コントラバス奏者、吹奏楽指導者、そして指揮者の井口信之輔です。
コントラバス奏者としての活動を軸に、その経験を指導者としての活動に還元し昨年は中学高校40校、アマチュアオーケストラ、吹奏楽団7団体の音楽指導に関わってきました。
さて、今年も全日本吹奏楽コンクールの課題曲が発表されました。
最近では課題曲を取り上げたコンサートも各地で開かれ、少しずつ熱い夏、そして吹奏楽コンクールに向けた日々がはじまろうとしているように思います。
これまで僕のブログでは吹奏楽コンクール課題曲ワンポイントアドバイスというものを書いてきました。パートは自分一人だけ、周りにコントラバスを教えてくれる人がいない、そんなどこかで悩む誰かのために、日々の練習が少しでも充実したものになればと筆をとっています。
今年は少し早めに、各課題曲の練習のヒント、練習に役立つブログでレッスンをはじめます。
ぜひ、練習の参考にお役立てください!
それでは!2023年度全日本吹奏楽コンクール課題曲の世界へ、いってらっしゃい!
課題曲⒈行進曲「煌めきの朝」
まずは課題曲1番の行進曲「煌めきの朝」
この曲を書いたのは現役の高校生で解説を読んでみると通学路から着想を得て誕生したようです。
素敵な感性を持ってるなあと思いつつ、自分が現役の高校生だった頃を思い出すとマーラーの交響曲第1番「巨人」の第4楽章を聴きながら登校するのが楽しみでした。
自転車で約20分だったので、4楽章を全部聴き終わる頃に学校に着く。
となると、うまいこと計算をして最後の「ジャンジャン!(レ↑レ↓!)」というところで正門をピシッと通過できるかどうか、これが通学の楽しみでした。
というところで話を戻して課題曲1番のワンポイントアドバイス行ってみましょう。
コントラバスの最高音は何の音?
行進曲「煌めきの朝」この曲の最高音、つまり一番高い音はどこだ?
まずは曲の中で一番高い音を探してみると108小節目にあるミのフラットの音。
ドイツ音名でいうEs(E♭)の音になる。
吹奏楽部のレッスンに行くと多くの確率で高い音が苦手という声を聞くけれど、実はコントラバスは高い音の方がやさしかったりする。
それはなぜか?
ここでは少しだけ紐解きながら、まずはここまでで押さえておきたいことを書いてみるとこう。
最高音の音を押さえるために知っておきたいこと
まず押さえておきたいのはミのフラット、つまりEs(E♭)の音がどこにあるか?ということ。
ここで必要になってくるのが
- 弦を押さえる左手の形
- コントラバスの運指表に基づいたポジションの理解
この二つ。
で、この音はどこにあるかというと、第3と第4の中間ポジションという場所にある。
ここで頭の中にハテナが浮かんだ人、疑問に感じた人はどの教則本でも良いのでコントラバスの運指表に基づいたポジションを理解するとこからはじめてみよう。
そして、実際に音を出しながらポジションの位置を確認してみる。
頭の中でイメージしてみてもいい、見つかった?
きっとキツネの手遊びのような形をした左手で弦を押さえ、人差し指はG線のレのフラット(D♭)中指はレ(D)そして小指はミのフラットの音(E♭)の位置にあるはず。
ここが第3と第4の中間ポジションで、小指で押さえている音がこの曲の最高音。
高い音がやさしい理由はここだ!
ちなみに今の左手の形、B-durのスケールを弾いているときよりも指同士の幅が狭くなっているはずなんだけど、どうだろう。
高い音がやさしいという理由はここにあって、弦楽器は音が高くなると各指の幅が狭くなり弦も押さえやすくなるので、実は位置さえ理解すれば低い音よりも押さえやすく音程が取りやすい。
ただし、これは弦を押さえる左手の形を習得した上での話だから、もし弦をぎゅっと握ってしまっている人がいたら、まずは左手の形から見直してみるといいかもしれない。
練習のポイントはここ!
行進曲「煌めきの朝」、この曲の練習ポイントは
- ボウイングの工夫
- フィンガリング(指使い)の工夫
この二つ。
もう少し詳しくみていくと、ボウイングの工夫というのはダウンで弾いた後、もう一度ダウンで弾く弾き方だったり、弓のどのあたりで音を出せば良いかという話。
フィンガリング(指使い)の工夫は主に後半、音が跳躍するとき、細かい動きのときにどんな工夫をすれば弾きやすいか良いかを考えること。
この二つを押さえておくといいというところまでを共有して、さっそく曲を見ていきましょう。
冒頭からAまでのボウイング
冒頭のC(ド)をダウンで弾いてはじまって4小節目の弾き方次第で次からの音の弾きやすさが変わると思うんだけれども、ここはどう弾く?
例えば弓順で弾いてみると5小節目の二分音符がアップになる。
もし4小節目を弓の元の方で弾いてたら、このアップは少し弓が足りなくなるかもしれないから工夫が必要かもしれない。
となると、どうする?
最初のヒントは4小節目をダウンーアップ・ダウンーアップーダウンで弾いて、次の5小節目をまたダウンで弾き直す。7小節目がダウンーダウンとなり他は弓順。
もう一つのヒントは4小節目を弓順、そして5小節目はダウンではなくアップで入り、以降は弓順。この場合、4小節目を弓の元で弾きすぎてしまうと次の二分音符の弓が足りなくなるので、真ん中より少し手前あたりで弾くと、八分音符で転ぶことなく次のアップも弓を使うことができる。
9小節目からは弓順でもOKで、10、12、13小節目はダウンーダウンもあり。
ボウイングに正しい答え、正解はないのであとは好みで考えてみる。
第二マーチをうまく弾く秘訣は◯◯で弾く!?
今風っぽい、なんかYouTubeのサムネっぽいタイトルが思いついたので書いてみたけど、第二マーチをうまく弾くコツは弓順で弾くことで、特に難しい弓使いをする必要はなし。
Cの1小節前の八分音符が1対3の比率になっている意味を考えて、どこからが低音主役のメロディなのかを理解すること、そしてあとは元気よく行ってらっしゃい!
少しだけ専門的な話をしてみる
次に注目するのはEの後でここは弓順でOK。
その後に出てくるFは冒頭と同じだから87小節目まで同じ弓の使い方ということにしておいて、次の小節をどう弾く?
ここはいろんなパターンが考えられるんだけれども、例えばこんなボウイングもあり。
ちょっと専門的なボウイングテクニック
87小節目をダウンーダウンで弾いたら、次の小節はアップからの弓順になるのが普通なんだけど、そのまま行くと89小節目が弾きにくい。
ここはダウンで付点、少し早く終えてまたダウンで十六分音符の頭を弾けば良いけれど、クレッシェンドもあるのでもう一工夫しても良いかもしれない。
となると88小節目のソソファをアップーダウンーダウンで弾いてみる。
ここでダウンが2回?と思うかもしれないけれど、1拍目裏のソをアップで弾いて、次のソファという音形はG線からD線と自分の手前に動くので、ここをダウンーダウンにしてみる。
すると、次の小節のクレッシェンドの入り口がアップとなり、弓先から弓元に進むエネルギーでクレッシェンドが生まれ、弓元で細かい十六分音符を弾くことができる。
次の小節のシンコペーションは弓順でも、後をアップーアップにしてもOK。
後をアップ2回にすれば、次の小節のアクセントをダウンで弾くことができる。
こんな工夫をしてみると良いかもしれないし、他のボウイングを探してみても良し。
とにかく正しい答えはないので色々トライしてみよう!
最高に良い音で響かせたいピッチカート
Gからのトリオの1拍目の頭に音がある楽器を見てみると
- クラリネット
- バスクラリネット
- チューバ
- コントラバス
のみ。
打楽器は裏拍から、そしてホルンは低音の四分音符の後に裏うちで入る。
コントラバスはpizzの指示が書かれており、mpの指示があるけど少しだけ大きめに響きを作ると良いかもしれない、そしてこの音の次にどの楽器がどんな和音を重ねるかスコアを開いて探してみよう。とっても大切なハーモニーが生まれるはず。
高い音への移動のコツ
108小節目で出てきたのがこの曲の中で一番高い音。
この音に移動するのが難しいところで、とくに初心者の人たちは、◯◯の未知なるポジションへの挑戦といったところで、この◯◯に自分の名前を入れてみる。四文字だと語呂が良い。
107小節目のEs(ミ♭)B♭(シ♭)をどう押さえたら良いかってところがヒント。
ここでは三つのパターンを考えてみて(数字は指番号)
- G線で同じポジションでEs(1)ーB♭(4)
- 少し距離があるけどEs(1)で押さえ次はD線でB♭(4)
- 前の小節の音を押さえた形のまま第3と第4の中間ポジションへ移動
この三つのパターンで弾きやすいものを探してみる。
そして音楽が進み、Iもまたpizzが出てくるので良い音でいきましょう。
基礎力×応用力で考えるKの動き
行進曲「煌めきの朝」の中で一番難しいのはKの部分かもしれない。
この動きをどうやって弾くか?
まずボウイングは4小節全てアップでスタート、次のスラーでダウン。
問題はどうやって弦を押さえるかで、この先もっと良いフィンガリングが見つかるかもしれないけれど今のところ僕はこんな感じ。
157〜158小節
シ(4)ラ#(2)ソ#(1)ーソ#(1)ファ#(4)ミ(1)
G線で弾きはじめ、Fis(ファ#)でD線。
159〜160小節
ファ#(4)ミ(2)レ#(1)ーレ#(1)ド#(4)シ(1)
D線で弾きはじめ、Cis(ド#)でA線。
161〜162小節
ラ(4)ソ#(2)ファ#(1)ーファ#(4)ミ(1)レ(0)
全てD線。
163〜164小節
ミ(1)レ(0)ド#(4)ード#(4)シ(1)ラ(0)
D線で弾きはじめ、Cis(ド#)でA線。
これが正しい答えではないので参考まで。
基礎力×応用力
Kの部分の、特に157小節〜160小節は上に書いたフィンガリングでそのまま弾いても、多分弾きにくくて、ちょっとだけ工夫をするとグンと弾きやすくなる。
それは親指の位置を固定したままポジション移動をすることで、親指の位置をいつもより少しだけ次のポジションに近い方に移動させてみる。
これが左手の基礎を習得した上でのポジション移動の応用で文章だけで説明するのが難しいので気になる人はLINE公式アカウントまたは僕の井口コントラバス教室のインスタグラムから質問のメッセージを送ってきてください。
間に合う?arcoからpizzへ
難しいKを終えあたらいよいよラストに向かってマーチの歩みを進めていきます。
でも、その前に!
171小節からのpizzからarcoへの持ち替えは間に合うかという部分、ひとまずarcoの部分はアップからのスタートで弾いてみるとクレッシェンドもしやすく弾きやすい。
人数が複数いる場合はpizzをしっかり弾く人、arcoの入りから入る人で分けても良いかもしれない部分。吹奏楽のコントラバスあるあるです。
そして、最後の最後、終わりの小節はアップーアップで終わると良いなと思います。
おわりに:情報を鵜呑みにしない
2023年度全日本吹奏楽コンクール課題曲1番の行進曲「煌めきの朝」
ブログでレッスンはいかがだったでしょうか?
今はこうしてブログをはじめYouTubeやインスタグラム、TikTokなのですぐに情報が手に入るようになり僕が高校生の頃よりも欲しい情報が手に入りやすくなりました。
だけれども、多くの中高生と接する中で一つだけ気をつけたほうが良いなと思うことがあります。
それは、情報を鵜呑みにしないこと。
有益な情報にすぐ辿り着ける時代だからこそ、自分で考える癖、情報を疑う視点を持つことが大切で、手にした情報を検証し自分にとって必要なものか取捨選択する力を育ててください。
実は、このブログの中に一つだけ間違ったアドバイスを書いています。
どこにあるか、気がつきましたか?
もし気がつかなかった人は、探してみてください。
答え:間に合う?arcoからpizzへ
そして、最後の最後、終わりの小節はアップーアップで終わると良いなと思います。
上記のアドバイスはアップーアップで弾いてみると書いてありますが、終わり方に違和感を感じると思います。正解ではありませんが、音楽的な視点から考えてみると、ここはダウンーダウンで弾いたほうが曲が終わった感じを出せます(こっちは本当だよ!)