日記

高校の音楽科ってどんなところ?一年間、高校の音楽科でコントラバスの講師を務めて大きく変わった音楽科のイメージとその魅力

コントラバス奏者、吹奏楽指導者、指揮者の井口信之輔です。

コントラバスを弾いたり、教えたり、部活動からアマチュアオーケストラ・吹奏楽団の指揮や指導をしたり、SNSでは日常から好きなこと、フリーランスの音楽家のキャリア形成の話などいろいろなことを発信したりしています。

また、今年度から茨城県にある取手聖徳女子高校の音楽科でコントラバスの講師を務めています。

高校音楽科に勤める中で、音楽をより深く探求していく生徒たちと過ごす時間はとても充実したものでした。

また自分自身が感じてた音楽高校、高校の音楽科のイメージと実際に勤務して感じた印象に大きな違いがあったこと、そして一年を通して感じた高校の音楽科という場所の魅力を書いてみようと思います。

高校の音楽科ってどんなところ?

高校には、普通教育を主とする普通科、語学や農業・商業・看護・情報などの専門教育を行う専門学科、そして普通科と専門学科の両方をもつ総合学科があります。

高校の音楽科は、1週間の授業のうちの多くが音楽に関する授業となり、自身が演奏する楽器の実技にはじまり、音楽の基礎となるソルフェージュ、音楽理論や合唱、音楽史などを学びます。

特徴としては、授業の中に専攻楽器の個別指導が組まれており現役の音楽家によるマンツーマンの技術指導が受けられるところです。

いわゆるレッスンと呼ばれるもので、毎週決まった時間にマンツーマンの授業が展開されます。

また、一般的な筆記の定期テストの他、専攻楽器を演奏する実技試験があったり、音楽科の行事としての演奏会や卒業式、入学式での合唱など年間を通して多く音楽に触れる機会がとても多くなります。

取手聖徳女子高校の音楽科では個々のレベルに合わせたグレード別の授業を展開しているので、今の自分に合ったペースでスキルアップをすることができます。

勤務前と勤務後で変わった高校の音楽科に持つイメージ

高校の音楽科は、入学試験の際にも自分が専門的に学びたい楽器を演奏する実技試験があったり、学校説明会の中で希望者には音楽科の先生の技術指導(レッスン)が受けられる機会があったりします。

また、受験に向けて一般科目の勉強の他、楽器の練習も必要となりプロの音楽家の先生の元でレッスンを受けるなど音楽の道を志す人が目指す場所、そしていわゆる才能があるというか、幼少期から音楽教育を受けて将来は音楽大学に進学するような人が進むのが高校の音楽科だと思っていたことがありました。

音大生だった頃も、音楽科を出た人って何か特別な人のようなイメージがあったり勝手にすごい人という先入観を持っていたりしたことがありました。

しかし、実際に高校の音楽科で仕事をするようになりそのイメージは大きく変わりました。

高校の音楽科は、音楽が好きという想い持って入学してきてくれた生徒たちの気持ちに寄り添い、音楽に囲まれた環境を活かして一人一人の才能を大きく開花させる場所であり、その先にあるのが音楽大学への進学に向けたサポート、そして音楽を専門的に学んだ経験は多種多様な進路とキャリアの選択に繋がるというとを伝えていく場所でした。

とくに音楽科ならではのマンツーマンの技術指導(レッスン)や実技試験、そして学校行事としての演奏会を通して得られる経験は、実社会で大いに役に立つと感じることが教えていく中で多くありました。

マンツーマンの技術指導(レッスン)で身に付くこと

音楽を専門的に学ぶ音楽科ならではの授業といえば、現役の音楽家からマンツーマンで技術指導を受けるレッスンではないでしょうか。

いわゆる50分という授業を過ごすのはクラスメイトや友人ではなく、楽器の先生。

しかもマンツーマンです。

共通点として同じ楽器を演奏するというのがありますが、教室で大人とマンツーマンというのは最初は緊張すると思いますし、やはりコミュニケーションなしでは成り立ちません。

そうした環境の中で楽器の技術指導にはじまり、与えられた課題に対してアドバイスを受けて、会話をしていく中で身につくのがコミュニケーション能力と目上の人への接し方です。

僕は30代後半なので高校生との歳の差は20歳ほど。

もう少し年上の先生だと25歳、そして30歳それ以上と歳が離れています。

そうした歳の離れた大人とマンツーマンで過ごす中、取り組んでいる曲の解釈で意見を交換したり、次に取り組みたい曲や学校生活の相談を受けることもあります。

また、ときに音楽や楽器への取り組み方に関して叱られることもあるかもしれませんし、先生と意見がすれ違うこともあるかもしれません。

そうした時間を過ごす中で身に付くコミュニケーション能力は、実社会でも大いに役に立つと感じており、言われたことをやるだけでは成り立たない専攻実技のレッスンという授業は、楽器の技術の習得や取り組む作品の音楽的な解釈を学ぶ他、コミュニケーション能力を育てる場所でもあると考えます。

自身の成長と変化に気づく実技試験

授業の中で、現役の音楽家の先生から技術指導(レッスン)を受ける機会と併せ、音楽科には先生たちの前で演奏を披露する実技試験という項目があります。

いわゆる、普段の授業(レッスン)で取り組んでいる曲を実技試験で演奏し評価を受けるという形で、これは音楽大学でも同様のことが行われます。

音大を卒業した人ならわかると思いますが、この実技試験というのは異様に緊張します。

音楽大学では、実技試験が近づくと練習室は争奪戦になり朝から晩まで学校のいろいろな教室から音が聴こえます。自分の演奏を誰かに聴かれるということからか、異様にストイックになるのも音楽を専門に学ぶ学生の特徴ですが、この自分を追い込む期間は自分自身をメチャクチャ成長させます。

高校の音楽科も変わらず、やはり実技試験が近づくとより練習に熱が入ります。

ときに曲の難しさに挫折してしまうそうになることもありますが、練習室で自分自身と向かう中で感じる「さっきよりできた」という変化、気持ちに焦りが生まれ弾けていたところが弾けなくなってしまうという経験、そうした過程(プロセス)を経て実技試験の日を迎えた演奏後に感じる達成感や悔しさは人の心を大きく成長させると感じています。

舞台に立つことで育つ度胸や勇気

学校行事で演奏会があるのも音楽科の特徴の一つです。

実技試験同様に、人前に立ち何かを披露するというのは緊張が付きものですが、舞台で自分を表現するという経験を積むことで、自己表現の幅が広がっていくと考えています。

自らを表現するスキルは受験や就職活動における面接、自己PR、また会社でのプレゼンの機会などさまざまな場面に活かすことができるでしょう。

また、人前に立ち演奏、歌など自らの音楽を披露する機会というのは日頃の成果の発表の場でもあり、併せて緊張や内面的な感情の変化と向き合いながら、挑戦する勇気と度胸を身につける機会だと考えます。

いつだって何かに挑戦するときは怖いですが「あのとき◯◯ができたから、きっといける」

未来の自分の背中を押してくれるような機会になったら嬉しいなと思います。

音楽を通し実社会でも役立つスキルを育てる

高校の音楽科という場所で1年間コントラバスのレッスンを担当したり、実技試験や学内コンサートの講評を書くようなポジションから生徒たちの様子を見ていく中で、音楽科という音楽に囲まれた環境は捉え方次第で上記のように活かすことができると感じました。

上にも書いたように、音楽科って将来はプロになることを目指す人や音大に進む人が集まるような場所だと思っていたという過去の自分の思考が、一年を通してさまざまな経験をすることで、音楽科は音楽が好きという想い持って入学してきてくれた生徒たちの気持ちに寄り添い、音楽に囲まれた環境を活かして一人一人の才能を大きく開花させる場所であること。

そして、その先にあるのが音楽大学への進学に向けたサポート、そして音楽を専門的に学んだ経験は多種多様な進路とキャリアの選択に繋がるというとを伝えていく場所であると変わりました。

音楽科を出て音大に行かないのはもったいない?

この時期、吹奏楽部で楽器を続ける、続けないという話が出るように「音楽科を卒業して音大に行かないのはもったいない?」ということを聞いたことがありました。

高校の音楽科は音楽が好きという想い持って入学してきてくれた生徒たちの気持ちに寄り添い、音楽に囲まれた環境を活かして一人一人の才能を大きく開花させる場所であること。

という考えがあると出てくる答えは想像できますが、結論もったいないということはありません。

むしろ、3年間音楽に囲まれた環境で身につけたことを進学先で活かせば良いと思いますし、これから足し算で積み重ねていく分野に音楽というこれまで培ってきたスキルを掛け算することで、自身の可能性を大きく広げることができると考えます。

フリーランスの音楽であれば、スキルの掛け算ですね。

教える側としては、自らが選んだ進路に音楽経験を掛け合わせる、音楽を通して学んだスキルを転用するといった視点を持ち、夢や目標を叶えていってくれたらと思います。

音楽科を覗いてみよう

このブログは吹奏楽部をはじめとした音楽系部活動で活動している中高生の読者が多いので、もし少しでも高校の音楽科に興味があったら一度学校説明会に参加してみることをおすすめします。

実際、受験にはどれくらい楽器が演奏できれば良いのかを詳しく知ることができるほか、レッスンを体験する機会があれば音楽科で教えている先生から技術指導を受けることもできます。

取手聖徳女子高校ではレッスンシリーズという音楽科の先生のレッスンを受けることができる機会を年間通して設けているので、ぜひ興味のある方は参加してみてください。

おわりに

今回は、高校の音楽科でコントラバスの講師を務めるようになって感じた音楽科のイメージと魅力というテーマで高校の音楽科という環境について書いてきました。

高校の音楽科って調べてもあまり情報が出てこないこともあるので、受験で高校の音楽科に興味あったり、高校では大好きな音楽をより深く学んでみたい、また将来はプロの音楽家になりたくて高校は音楽科を目指すという人など、進路で高校の音楽科を考えている人に音楽科ってこんなことが学べるんだって知ってもらえたら嬉しく思います。

また来年度も、より充実した学校生活になるようコントラバス奏者、吹奏楽指導者、指揮者とさまざまなポジションから音楽に関わる一人の先生として、音楽教育に力を入れていきたいと思います。

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イグチシンノスケ

千葉県出身。 船橋市立葛飾中学校管弦楽部にてコントラバスと出会う。 千葉県立市川西高等学校吹奏楽部を経て洗足学園音楽大学へ入学。 2022年春学期東京音楽大学指揮研修講座修了。 在学中より「吹奏楽部におけるコントラバスの現状」に着目し、多くの講習会に講師として参加。大学卒業後はフリーランスのコントラバス奏者としてオーケストラ、吹奏楽、室内楽をはじめ楽器製作ワークショップやレコーディングなど多方面での演奏活動をする傍ら、吹奏楽指導者・アマチュアオーケストラのトレーナーとしても活動しており、中でも吹奏楽におけるコントラバスの指導に力を入れている。 これまでにコントラバスを寺田和正、菅野明彦、黒木岩寿各氏に師事。指揮法を川本統脩、三河正典各氏に師事。よこはま月曜吹奏楽団指揮者。初心者と子どものためのオーケストラpìccolo音楽監督。板橋区演奏家協会理事。取手聖徳女子高等学校音楽科非常勤講師。

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