明日のためのレッスンノート 最終回(vol.30)
吹奏楽におけるコントラバスへの理解と発展を願って書き続けてきた『明日のためのレッスンノート』7ヶ月連続更新の旅も今日が最後となりました。
今年度のレッスンノートを締めくくる今日は、僕の指導者としての原点となっている音楽を添えて書いていきたいと思います。
明日のためのレッスンノート
今日よりもちょっと知識の増えた明日を迎え続けたら、コントラバスを弾くのがもっと楽しくなると思い、この企画を立ち上げたのは一昨年の秋でした。
TwitterのDMでコントラバスの奏法に関する質問が届くようになってから、周りに誰も教えてくれる人がいなくて悩んでいる人がたくさんいることに気がつきました。
そして、レッスンを受けられる環境がある学校でも、夏のコンクール前のレッスンだけでは僕が伝えたいことを全て伝えられないと感じていました。
でも「伝えたいことがたくさんあるのに夏だけのレッスンでは限界があるよね」
と言って終わらせたくない。
- パートは自分一人だけ、周りにコントラバスを教えてくれる人がいないと悩んでいるDMで質問をしてきてくれるコントラバス奏者がたくさんいる
- 夏のコンクール前だけのレッスンで伝えられることには限界がある
だったら、これまでレッスンに関わってきた学校に渡していたオリジナルの教則本の中身を見直すとともに、全て公開しようと決めて書き始めました。
このノートがどれだけの人に役に立って、どれだけの人が読んでくれたか、僕にはわかりません。
でも、一昨年レッスンノートの発信を始めてから僕の元にはたくさんのメッセージが届き、全国で悩み練習に励むコントラバス奏者の声を聞く機会があり、たくさんの出会いがありました。
去年はワークショップや出張レッスンも企画することができました。
なので「少しは誰かの役に立てたかな?」と思っています。
吹奏楽におけるコントラバスへの理解と発展を願って書き続けてきた
『明日のためのレッスンノート』
最後は、春から先輩になる、そして卒業し新しい道へと旅立つになる人へ。
そして、秋からレッスンノートを読み続けてくれたすべての人に伝えたいメッセージを残し、ノートを閉じたいと思います。
7ヶ月連続更新の旅も今日でおしまい。
あと少しだけ、お付き合いください。
4月から先輩になる人へ
今日までノートを読んでくれてありがとうございました。
レッスンノートは役に立ちましたか?
僕はノートを閉じる前に伝えたいことが一つあります。
それは
「パートに自分一人しかいなくても、周りにコントラバスを教えてくれる人がいなくても、これまで書いてきたことを参考に取り組んできてくれたら、4月から自信を持って先輩になれるよ」
ということ。
僕もまだまだ勉強中ですが、吹奏楽部でコントラバスを弾くために知っておきたいこと、今の僕が伝えられることをすべて書いてきたつもりです。
画面越しの言葉では伝えきれないことがあるのも承知の上。
生の音を聞いて、生きた言葉を交わせる時間こそがレッスンの魅力。
そうはわかっていても、吹奏楽部でコントラバスが置かれている環境は本当に様々。
だからこそ、悩んだり道に迷ったときに、地図を開くようなイメージで読んでくれたら嬉しいという思いで筆をとりました。
4月から胸を張って先輩になってください。
そして、新しく入ってきた後輩に、コントラバスの楽しさを伝えてください。
吹奏楽におけるコントラバスの可能性を広げていくのは、このノートを読んでくれている一人一人なはず。
卒業し、新しい「道」へと旅立つ人へ
卒業、卒部おめでとう!
部活動での3年間は楽しかったですか?
部活の数だけドラマがあります。
それぞれの胸に刻まれているドラマを大切に、新たな道へと旅立ってください。
この時期によく耳にしますが「音楽を続けないのはもったいない!」なんてことはありません。
一生懸命やっていれば、身体は覚えているものです。
やりたくなったら、またやればいい。
忘れてた感覚は、練習して思い出せばいい。
市民楽団やサークルは、楽器がある団体も多いです。
コントラバスを弾き続けたいなと思ったら、自分にあった楽団を探してみてください。
もしかしたら、自分の弓だけは持っておくと良いかもしれないね。
今日までノートを読んでくれて、ありがとうございました。
コントラバスを弾いていた自分を、いつまでも好きでいてください。
はじめて後輩を教えるときに迷ったら
人に何かを伝えるのは難しいよね。
はじめて後輩を教えるときに、もし迷ったら、初心者の気持ちになってみてください。
「左手で弓を持って楽器を右に構える」
これだけです。
どう?
100%ではないけれど、弓を上手く持てず、楽器を安定して構えられない状態は、はじめてコントラバスを手にしたときに感覚に近いものがあると思うんだ。
そして、その状態の自分に、自分でアドバイスをする。
もしかしたら、こうしたところにヒントが隠されているのかもしれないね。
良き伝統は良き習慣から
後輩指導のコツは、言葉で伝えるだけでなく実演すること。
「自分が!?」と思わずに、思い切って実演です。
実演し、自分の言葉で伝え、トライしてもらう。
まとめるね。
- やってみせる(あなたがお手本を見せます)
- なぜこうなのか?言って聞かせる(自分の口から説明する)
- トライさせてみる(じゃぁ、弾いみて!)
- できたら褒める(褒められたら嬉しいよね)
これが、後輩指導のコツだと思ってます。
自分より上手い後輩が入ってきたら
大丈夫。
その部活での経験はキミの方が上だよね。
こうした状況は、僕も経験しました。
いろいろな感情が入り混じるかもしれませんが、自分ができることを精一杯やってみればいい。
本当に上手い人は、他人をどうこう言いません。
大切なのは、音楽に向き合う姿勢。
誰かの足りない部分は自分が補うスペースなはず。
これができたら良いセクションが生まれる。
攻めたら全てが崩れちゃうんじゃないかな。
吹奏楽におけるコントラバスへの理解と発展を願って
明日のためのレッスンノート(vol.30)
最終回となる今日は、今まで『明日のためのレッスンノート』を読み続けてきてくれた、すべての人に伝えたいにメッセージを書いています。
自分が中高生だった頃を思うと、コントラバスの演奏レベルも上がってきたなと感じていました。
先日開催された「第1回 中学生。高校生のためのコントラバス・ソロコンテスト」では、演奏を聴いてそのレベルの高さに圧倒されました。
きっとそれは、日々の練習に励んでいる一人一人の頑張り、各学校で指導されている顧問の先生、パート講師の先生方のサポートがあってこそだと思います。
でも、そうした中でまだまだ「誰も教えてくれる人がいない環境」で右も左もわからずコントラバスを弾いている人がいる。
僕はこれからも、そうした人たちに向けた「発信」を続けていこうと思います。
今までレッスンノートを読んできてくれた人たちは、これまで身につけてきた知識や練習方法を、部活のコントラバスパートの良き伝統として残し、次の世代に伝えて行ってください。
そして、心のどこかで「レッスンノートはもういいかな」と思ってくれたら嬉しいです。
それは、次のステージへと進む準備が整ったからだと思います。
で、わからないことがあればノートを読んでみたらいい。
幅広い演奏技術を習得できる教則本やソロ曲にチャレンジし、新しい景色を見に行ってください。
今の自分を作っている「原体験」
お届けしている音楽は、EXILEの「道」
この曲は、僕が初めて指揮をした吹奏楽部とお別れする時、最後のレッスンで演奏した曲です。
最後に部員たちの前で挨拶をする時
「何年かかるかわからないけど、千葉で腕を上げて必ず神奈川に戻ってくる」
と言ったのを覚えています。
自分の吹奏楽指導者としての原点であり、今も自分の背中を押し続けてくれる「原体験」
もし、卒業して自分は何がやりたいかわからないという人がいたら、これまでの人生を振り返って、今の自分を作っている「原体験」を探してみてください。
ノートを閉じるその前に
卒部、引退。
進学、就職、そして進級。
一つのドラマが幕を閉じ、新たな旅が始まる季節に「レッスンノート」も終わりにします。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
あと少しだけ、音楽をお楽しみください。
さいごに
コントラバスを弾く楽しさを知り
吹奏楽部でコントラバスを弾いていた頃の自分を
いつまでも好きでいてもらえたら嬉しい
そんな思いを込めて、ノートを書いてきました
明日のためのレッスンノートはこれでおしまい
7ヶ月間、ありがとうございました
吹奏楽におけるコントラバスへの理解と発展を願って
コントラバス奏者・吹奏楽指導者
井口信之輔(著)
明日のためのレッスンノート
完