コントラバス奏者、吹奏楽指導者、指揮者の井口信之輔です。
コントラバス奏者としての活動を軸に、全国各地の吹奏楽部やオーケストラ部でコントラバスを教えたり、大学のサークルやアマチュアオーケストラの弦楽器のトレーナーをしたり、さまざまなコンセプトを掲げて活動しているオーケストラや吹奏楽団とタッグを組んで指揮者というポジションから各地の音楽文化発展に努めています。
さて、ブログで楽典や音楽理論の話をわかりやすく解説していくということではじまった楽典講座。
楽典講座は新しいテーマ、音階(スケール)の解説が続いています。
前回のまとめ
『自然・和声・旋律』と3つに分けられる短調の音階
短調の音階は、暗い響きを持つのが特徴の音階(スケール)で、主音(開始音)から「全音・半音・全音・全音・半音・全音・全音」の順になっていることを知りました。
そして、短調の音階には
- 自然短音階
- 和声短音階
- 旋律短音階
と3つの種類の音階があることを学びました。
各、音階の特徴を紐解く鍵は、それぞれの音階にある第7音(7番目の音)、そして第8音(8番目の音)にあります。
3つの音階の特徴、違いは言葉で覚えるだけでなく、音を出して聴き比べてみる。
ここまでが前回のまとめです。
これで、長調(Dur)と短調(moll)が持つ特徴を解説し終えたので、今回は卒業式のノリで覚える近親調とその種類というテーマで、各調が持つ関係性について解説していきます。
長調・短調にはたくさんの調(調性/キー)があり、それぞれ関係性の近い調と遠い調が存在します。今回は近親調という言葉を使ってその関係に迫っていきたいと思います。
楽典講座を通して知ったことが、日々の音楽活動のプラスになったら嬉しいです。
それでは、井口先生の「宇宙一わかりやすい!」 楽典講座スタートです!
調は全部でいくつある?
長調・短調にはたくさんの調(調性/キー)があり、それぞれ関係性の近い調と遠い調が存在すると書きました。
ところで、調(調性/キー)というのは全部でいくつあるかわかりますか?
ピアノの鍵盤が近くにある人は鍵盤の前で、ない人は頭に思い浮かべてみてください。
白い鍵盤(白鍵)のドからスタートし、黒い鍵盤(黒鍵)も含めていくつかあるか音の階段の上りながら数えていきます。
それでは、一緒に鍵盤の数を数えていきましょう。
ド→(ド♯/レ♭)→レと数えていくと、全部で12の音がありました。
そして調(調性/キー)は長調と短調に分かれるので、単純に計算すると
- 12種類の長調
- 12種類の短調
合計で24種類の調があるという答えが導き出されます。
ちょこっとメモ
気づいた人もいるかもしれませんが、調の名前は違っても(嬰ヘ長調と変ト長調など)音階が同じ音で構成される調もあるので、実は全部で30種類の調が存在します(異名同音または異名同調)
ですが、まずは多くの楽典の本でも解説されているようにピアノの鍵盤の数と同じ24種類の調(長調12+短調12=24種類の調)があるということを理解しておけばOKです。
ここまで理解ができたら、本題に入っていきましょう。
今回出てくる新しい言葉は近親調、そしてある調との関係性を表す5つの言葉です。
まるでドラマ!?調の相関図
この説明で理解できた人はいますか?
楽典って解説をするときに難しい言葉が並ぶ故に理解できない人が続出することがあるんです。
なので、なるべくわかりやすく日常や身近なものと掛け合わせて解説していくことで理解が深まると考えています。
上の解説をわかりやすくすると?
まずはドラマに例えて解説してみます。
ドラマにはいろんな登場人物がいるけど、主人公と近い関係にある人たちの関係性を書いた相関図みたいなものが近親調です。
他にもクラスメイト24人にはそれぞれに個性があり、その友人関係(グループ)、ドラえもんであればのび太を中心にしずかちゃん、スネ夫、ジャイアン、ドラえもんがいるような感じで、ある人を中心に、その人と近い関係にある人との関係性を書いたもの。
これが近親調です。
もうお分かりかと思いますが、主調というのは物語の主人公のことを指します。
人間関係に例えざっくりと近親調のイメージができたら、頭を音楽の世界へと戻していきましょう。
近親調と呼ばれる調は4つにわかれる
近親調という言葉が何を指すのかが理解できたら、もう一つ。
近親調べというのは主調と近い関係にあるいくつかの調をまとめた呼び方で、近親調と呼ばれる調は4つ存在するということを覚えておきましょう。
まず、主調という言葉について解説し、次に進んでいきます。
主調とは?
主調とは物語の主人公と例えました。
音楽的に解説すると、音階(スケール)の関係性を比較する際の基準となる音階のことです。
今回はシャープもフラットも付かないハ長調(C-dur)を主調とした場合の近親調について解説していきます。
一つ一つ、主調との関係性を覚えていきましょう。
平行調(へいこうちょう)
平行調とは主調と調号が同じ調のことを指します。
長調(Dur)を主調とする場合の平行調は短調(moll)、短調(moll)を主調とする場合は長調(Dur)で、同じ調号を持つ調が平行調となります。
ハ長調(C-dur)が主調であれば、同じくシャープもフラットも付かない調であるイ短調(a-moll)が平行調にあたります。
変ロ長調(B-dur)を主調とする場合は、短調(moll)で変ロ長調(B-dur)と同じフラットが2つ付く調が平行調にあたるので、この場合はト短調(g-moll)が平行調となります。
同主調(どうしゅちょう)
同主調とは同じ音からはじまる調のことを指します。
専門用語を使って書いてみると同じ主音を持つ調ということですね。
長調(Dur)を主音とする場合の同主調は短調(moll)、短調(moll)を主調とする場合は長調(Dur)で、同じ主音を持つ調が同主調となります。
ハ長調(C-dur)が主調であれば、同じくドの音が主音となるハ短調(c-moll)が同主調です。
下属調(かぞくちょう)
下属調とは主調となる調の4番目にある音からはじまる調のことを指します。
専門用語を使って書いてみるとある調(主調)の下属音を主音とする調です。
ハ長調(C-dur)が主調として考えると、4番目にある音つまり4度上の音であるファ(F)からはじまる調が下属調となります。
なので、ハ長調(C-dur)の下属調はヘ長調(F-dur)となります。
参考書によっては主音の完全5度下(ドシラソ→ファ)の音と書いてある場合もあります。
属調(ぞくちょう)
属調とは主調となる調の5番目にある音からはじまる調のことを指します。
専門用語を使って書いてみるとある調(主調)の属音を主音とする調です。
ハ長調(C-dur)が主調として考えると、5番目にある音つまり5度上の音であるソ(G)からはじまる調が属調となります。
なので、ハ長調(C-dur)の属調はト長調(G-dur)となります。
以上、4つの調がハ長調(C-dur)を主調とした場合の近親調です。
まとめ
それでは、今回のまとめです。
近親調というのは主調と近い関係にあるいくつかの調をまとめた呼び方で、近親調と呼ばれる調は4つ存在することを学びました。
近親調と呼ばれる各調の特徴は以下の通り
- 調号が同じ『平行調』
- 同じ音からはじまる『同主調』
- 主音の4度上(5度下)の音からはじまる『下属調』
- 主音の5度上の音からはじまる『属調』
主調との関係性は卒業式の呼びかけのノリで覚えると頭に入りやすいです。
「楽しかった」
「修学旅行!!!」
みたいな感じですね。
音楽大学の入試対策で学ぶ楽典では近親調を図で表し覚えていくこともあります。
図で表す近親調
真ん中に主調を書き、上に属調、下に下属調、左に平行調、右に同主調と近親関係にある調を書いていきます。
これで全5回にわたる音階(スケール)と調についての解説を終えました。
次回、井口先生の「宇宙一わかりやすい!」楽典講座は確認テストです。
全5回にわたって学んできた音階(スケール)と調についての問題を解いていきましょう。
それでは、また次回の楽典講座でお会いしましょう!