吹奏楽におけるコントラバスへの理解と発展を願って毎週更新、明日のためのレッスンノート。
先週から、2021年度全日本吹奏楽コンクール課題曲コントラバスパートの徹底分析をはじめ今回は課題曲4吹奏楽のための「エール・マーチ」のコントラバスパートを解説していきます。
これまでのように、パートは自分一人だけ、周りにコントラバスを教えてくれる人がいないという人に向けて課題曲の練習ポイントを書いていくので、練習の参考にしていただけたら嬉しいです。
何かわからないことがあれば、気軽に質問してくださいね。
課題曲Ⅳ 吹奏楽のための「エール・マーチ」
この曲を取り組む前に知っておきたいメモ
- コントラバスの最高音はG線のEs(第3と第4の中間ポジション)
- ポジションの音列、とくに横の関係を知る
- マーチでよく使うボウイングテクニック「アップ→アップ」の練習に挑戦
課題曲1番に対して課題曲4番はマーチの歩みが四分音符で書かれています。
音の長さの分だけ音を出すのではなく、この曲の四分音符はどのくらいの長さなのかを考えてみると、良いマーチの伴奏が弾けるかなと思います。
マーチの伴奏を弾くコツは「その伴奏で歩けるか?」です。
ここを押さえて、今回は課題曲4番を勉強していきましょう。
冒頭〜Cまで
まず冒頭のシ♭(B)の音はダウンで元気よくスタート!
3小節目の2拍目でいきなりこの曲の最高音のミ♭(Es)が出てくるけれど、ここは音程を合わせていくのが難しいところ。
まず、僕から質問が2つあって
- G線のEsの音の場所がすぐにわかるか
- 第3と第4の中間ポジションを理解しているか
と問いかけてみたら、すぐに答えられますか?
まずはここを押さえておきたくて、すぐに答えが出る人はOK。
もしわからなくても、これから解説することを読めば解決の糸口が見えてくると思うから一緒に考えてみよう。
音と音の「間」を練習するのがポイント
まず、3小節目の1拍目に四分休符がある。
この休符の時間をフェルマータみたいに長くして、ミ♭(Es)の音の場所に指を持っていく練習をする。
すぐにミ♭(Es)の音に行かずに、音に行くまでの過程を練習する。
- シ♭(B)→ミ♭(Es)の間に音はいくつある?
- ミ♭(Es)を押さえる指はどの指?
- ミ♭(Es)を押さえているとき、1の指はどの音のところにある?
こうした細かい部分を頭で理解することがとても大切で、その部分をゆっくりから練習する。
僕のレッスンで3小節目の跳躍が上手くいかないとしたら、四分音符=30のテンポで練習します。
四分音符だとカウントしにくいから、八分音符=60でやってみよう。
このテンポで、かつ3小節目の休符はもっと時間を取る。
身体の動きを理解する
ゆっくり練習するときに押さえておきたいのが、身体の動きを理解すること。
なので、音は出さない。
音から音に行くまでの間の身体の動きを理解してもらって、ミ♭(Es)の音を左手が押さえて(まだ弾かない)右手が移弦して(まだ音出しちゃダメだよ)ここは(ダウン)で弾き直すから、弓の元の方で毛が弦を捉えたら(もうちょっと我慢)ここで初めて音を出す。
こうして書くと、とっても細かいように思うけど大切なのは要素分解していくこと。
そして、音と音の間をどう身体が移動しているかを覚えたらテンポを戻していく。
ここで15分くらい時間を使えば、あとはもう弾けちゃうはず。
4小節目はG線で縦に移動するか、2拍目からD線に移動するかみんなはどう弾く?
マーチの歩みは四分音符
課題曲1番のマーチは八分音符で書かれていたけど今回は四分音符で書かれてる。
だからと言って、四分音符の長さで弾いてしまうと、いわゆる重くなるという現象が起こるはず。
マーチを弾くコツは、その伴奏で歩けるか?というところ。
どんな音形だったら歩きやすいかな?この辺りを考えてみるといいかもしれないね。
音の長さに正しい答えはないので、一緒に演奏する低音セクションで合わせていこう。
僕たちはファゴットと一緒に新たに「B」から入るから、少しだけ大きく弾いてみてもいいかもしれない。僕だったら「コンバス入るぜ!」ってちょっと大きめに弾いちゃうかも。
付点は言葉に線を引く
33小節目に出てくる付点のリズム。
ここが少し厄介で(ダウン)を使い過ぎてしまうと十六分音符が弾きにくい。
いわゆる「十六分の食いつきをハッキリ!」というやつで、この場合は八分音符と十六分音符の間に小さく線を弾いてみるといい。
すると
- ファーファ ドラ ファ
という音形が
- ファー、ファド ラファ
となる。
言葉で書くとわかりにくいかもしれないけどこんな感じ。
吹奏楽のマーチでよく使う「アップ→アップ」を覚えよう
36小節目からはボウイングの考え方がいくつかあって、僕は弓順で弾く。
そして39小節目は2拍目の八分音符を(アップ→アップ)で弾く。
人によっては36小節目からの八分音符を(アップ→アップ)で弾くスタイルも多いと思うし、吹奏楽のマーチでこうした形が出てきたときはこの(アップ)を2回使う奏法を覚えておくといい。
また36小節目はレ(D)を4で押さえて、次の音(ラ→ソ)は隣の弦に移れば同じポジションで取れる。そのまま次のファ♯(Fis)はD線のまま移動して4で取ればOK。
こうした場面でポジションの理解度が重要になってくるわけだ。
C〜Hまで
いつもは基本的に伴奏をしているけれど、第二マーチの主役は僕たち。
ここでも付点のリズム前後でボウイングの工夫が必要で、きっと人によって弾き方も変わってくる部分だから、僕の弾き方を解説するね。
まず「C」は弓順、45小節目の2拍目と47,48小節目の1拍目は(ダウン→ダウン)にしてみた。
その前後は弓順で弾いて、ここでもポジションの音の並び、とくに横の関係を知っていくと楽。
でも、これは今の時点でのボウイングだからまたレッスンやこの曲を練習していく中で「やっぱりこっちの方がよくね?」ってなることも大いにある。
だから、僕を含めてネットで手に入れられる情報はあくまで参考程度にしておくのがおすすめ。
「E」からのテーマもボウイングに関しては同じで、67小節目からはどうしようかな。
67は(ダウン→ダウン)で68はアップ、以降は弓順でも良いし67を弓順で弾いて68を(ダウン)69をまた(ダウン)から弾き直すのもあり。
「H」の前でまた最高音が出てくるけど、ここは(アップ)でミ♭(Es)を弾いて左手は縦で進むか横で進むかはおまかせ。
そしてちょっと一休み。
I 〜ラスト
まず(アップ)でスタートして気をつけておきたいのが「I」の2小節目にあたる136のソ(G)
ここを勢いよく、とくに開放弦で勢いよく弾いてしまうとその音だけ極端に大きくなってしまうからしっかりと、自分が弾いた音を耳で確かめよう。
開放弦は押さえて弾いている音よりも音色が「◯◯」で広がりやすい。
なぜ「◯◯」なのかは、楽器によって鳴り方の違いがあるから。
僕の楽器は開放弦、とくにD線は鳴りやすくG線は少し固い音がする。
この特徴を覚えておくとアンサンブルコンテストとか小編成のアンサンブルでも役に立つ。
あとはこれまで解説したところと同じで「J」からの八分音符の並びは(アップ→アップ)にチャレンジしてみるとスムーズ。
「L」の1小節前を(アップ)で入って「L」は(ダウン)、タイで繋がる二分音符は途中で切らなくても大丈夫そう。
終わり4小節前は(アップ)で入って下行音形、最後は三連符をしっかり弾いて終止。
課題曲4番の練習ポイントはこんな感じ。
おまけの雑談
エール・マーチをはじめて聴いたとき、裏打ちがないスタイルだなってところに気がつきました。
裏打ちのないマーチと言えばヤン・ヴァン=デル・ローストの「アルセナール」という作品があって、この曲がとてもかっこいいのでぜひ聴いてみてください。
エール・マーチの伴奏を作る参考になるかもしれません。
そして!アルセナールのことを書いたので、ローストの作品をもう少し紹介してみると、世界史の授業でも習うかもしれない「スパルタクスの反乱」を描いた交響詩「スパルタクス」という曲は、約20分くらいの曲で、中間部分の美しい場面ではコントラバスのpizzがとても良い雰囲気を作ります。
それから、吹奏楽のための交響曲「シンフォニア・ハンガリカ」って曲があってこれはハンガリー建国の歴史に登場する3人の人物を描いた作品。
とくにおすすめは第一楽章で「フン族の王アッティラ」をテーマとても野蛮で攻撃的で、荒々しい性格を描いた音楽なんだけど、もう最高にかっこいい。
Apple Musicにもある、ヤン・ヴァン=デル・ロースト指揮フィルハーモニック・ウインズ大阪の演奏が名演だから聴いてみてください(マジでおすすめ)
こうやって、課題曲だけを解説するだけではなく、そこから派生していろいろな吹奏楽作品を紹介しても面白いかもしれないと思いました。
さあ、次はいよいよ課題曲Ⅴの紹介です。
次回もどうぞお楽しみに!
この課題曲を徹底分析シリーズが、どこかで悩む誰かの練習の役に立ちますように。
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