キャリア 人生設計

フリーランスの音楽家(38歳)が、教員免許取得に向けて通信制大学に通って1年経った話。仕事と学業の両立、学費、教員免許取得までの道のりなど実際どうだったのか。

コントラバス奏者、吹奏楽指導者、指揮者の井口信之輔です。

コントラバスを弾いたり教えたり、吹奏楽部やアマチュアオーケストラの指揮・指導をしたり、高校音楽科でコントラバスの講師をしたりしています。noteでは、SNS発信10周年を記念して、音楽で食べていくことに特化したマガジンをスタートさせました。ぜひ、読みにきていただけたら嬉しいです。

昨年の4月、教員免許の取得に向けて通信制の大学に入学しました。

大阪芸術大学通信教育部3年次に編入という形で、実に15年ぶり2回目の大学生です。

そして、大学生になって1年目の年度が終了したので、この1年間を振替ってみようと思います。

大学生になった理由とか諸々

大学に入学した目的は、上に書いたように教員免許の取得です。
そして、教員免許の取得を目指す理由は、過去の後悔にしっかり終止符を打っておくこと、そしてキャリアのさらなる展開のためです。

教員免許を取得しなかったのは、20代の学生の頃は学校の先生になるという進路、そして選択肢が自分になかったこと。演奏で、音楽で食べていくのに教員免許は必要ない、つまり教職課程を履修する必要はないと考えていたことにあります。

当時から「教職は取っておいた方が良い」という声は聞いていましたが、自分には必要ないと思っていた過去があったのは紛れもない事実ですね。恥ずかしながら、だいぶ狭い視野で生きていたと思います。

そして、これまで何度も「教員免許取っておけばよかった」と思う場面があったのも事実。そして、大学を卒業し自分がこれだけ教育現場や部活動、また先生として誰かに音楽を教えるポジションに関わるとは思っていなかったので、やっぱり将来ってどうなるかわかりませんね。

こんな感じで「やっぱり教員免許とっておけば良かったな」と思うことがあったので「だったらもう取っちゃえば良くね?」と思い、そのまま結構な軽いノリと勢いで教員免許を取得できる学校を調べ資料請求をし入学相談を受け、そこから先はちょっと考えて願書を出して受験してきました。

多分、考え始めると「でも」とか「だって」が出てくると思うので入学相談までは早急に済ませる。これは良かったなと思います。実際、入学相談をする中で、自分はどのくらいの期間で教員免許を取得できるのか?また学費はどれくらいかかり、どの程度のお金が必要なのかもわかってきます。

いわゆるノリと勢いで行ける部分、しっかり考えて動かないとダメな部分の境目がこの辺りでした。

金額はざっくりですが2年で100万円ほどあれば最低限大丈夫そう。通信制の大学は、いわゆる学費の他に大学へ行って授業を受けるスクーリングがあり、遠方の場合は交通費や宿泊代が発生するので多めに見積もっておいた方が良い感じです。学費が安いのが最大のメリットですが、その他にかかる費用をしっかり調べておくのが大事だなと思いました。

返済不要の奨学金も調べましたが、所得制限に引っかかってしまい対象外。個人事業主としては嬉しい反面、学生としてはぴえんです。

とはいえ、毎月の家賃や光熱費、音大4年間で借りてた奨学金の返済もあって年金に税金にと生きていくだけで多額のお金がかかるのに、最低100万円という金額は簡単に出せる額ではありません。でも、自分に100万円を投資し何年で回収できるか?を考えたところ、多分2年あればいけると思い(直感)だったらやっぱり行くなら今だと出願をしました。

入学してみてどうだった?

合格通知が届き、大学生になったんだという実感と学生証を使って飲食店で学割サービスを受けている自分を想像しました。30代後半の社会人がラーメン屋で学生証出して学割で大盛りサービスを受ける。100円払えばいいじゃんダサいなと思いつつ、話のネタになると思うとやっちゃいますね。入学後は、たくさん書類が届き通信制大学のシステムや授業の受け方、課題の提出の仕方などのガイダンスを受けます。

これらが全て書面、オンラインで完結するのが通信制大学なのですが、これは便利そうに見えて全ての情報は置いてあるので自らアクションを起こして情報を取りに行かないと見落とす確率がかなり高いです。忘れてた、見落としてたは通用しないので、自分から情報を取りに行くことの大切さを感じました。

実際、授業の履修登録とは別に行われる教職課程の履修登録は苦労しました。また、履修登録をしたはずなのに全然反映されていなかったり、情報の行き違いなんかもあって「もし、自分から問い合わせてなかったら」とヒヤッとする場面はありました。

どちらが悪いかではなく、全て書面やオンラインでやりとりする上でのデメリットだと思います。

通信制大学の授業

履修登録が終わるといよいよ授業がはじまります。僕は当初、動画や聴くスタイルの講義があってそれらを視聴しレポートを書くような印象でしたが、授業のスタイルは全く違うものでした。大学から発行されるシラバスと学習指導書を参考に、選択した授業の教科書を自分で購入し指導書に沿って学習を進め、課題を提出するという流れ。

なので、学習も自ら始めないと一向にスタートしません。

最初は、勢いで学習が進むも仕事が忙しくなると優先順位が仕事になったり、課題の提出方法やレポートの範囲を見間違えるなど今の学習ペースを掴むのに半年かかりました。ここは個人差があると思います。

仕事と学業の両立できた?

結論から言うと、できました。でも、時間はかかりました。まず、自分は仕事に絶対穴を開けたくなかったので仕事優先でした。そして、幸いにも音楽大学を卒業しているので、在学中に取得した単位は引き継がれ授業としてはほとんど教職課程のみの履修となります。

まず、勉強時間を作ることに一番苦労しました。僕の場合、朝は早くに家を出て帰宅は21時ごろという生活の中、教科書を一から読んで範囲の全てを順番に勉強していました。参考書を片手にノートを取り、まとめ終わったら次。

これでは相当の時間がかかってしまいます。実際、4月に入学して前期が終わるまでに提出できた課題は1つでした。

課題の範囲を見落とし、文字数が2万文字を超えるレポートを提出してしまい長すぎるというコメントと同時に再提出になるようなこともありました。そんな失敗を経て、後期には少しずつ学習の仕方を考えるようになり、レポートのまとめ方もわかってきて、合計で12の課題を提出することができました。

先日、最終課題と試験の結果も出て1年目で取得できた単位は2科目とかなり少ないですが、教職課程の半分の科目で課題を全て終わらせ、あとは試験または最終課題で教育実習の許可が降りるところまで進みました。

一応、参考書を紛失し試験が受けられなかった科目を除き計画通り1年目を終わらせることができ、ホッとしています。

スクーリングについて

通信制大学の特徴だと思いますが、実技・実習系の授業に関しては大学に授業を受けにいきます。スクーリングや面接といった言葉が使われますが、指定された日数を通わなければならないため、社会人にとって一番大変なのはスクーリングの日程調整だと思います。

僕はここで一番苦労しました。

だいたい、1つの科目で2日あるいは3日通います。場所は大阪と、科目によっては東京でも開催されるので関東在住としてはありがたいですが、どうしても都合がつかず2泊3日で大阪まで授業を受けに行きました。授業は1限から5限までフルで入っていたので、前日から大阪に行く必要があります。なので3泊4日分の交通費、宿泊費や食事代を用意して行くような感じです。

その人のワークスタイルにもよりますが、僕の場合は平日にリハーサルやレッスン、休日は本番というサイクルなため、昨年は1科目しかスクーリングには通えませんでした。来年はここが多くなる見込みです。音楽との両立をしている人は、リハーサルや合わせの日程などを先方に調整してもらう可能性も視野に入れておくと良いと思います。僕も大阪スクーリングで練習日を動かしてもらったことがありました(ありがとうございました!)

仕事と学業の両立は「優先順位」と「重要度」で考える

今年、一番大きな学びだったのは勉強の進め方です。最初は学習指導書にある学習計画の順にノートを取り、まとめたら次という形で進んで行きました。それだと学習が全然進まないことに気づき、後期は学習指導書全体を見渡し、科目の課題となっている範囲を最優先にいきなり参考書を読みながらレポートを書き、考えをまとめ、そこから学習範囲を関連事項へと広げていきました。

移動時間、スキマ時間に短時間学習を積み重ねることで確実に課題を進められるようになったことは良い経験でした。また、どう足掻いても課題提出前は結局レポートに追われるようです。

今年は年明けから大阪、そして福岡への演奏旅行があったのですが楽屋、移動中の新幹線、滞在中のホテルとずっと参考書を片手にメモを取ったり、パソコン開いてレポートを書いていました。

僕のレポートの平均文字数は2000文字程度で課題に対して少し多い感じ。最終課題は4000文字くらいの指定があったりします。書き方も、考えをまとめるのか論述するのかで変わってきますが、この辺りはSNSでの発信を10年やってた経験が生きました。

この先、大変だと思うのは通信授業試験という、いわゆる問いに対する回答(レポート)を用意していくスタイルの試験です。なので、問題の数は多くないですが頭に自分の言葉で問いに関する意見がないと何も書けないということになります。

社会人学生を一年やってみて、どうだったか?

前期は大変、後期はめちゃくちゃ楽しかったです。大変だった理由は紛れもなく、今のスケジュールに新しい習慣を取り入れることで慣らし運転の時間が必要だったことでした。でも、学生という時間がライフスタイルに馴染んでくると、スクーリングをはじめ授業の中で得ることが仕事にプラスになることも多々あって充実した一年を過ごせました。

特に、スクーリングで出会った人と過ごした時間や、模擬授業でいただいた感想、先生から授業を受けるという体験、また課題に対するコメントや再提出になって考えさせられる自分の実力など、本当に数え切れないほど多くのことを学べた一年でした。

一つ、これは反省材料だと思っていることは授業料を払って教職以外の科目をほとんど履修してなかったことです。つまり年間20万円ほど払ってほとんど授業は取らず、教職課程(別にお金が必要)を学習に専念していたこと。ここだけ切り取ると、大金を無駄にしていますが、学生であり続けるには授業料の納入は必要で、今の自分の優先順位を考えると教職課程の履修が最優先なので、ここの部分は残りの在学期間でしっかり回収します。

目標だった2年で取得を3年に伸ばしたこと

前期を終え、仕事と学業の両立ができてきた頃、当初の目標だった2年で教員免許取得を3年に伸ばしました。理由は教職課程の履修登録が夏で、その時点で併せて教育実習の内諾も得る必要があり、実質半年で教育実習までに必要な科目の単位を取らなければならないことを知ったことで、内諾を得て辞退するというのは避けたかったので、ここは無理せず期間を伸ばし2年(実質1年半)で教育実習までの単位を取得、そして3年目に実習という流れにしました。

この辺りが入学してから知る部分で、その分は新たに学費もかかりますがしっかり勉強していこうと思います。

2年目に向けて

今のうちに残りのレポート課題を進め、新年度になったら一番時間がかかりそうな通信授業試験をどんどん受けていこうと思います。夏には教育実習を受けられる前提まで持っていくのが目標です。秋はどこかの施設に介護実習行ってきます。

教員免許取得後のこと

これ、一番聞かれるのでよく発信していますが、教員採用試験合格を目指すのではなく、キャリアの選択肢を増やすために教員免許を取得するというところがゴールです。

今、自分の持ってるスキル

  • コントラバスの演奏・指導

  • 吹奏楽指導(合奏・セクション・パート)

  • 指揮(オーケストラ・吹奏楽)

  • 合奏指導(アマチュア楽団から部活動まで)

  • 音楽大学で学んできた知識(音楽史、楽典など)

を掛け合わせて、教育現場にもキャリアを広げていきたいと考えています。

実際、必要な手続きを取って仕事をさせていただいてるところもありますが、コントラバスを演奏すること以外に教えること、つまり指導者としての仕事にやりがいを感じ、自分のこの先のキャリアを考えたら、ここは目指していきたいなと思う部分です。

とはいえ、実際に教員免許が取得できたところで自分を必要としてくれている場所があるかはわかりません。

でも、描いている未来に向けて歩んでいく中で、きっと何か良い形を見つけられるんじゃないかと思っています。

長くなりましたが、フリーランスの音楽家(38歳)が、教員免許取得に向けて通信制大学に通って1年経った結果を振り返ってみました!

2年目も頑張っていきます!

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イグチシンノスケ

千葉県出身。 船橋市立葛飾中学校管弦楽部にてコントラバスと出会う。 千葉県立市川西高等学校吹奏楽部を経て洗足学園音楽大学へ入学。 2022年春学期東京音楽大学指揮研修講座修了。 在学中より「吹奏楽部におけるコントラバスの現状」に着目し、多くの講習会に講師として参加。大学卒業後はフリーランスのコントラバス奏者としてオーケストラ、吹奏楽、室内楽をはじめ楽器製作ワークショップやレコーディングなど多方面での演奏活動をする傍ら、吹奏楽指導者・アマチュアオーケストラのトレーナーとしても活動しており、中でも吹奏楽におけるコントラバスの指導に力を入れている。 これまでにコントラバスを寺田和正、菅野明彦、黒木岩寿各氏に師事。指揮法を川本統脩、三河正典各氏に師事。よこはま月曜吹奏楽団指揮者。初心者と子どものためのオーケストラpìccolo音楽監督。板橋区演奏家協会理事。取手聖徳女子高等学校音楽科非常勤講師。

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