日記

供給過多な音楽の世界で、音楽家が価格競争で消耗しないためにするには?

コントラバス奏者、吹奏楽指導者、指揮者の井口信之輔です。

コントラバスを弾いたり教えたり、高校音楽科で非常勤の講師をしたり各地のアマチュアオーケストラや吹奏楽団の指導をしています。

さて、今日は音楽の世界の需要と供給について考えてみたいと思います。

というのも、先日X(Twitter)で需要と供給のバランスが崩れた音楽の世界で起きてる価格崩壊の話というのを見かけ、考えていたことがあったのでブログにまとめてみています。

これ、僕らも他人事ではなく、やっぱり仕事をする上で向き合っていかないといけない問題だなと思いました。

仕事の数に対して音楽家の数が多すぎて、安い仕事でもどんどん引き受けるような形になって価格崩壊が起きているとか、価格競争に巻き込まれて消耗するといった流れは結構しんどいですよね。

なぜ供給過多になるのか?

まず、この辺りを考えてみようと思うのですが、よく言われるのが毎年たくさんの音大生が音大を卒業し社会に出ていくけれど、その人たちの受け皿となる場所や仕事の需要がないということ。

だけど、音大も経営維持のために生徒を多く迎え入れる必要があるというサイクルが何年も繰り返されているので需要と供給のバランスが完全に崩壊してしまっているため。

こんな感じだと僕は考えています。

要は仕事の数に対して音楽家の数が圧倒的に多いってところです。

需要と供給のバランスが崩れた世界

仕事の数に対して音楽家の数が圧倒的に多ければ、より仕事を求める人も増えるので多少ギャラが安くても仕事を受けてしまうっていうのはわからなくもないですが、これがどんどん広がって価格崩壊や価格競争が起きるとなると、そこに巻き込まれるのは精神的にもしんどいですよね。

せっかくこれまで長い年月をかけて演奏技術を身につけてきて、専門性の高い音楽という分野のスペシャリストになったのに、社会に出たら切磋琢磨するどころか生活にも直結する価格競争に巻き込まれる。

溜まったもんじゃないけれど、どう打開すれば良いか?ってところが考えるとこだと思います。

技術"だけ"を売るな、意味を売れ

僕が思うこの打開策はとってもシンプルで、技術"だけ"を売るな、意味を売れっていうところ。

たぶん、技術だけを売り続けてしまうと同業他者とのパイの奪い合いになってしまい、いずれは価格競争だったり価格崩壊に繋がったりする。

だとすると、けっこう消耗すると思うんですよね。

実力社会、競争社会であるから仕方がないところはあるけれど毎年たくさん音大生も社会に出ていくので、本来は歳を重ねるたびにキャリアアップして会社では役職なんかついていくようなイメージだけど、歳を重ねるたびに市場は若手に変わり仕事が減っていくような感じになると、かなりしんどい。

意味が売れたら価格競争から離脱できる

ここで押さえておきたいのが意味を売るってところで、これは何かというと「◯◯さんでないとダメ!」っていうような熱烈オファーのようなもので、演奏技術や指導力に付随する付加価値です。

これは学歴や受賞歴、肩書きよりも、人と人との付き合いや人情的な要素が強く、演奏や指導力など技術的と併せて提供できるものを持てる人になれると良いなというところです。

ざっくり言うと、飲んで語って思いを伝え気づいたらお互いwin-winになっているような感じ。

で、その人に来て欲しいという意味を提供できれば、それはお金には変えられない唯一無二のものなので価格競争から外れることができるというのが僕の考えです。

需要を掘り起こす

仕事の数に対して音楽家の数が圧倒的に多い、需要と供給のバランスが崩れた世界で思いつくもう一つの打開策が需要を掘り起こすということ。

だけど、この需要を掘り起こすという作業は何もないゼロにイチを足すというメチャクチャ大変な仕事になるので、多分これができる人はこの供給過多の世界でも生き残っていけるのかなと思います。

なので、需要を掘り起こすって視点も大切だけど、意味を売るって視点を持つことがより大事になってくると思います。

おわりに

先日X(Twitter)で需要と供給のバランスが崩れた音楽の世界で起きてる価格崩壊の話というのを見かけ、考えていたことを書いていきました。

技術"だけ"を売らず、意味を売るって視点はこの先ほんとうに大事だと思うんですね。

自分を呼んでくれた人に、演奏やレッスンだけでなくどんな意味を提供できるか?

技術と併せて意味を売り、パイの奪い合いから離れ価格競争を離脱する。

そうすれば、供給過多な音楽の世界で、音楽家が価格競争で消耗しなくて済むのかなと思います。

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イグチシンノスケ

千葉県出身。 船橋市立葛飾中学校管弦楽部にてコントラバスと出会う。 千葉県立市川西高等学校吹奏楽部を経て洗足学園音楽大学へ入学。 2022年春学期東京音楽大学指揮研修講座修了。 在学中より「吹奏楽部におけるコントラバスの現状」に着目し、多くの講習会に講師として参加。大学卒業後はフリーランスのコントラバス奏者としてオーケストラ、吹奏楽、室内楽をはじめ楽器製作ワークショップやレコーディングなど多方面での演奏活動をする傍ら、吹奏楽指導者・アマチュアオーケストラのトレーナーとしても活動しており、中でも吹奏楽におけるコントラバスの指導に力を入れている。 これまでにコントラバスを寺田和正、菅野明彦、黒木岩寿各氏に師事。指揮法を川本統脩、三河正典各氏に師事。よこはま月曜吹奏楽団指揮者。初心者と子どものためのオーケストラpìccolo音楽監督。板橋区演奏家協会理事。取手聖徳女子高等学校音楽科非常勤講師。

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