者賞受賞

全日本 中学生・高校生 管打楽器ソロコンテスト

金賞・地区代表

・合格実績

取手聖徳女子高等学校音楽科

埼玉県立松伏高校音楽科

フェリス女学院大学音楽学部

日本大学芸術学部

▼公演・出演のご相談、ご依頼はDMまたは公式ホームページよりお気軽にお問い合わせください。

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イグチシンノスケ

千葉県出身。 船橋市立葛飾中学校管弦楽部にてコントラバスと出会う。 千葉県立市川西高等学校吹奏楽部を経て洗足学園音楽大学へ入学。 2022年春学期東京音楽大学指揮研修講座修了。 在学中より「吹奏楽部におけるコントラバスの現状」に着目し、多くの講習会に講師として参加。大学卒業後はフリーランスのコントラバス奏者としてオーケストラ、吹奏楽、室内楽をはじめ楽器製作ワークショップやレコーディングなど多方面での演奏活動をする傍ら、吹奏楽指導者・アマチュアオーケストラのトレーナーとしても活動しており、中でも吹奏楽におけるコントラバスの指導に力を入れている。 これまでにコントラバスを寺田和正、菅野明彦、黒木岩寿各氏に師事。指揮法を川本統脩、三河正典各氏に師事。よこはま月曜吹奏楽団指揮者。初心者と子どものためのオーケストラpìccolo音楽監督。板橋区演奏家協会理事。取手聖徳女子高等学校音楽科非常勤講師。

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